表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/369

179 お嬢様と不思議なデート




↑↓


「あっ。あの席の知り合いのとこに座りますんで。それとアイスコーヒー二つお願いしゃす。おーい、わらびタソー」

「……はぁ」


市内の少しお高めなご当地レトロ喫茶ホシカワ珈琲店。

この時間帯は、デパート買い物帰りのマダム達が談笑していたり、スーツ姿のナイスミドルが新聞を読んでいたりと落ち着いた空気。

そして僕は、すぐにわらびちゃんを発見する。


「君は見つけやすい女だね。オーラでわかるよオーラで。なんか紫色の淫靡なオーラが出てるんだ」

「わけのわからない事を」


コーヒーカップの中でスプーンをくるくる回しながら溜め息を漏らすわらびちゃん。


僕の前では素のオドオド系キャラだが、外で人の目もあるという事で、今はクール系なキャラの仮面を被っているらしい。


「というか、呼び出しておいて遅刻ですか」

「色々あってねー。お土産持って来たから許してちょ」


ポンっと紙袋をテーブルに置き、席に座る僕。


「なんですか中身は」

「PARC◯のレストランフロアで今台湾フェアやっててね。おいしそーなのいくつか買って来たよ。食べよ食べよ」

「店内で食べるわけがないでしょう、マナーをどこかで落として来たんですか」

「ジョーダンジョーダン」


僕は袋から中身を取り出す。

中からは台湾カステラや豆花あんみつのようなもの、ルーローハン(角煮丼)など定番をおさえている。


「後で一緒に食べよーねー」

「どこで食べるつもりですか。どうせなら昨日家に来た時に持って来て下さい。……で、結局これはどういった呼び出しで?」

「ただのデートじゃいかんのか」

「『この状況』でデートも無いでしょう」

「『こんな状況』でデートもたまには良くない?」

「そういった変化球は求めてません。普通のデートをしたいという意味ではないですよ、勘違いしないで下さい」

「うぃー。まぁのんびりしようや」

「お待たせしました、アイスコーヒーです」

「どもー」


テーブルに二つ置かれるコーヒー。

ふと。


「おや。奇遇ですわね」


「おっ、その特徴的な淫乱ツインテピンクヘアーを持つ君は……」

「ええ、淫乱ピンクです。お早い再会ですわね。やはりわたくし達は引かれ合う運命……」


現れたのは、昨日動物園で知り合ったあの芸能人。

今日は制服姿だ。


「こんにーアマンちゃん。今日はプライベートかい?」

「いえ、映画の打ち合わせです。あちらにスタッフも居ますわ。貴方にも参加して頂いたい所ですがお忙しそうですわね。皆さん今日はどういった?」

「デートー」

「あらまぁ、不思議な形態のデートですわねぇ。よいしょ」


僕らのテーブルの空いてる席に座るアマンちゃん。


「なぜ当たり前のようにこちらに座るんですか」

「何か問題がありまして? まぁ『普通のデート』であるならばわたくしも立ち去りましたが」

「あ、紹介するよわらびちゃん。こちら、サキュバスのアマンちゃん」

「知ってますよ。今のやり取りで察せるでしょう」

「確かに。よく見たら二人とも山百合のセーラー着てたね。いや、『三人とも』か」

「ですが、昨日出逢ったウカノさんほどわらびとは仲良くはありませんわよ」

「僕は女たらしだからな……」

「ふふ、ええ、全く」


考えたら、アマンちゃんは今わらびちゃん原作(探偵ビッチ)の主人公をしてるわけだから、面識はあってもおかしくないか。

にしても、どうせなら女の子同士、仲良くして欲しいものだ。

女同士って仲の悪さが露骨に表に出るからなぁ。

まぁ、こうしてお互い嫌味を口に出してハッキリ言い合える分、まだ良い方か。


「そーいやアマンちゃん、君んとこのモルモットことラクタは元気かい?」

「んー……今は家にいるのですが、妙にソワソワしていましたわ。『本体』の方に何かあったのか……」

「もうウチの実家の『庭』にいる事だろうけど、本体のピンチを分離体なりに感じてるんだろうねぇ。ま、計算上では大丈夫だと思うよ」

「ならば良いのですが……」


まだ一日目。

弱肉強食が支配する森に放ってたった一日目だ。

これくらいでベバってもらっちゃ困る。

送った僕の顔を立てる意味で、僕が会いに行くまで最低でも生きてて貰いたいね。


「あ、そうそう、わらびちゃん、話を戻すけど」

「戻すような話、してましたっけ」

「なんで黙ってたんだい? 君もサキュバスだったって事をっ」

「…………言う必要がありませんでしたからね」

「まー何が変わるでも無いけどさぁ、ねぇアマンちゃん?」

「ええ。大事な事ですわよ、属性というものは」

「知りませんよ、同調しないで下さい」

「お、嫉妬だな?」

「貴方の可愛らしい面を初めて見ましたわ」

「もう帰って良いですか」


まぁその辺は二人っきりになった時にじっくりネットリ訊こう。


「そうそう。来る途中面白い事があってね。それがデート遅刻の理由なわけだけど」

「『その方』がそうですの?」

「ウン」

「ッ……」


ここで、ようやく触れるもう一人のJK。

視線が集まった事を自覚した彼女はビクッと肩を揺らす。

勝気な切れ目も今は弱々で、こうして縮こまってると元から中坊並み低い身長チンチクリンさが更に低く見えてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ