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188 お嬢様とおままごと

わらびちゃんとの夜の閉園後遊園地デート!

+二人の女子付き

殺し屋? の空木ちゃんと、昨日僕が悪霊? から救った美兎ちゃん。

その美兎ちゃんだが、中学生にしては妙に発育が良い。

まるで、姉(学園祭でのホラー回に出た)から栄養を吸ったような成長の早さ。

僕が素直にそんな感想を言うと…………



「脱線してる感半端ないけど……私の身体付きと、この遊園地の話、なにか関係あるの……?」

「ああ。発育が良い子は霊を誘き寄せやすいんだ。乗っ取るならそういう健康な肉体が良いからね。だろ? わらびちゃん」

「さぁ……そんな法則は初耳ですが霊の気持ちになればそうなのかもしれませんね」

「ほらぁ」

「適当な返答……というか、今更だけど、この二人(わらびと空木)は……?」


それもそうだな。

場合によっては危険が伴うかもだし、お互い名前くらいは知っとくべきか。


「こっちのボンキュボンは僕の彼女のわらびちゃんでオカルトのスペシャリスト、こっちのチンチクリンは殺し屋の空木ちゃんで僕を殺りに来た所を捕まえて雑用係で連れて来た」

「アンタの交友関係どうなってるのよ……」

「彼女にしないで下さい」

「私は雑用だったのか……チンチクリン言うなや」


自己紹介も終えた所で。


「これからどうする予定なんです。先程から適当に薄暗い園内をぶらついてるように見えますが」

「僕はこのまま、わらびちゃんとデートでもいいんだが?」

「本当に何しに来たんですか」

「なんてね。取り敢えず定番のお化け屋敷に向かってたんだ」

「はぁ。おまじないの場所に向かうのでは?」

「そこはどこなのかも知らんし。まぁのんびりチュートリアルと行こうや。なんとなく、お化け屋敷にも『居そう』だって僕のレーダーが反応しとる」

「なんのチュートリアルですか」


……ふと。


「あっ!」


声を上げる美兎ちゃん。


視線の先には『着物の少女』。


その子供は、僕らを見るなりタッタッタと駆け出し、暗闇に消えていく。


「おやおや、迷子の子かな?」

「ならば随分と変わった私服ですね」

「撮影でもしてたんじゃない? 時代劇の」

「遊園地で時代劇とかタイムスリップものですか?」

「アホな会話してないで追い掛けるわよ!」

「誰かいるのか? (見えてない)」


僕らの扱いにもう慣れ始めた美兎ちゃんは、率先して先頭を走る。

随分必死だなぁ。

さっきの子、親戚の子かなにか?



……それから、二、三分子供を追い掛けていたわけだが、出たり消えたりと、中々捕まらず……


「はぁ、はぁ。き、消えた……」

「ごめん、ぶっちゃけ捕まえようと思えば行けたけど空気読んだわ」

「よく我慢出来ましたね。貴方が触れたらその瞬間あの子供の霊は消滅していましたよ」

「あー。あの子やっぱ霊なのか。重要人物っぽい子だし、消えたらマズかったね。ゲームでいう進行不能になるみたいなフラグブレイカー」

「お前らには何が見えてたんだ……?」

「おや、空木ちゃんにはあの子が見えなかったんだ。死に多く触れてる割に才能無いなぁ」

「霊感的な才能か……? いらねぇし……」

「まぁ今日からイヤでも向き合って貰うんだがね」

「……さっきゲートのとこで言ってたアホな話か? ゴーストバスターだのなんだのって。だから、肝心の幽霊が見えねぇのにどうしろと」


「ここは……」


僕らの会話に交じらず、一人呟き、目の前の建物を見上げる美兎ちゃん。


「おっと。図らずも、目的のお化け屋敷に来てたみたいね。それはそれとして、美兎ちゃん。君はさっきの子供を知ってるのかい?」

「…………ええ。あの子が、私の探してた幼馴染よ」



それは、十年近く前の話。

仲良しな二人の子供がいた。

どこに行くにもいつも一緒だった二人。

ある日二人は、家族ぐるみで遊園地へと行く。

そこは、片方の子の両親の出会いの場所、思い出の地。

色んなアトラクションを楽しみ、ご飯を楽しみ……すぐに夕方に。

今度は動物園にいこうかー、なんて言いながら皆で帰りの準備をしていると…… 一人、居ない。

子供が一人、消えた。

すぐさま周辺を探し、迷子センターにも駆け込むも、見つからず……

最高だった時間が、最悪の時間に。

それから、消えた一人の子供が見つかったのは、ひと月経った後で……



「ふぅん、神隠し、ねぇ。じゃあさっきのロリはその時消えた子って事か。アレ? でも戻って来たんでしょ?」

「……ええ、一時はね。けれど、すぐにまた居なくなったわ。今度は一家まとめてね」

「夜逃げかい?」

「なら良かったんだけど……少なくとも、あの子の母親は死んでるわ。明らかに不自然な死に方で、ね」


なんでも、泥団子を喉に詰まらせた窒息死、だったとか。

その死に顔は、しかし、穏やかなものだったらしい。


「おままごとでもやって実際に食べちゃったのかな? 娘が居なくなって精神を病んでしまったか……」

「貴方なら普通に泥団子食べそうですね」

「そりゃあね。農業をしてる者として土壌の質を知る為に土を食うのは普通だよ。それに、『僕の実家の庭』にはチョコ味だったり黒砂糖味だったりカレー味の土壌があるし。わらびちゃんも知ってるっしょ」

「貴方のとこの庭と一般の畑を比べないで下さい。普通、土には多くの食中毒菌がいるので、農家の人も積極的に食べてはいませんよ」

「食中毒かぁ、なった事無いなぁ。そういや、昨日美兎ちゃんに付き纏ってた女性の幽霊も口の周り泥だらけやったねー」


「…………あの声とシルエットは、思えば、あの子の母親に似ていたわ」


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