181 お嬢様とオカルト探偵
喫茶店にて、わらびちゃんとサキュバスのアマンちゃん、そして謎の少女空木ちゃんとガールズトーク。
そんな最中、不意に、アマンちゃんがアイスコーヒーの入ったコップのフチをなでる。
すると……コーヒーからはシュワシュワと泡が立ち始め、飲んでみると、中身がコーラへと変わっていたのだ。
「入れ替えマジックかなにかかい?」
「いえ、サキュバスの『力』の一端ですわ。他にも(ツン)」
今度は、グラスを指でつついただけで色が変化する。
「黒から琥珀色に? (チュー)むっ、普通のアイスティーっ」
「とまぁ、このような力を、魔の者が操るという意味で『魔法』と呼びます」
「魔法っ。人間は使えたりしないの?」
「使えても、劣化したソレ、魔術止まりですわね。さて、これ以上グラスの中身を変えるのはお店に失礼なので戻しますね(ツン)」
水見式ならアマンちゃんは変化系だなぁ。これで水をワインに変えられたら神を名乗れるな?
「ふむ……因みにウカノさん、中身を飲んで体調の変化などはございまして?」
「んー? 別に? 飲んだらお腹壊すやつだった?」
「いえ。ただ、飲めばわたくしの傀儡になるレベルの催淫効果のある魔法を施していたのですが」
「さすがサキュバス、そうやって餌を狩るスタイルか。しかし僕には心に決めた相手がいるからねっ(サムズアップ)」
「私を見ないで下さい」
「意思で乗り切れるほどわたくしの魔法は甘くはないのですが……まぁ、流石はウカノさんと思いましょう」
僕はコーヒー ……に戻ってると思ったら黒烏龍茶になってる飲み物を文句も言わず一口飲み、
「てか話脱線しすぎやろ」
「話のレールを脱線しすぎて最早ドライブですわね」
「確かに。ドライブ中の会話って感じの緩い空気だった」
「空木さんに我々の『異常さ』を見せる為のパフォーマンスでしたが。ああ、そうそう、それで、ウカノさんの話では空木さんの祖母がどうとか」
「せやせや」
おばあちゃんの事に触れられた途端、クッと唇を噛む空木ちゃん。
分かりやすいなぁ。
「流石にわたくしも彼女の家族構成は存じておりません。ですが、肉親を大切にする殺し屋……背景は想像出来ます」
「例えば?」
「そうですわね。一番はやはり『お金』でしょうか。どうしても大金が必要だという理由があると仮定します。そう、例えばその祖母が『病気』だから、と」
「ぐすん、泣かせる話じゃねぇか」
「しかし、病気という見解は個人的に少し違うと思っています」
「ほぅ。根拠は?」
「ウカノさんは感じませんか? 彼女から『邪気』を」
それは、一見悪口のようにしか聞こえないが……僕はジッと見る
すると モヤァ 黒いオーラが、湯気のように彼女の周りを包んでいた。
「ふぅむ、確かに邪気、感じるね。『悪霊』に取り憑かれてる人特有なオーラ……だけんども、この感じ、少し違和感あるべな?」
「ええ。オーラの量が多からず少なからず、といった具合ですわね。これは恐らく……」
「うむ。この子が憑かれてるというより、この子は普段から『憑かれてる人の側で住んでる』んだろう」
「オーラは、そんな彼女に纏わりついた残り香みたいなものですわね。つまり、彼女のおばあさまは……」
ハッ! と僕を見る空木ちゃん。
「もしかして空木ちゃん、君のバアちゃん、寝たきりなんじゃないかい? 原因不明で、治療法も分かってない。なんにしてもお金は必要だから、闇に身を染めつつ、治療法を探していた。違う?」
「お……お前ら……なにもんだよ……」
その瞳は、驚愕というより恐怖。
反応からして正解かな?
「わずかな証拠で想像し答えに辿り着く……僕らオカルト探偵としてやっていけるね? アマンちゃん」
「ダブル主人公ものですか。ウカノさんとの共演ならばどんな駄作でも仕事を受けますわよ」
「若干、君が今撮影中の探偵ビッチと被るけどな」
「スピンオフとしてやるのもいいかもしれませんわね。ねぇわらび?」
「私は(脚本や漫画など)描きませんよ」
さて。
「空木ちゃんの背景がわかった所で、どうしよ? なんか人助けするみたいな空気だけど?」
「ええ。だから何だという話ですね。煮るなり焼くなり、彼女の処分の決定権はウカノさんにありますし」
「最初の(彼女の暗殺に対する)すっとぼけた態度はなんだったんですか」
まぁ、やる事(彼女の処遇)はここに連れてくる前から決まっていたが。
「ここで空木ちゃんをポイしたらここまでの下り無駄になるやん?」
「そうですわね。それで?」
「うむ。空木ちゃん、話の流れは把握してくれてるかな?」
「……なにをしろってんだ、私に」
話が早いね。
「むっふっふ。君には『やって貰いたい事』があるんだ。けど……時にわらびちゃん。空木ちゃんのオーラを見て、彼女のおばあに憑いてる霊の強さはどんなモンだい?」
「何故私に訊くんです」
「オカルト専門だろ?」
「違いますが? …………はぁ(チラッ)それなりに、強力なのが憑いてると思いますよ」
「そうなの? 強いンなら彼女にはもっと黒いオーラが付いてそうなものだけど」
「この悪霊……いや、正確には悪霊とは『少し違います』が、これは『とぼけ方』が上手い。敢えて少量の残り香を彼女に擦り付け、私達のような『視える者』を誘き寄せているのです」
「彼女は撒き餌かぁ。おのれ……人を人と思わぬ悪霊めっ」
「まだ貴方に目をつけられるよりはマシだと思いますよ」
流石の僕も相手の尊厳は踏み躙らんぞ?




