195 お嬢様とツーカーの関係
一方その頃、ウカノとわらびはというと……
↑↓
「キャッキャ! キャッキャ!」
「……」
「雰囲気あるねー、夜のお化け屋敷は」
「な、何の仕掛けも無いのに楽しいんですか?」
「逆にひと気の無い素材のままの方が怖いまである」
「わ、わからないでもないですが」
「それに、楽しいのは当然よ。彼女とのデートなんだから」
「……と、当然のように、恋人認定……」
薄暗いお化け屋敷の中で、キャラを戻したわらびちゃんと二人きり。
照明も無く、頼りになるのはスマホのライトだけ。
なんて美味しい空間なんだ。
「抱き着いて来ても良いんだぜ? 吊橋効果、狙おうぜ?」
「そ、そんな事をしなくても、私は……」
「んー、ダチに協力して貰ってゾンビ犬メイクしたオオカミ君とかタランチュラ君達に顔面塞がれるイベントとか、仕込めば良かったなぁ」
「そ、その程度は覚悟してたのですが仕込んで無かったんですね……」
「予想されてたなんて、僕理解されまくりだな。全く、君には敵わないぜ」
「な、何でも肯定的に捉えられて羨ましいです……」
「ああ、楽しいぜ。おっ死んじまった幽霊野郎どもとは違ってなぁっ(キョロキョロ)」
「あ、煽らないで下さい……!」
びっくりポイントを仕込み忘れたんで、幽霊さんには驚かせに来て貰いたいんだがね。
まぁ、わらびちゃんはそういうの慣れてるから驚かんだろうなぁ。
今はこうして、手を繋いでるんで満足してやるか。
「わ、我々はこうして楽しんでいて大丈夫なんですか……?」
「うふふ、楽しいと思ってくれてるんだ?」
「そ、それは……!」
「まぁ大丈夫もなにも、現状、打つ手無しだからねぇ。やれやれ、あの子らはどこに消えたのやら」
「……う、ウカノさんなら、その気になれば強引にでも『侵入』出来るのでは……?」
「僕らが居たら頼られるでしょ? 僕はあの子、空木ちゃんに慣れて欲しいんだよ、ゴーストバスターを」
「な、なぜ?」
「君の助けになると思って」
「……あ、ああ、そういう」
僕の言葉で色々察してくれたらしい。
「(このツーカーの遣り取りは)最早これもう夫婦だろ……」
「そ、そういう気遣いは不要ですよ?」
「えー。でも君の代わりに『オカルトな仕事』やってくれる子居たら、その分君が暇になるべ? 僕との時間増えるべ?」
「ひ、暇になったら絵を描くかしてるかと……」
「ほらぁ」
「ま、また休日に私の家でダラダラと……?」
「んふふー」
笑みで返す僕を、困り顔で見るわらびちゃん。
「ど、どちらにしろ、私の代わりは務まりませんよ?」
「お、出来る女アピールか?」
「た、ただの事実です。例え今日、彼女がそれなりに使えるようになりウチ(夢先家)所属になったとしても、任せられる仕事のランクは低い方でしょう。なので……」
「君は相当高ランクの仕事してるって事か。あっ、ならこうしよう。今後は僕が君の仕事を一緒に手伝うっ」
「あ、貴方は影響がありすぎなんです……」
「すると、半分の時間で君の仕事が終わるってこった。一緒にいられて一石二鳥っ」
「で、でも、ウカノさんがいる場合、すぐに終わらせられる仕事を何倍も複雑に……」
「昨日そんな事をカヌレの仕事を手伝った時にも言われたぞ?」
「や、やっぱり……」
まぁ姉妹が嫌がっても仕事の手伝いはやめないんだが(天下無敵)。
「んー、となると、今やってる計画(空木ちゃんをゴーストバスター戦士に鍛えよう)の意味が無くなったぞ? この先成長すれば君の助けになるかもだが、それまで待ってられんっ」
「な、ならば早く助けに行くべきでしょう」
「だから打つ手無しなんよー。トモダッチに色々調べて貰ってるけど…………ん?」
タタタタッ
不意に、薄暗い室内に響く何かが駆ける音。
スマホライトを横切る黒い影。
お化け屋敷の演出が空気を読んで勝手に起動したか? それともホンモノ……?
と思ったが、近づいて来るその足音には聞き覚えがあって……
「ニャー」
「おや、その二本の尻尾は……なぁんだ、学園祭ホラー回以来の白狐ちゃんか。なになに? どしたん?」
「ニャッ」
「ほぉ? 遊園地内で怪しい場所を見つけたと? kwsk」
狐ちゃん曰く……
「ふむ。遊園地の奥の方に祠があって、更にその奥の森が変な感じだ、と。今の情報知ってた? わらびちゃん」
「え、ええ。知ってました」
「ああん? なら何で言わねぇ? そこが問題解決の糸口ならどうすんだっ」
「か、関係がないと思って……」
「なぁんだ、二人の救出に関係無いんだ。結局、そこはなんなの?」
「めい……ま、まぁ、いずれ機会があれば教えます」
「姪? 銘菓?」
◯ぎの月(仙台銘菓)の話?
気になるなぁ、『今度教える』とか、『行ける時行く』みたいな誤魔化す常套句じゃないか。




