◆四部◆ 【八章】 169 会長と今日の占い ※R15
カヌレとのお風呂タイム……も終わり、タオルで身体拭きタイム。
コシコシとタオルでお互いの水分を取る行為でさえも、恋人同士であるならば適当にしてはならない。
「良いかい? 気になる異性と早く関係を進めたいRTAをしたいんなら、こまめなボディタッチやスキンシップが大事だよ」
「そ、それを教わった私はどうすれば…………ふっ、んっ……く、くすぐったいよ……もっとゴシゴシ拭いていいから……」
「フー」
「ひゃっ(ピクッ)……ど、どこに息掛けて……っ」
「送風乾燥だよ。で、いま僕どこに息吹き掛けてた?」
「い、言わない……その手には応じないから……っ」
「言えない場所な時点で絞られるんだよなあ…………ん?」
ドクッ ドクッ ドクッ
触れた部分から、タオル越しでも手に伝わる振動。
ピトリと、彼女の胸に耳をくっつける僕。
「っ……ど、どうしたの?」
「ドキドキやばない?」
「そ、そう?」
過去一番の振動っぷり。
ギアセ〇ンドだの〇〇の呼吸だのの主人公が使うような心臓ブーストのように、今の彼女の身体能力も上がってるのだろうか?
「お風呂では気にならなかったけど、ずっとこんな感じ?」
「ど、どうなんだろ……体が熱くてポーっとしてる自覚はあったけど」
「お熱はー」
おでこをコツン。
過去誰かしらに何度かやってるけど検温方だが、未だに勝手がようわからん。
僕は雰囲気でコレをやっている。
この構図が好きだからやっている。
「んー……熱い、熱いのか? これ。とりあえずお布団で横になってー」
「んっ…………ンッ」
チュ
……不意打ち。
お風呂でのお返しとばかりに、カヌレからのキス。
この流れは、いつだったか、誰かとのデジャヴ。
してやったり そんな彼女の顔を予想していたが……
「もう……いいから」
「いいって?」
「これ以上は……言わせないで」
顔どころか耳まで真っ赤。
なるほど、そうかそうか。
振り返ってみれば、彼女からすれば何度も寸止めを味わったようなもの。
僕自身ただのコミュニケーションの範疇で、意地悪するつもりも意図した行動(焦らしプレイ)でも無かったが……悪い事をしたな。
こりゃあ責任とって鎮めてやらなあかん。
「じゃ、横になろっか。二人で」
「んっ……(コクリ)」
僕の差し出した手を、彼女は素直に握った。
……すったもんだ(暗喩)あって。
お風呂前に揚げていた唐揚げは、後で半分、レンチンして食べました。
◆四部◆
【八章】
1
翌朝。
『双子座の貴方! 今日は一位! ラッキーアイテム! 人との出会い!』
朝食を口に運びながらテレビを見ていると、占いコーナーが何やら興味深い内容を流していた。
「ほぉん。出会いだってさーカヌレ。新ヒロインかー?」
テレビに箸の先っぽを向けると、彼女はムッとして、
「なに? 可愛かったらナンパするつもり?」
「出会いってのはナンパだけじゃないだろ? 偶然、曲がり角でぶつかって、なんてパターンもある」
「君なら避けられるでしょ……」
「例えばの話だよ。目の前の人が物を落として僕が拾う、なんてパターンもあるかもだろ?」
「……結局、君は新たな出会いでも求めてるの?」
「いや別に? ただなー。僕にその気がなくってもなー。少し優しくしたらイケメンだから相手はコロッとなー」
「……君が女の子に思わせぶりな事しなきゃいいんだよ」
「もしもの時は君が側にいてくれ」
「人を露払い要員にしないでくれ」
パクパク
昨晩の唐揚げの残りをほおばる。
あっさりした味付けで、一晩経ってしっとり食べやすくなっている。
お弁当にピッタリ、と思ったが食べ切ってしまった。
『あっ、でも注意して! 別の意味で狙われてる可能性もあるかも!』
「むっ。僕、命狙われてる?」
「ああ、確かに。ふふっ、出会いは出会いでも殺し屋とのってパターンはありえるかもね」
「嬉しそうに物騒な事言いやがって。ふっ……しかしそれもまた僕の日常。危険な香りのする男に女の子は弱いだろ?」
「君は香りじゃ済まないだろ全身危険物め……あと別に命狙われてる男は格好良くないから」
「君は女子としては異端だなぁ」
「普通とは言わないけど割と一般的な感性してると思うよ……漫画とかのキャラで(そういう危険な男が)好きってなら分かるけどね。自らの身を危険に置いても構わない、なんて子は、現実ではそうそう居ない」
「そうそうねー。『私みたいな物好き以外は』ってかー? えー?」
「……まぁ、自由に解釈すれば?」
朝食も済んで。
「じゃあもう一眠りするか」
「だから今日は普通に学校だっての。毎日毎日登校前に我儘言わないっ」
「着替えもしてくれておんぶで連れてってくれるなら行くよー」
「それもほぼ毎日してるし……」
「生徒会長任期終えたら僕と一緒に学校サボってくれる?」
「ええ……次の日とか学校行きづらくなるんだけど」
「周りに勘繰られるからか? 今更では」
「そ、それでもっ。せめて卒業するまでは後ろ指されたくないのっ」
「任期終えたら一緒に学校辞めるって約束したのに……」
「多分私そこまでは言ってないと思う……一緒に居られる時間は増えるとは言ったけど」
ちっ、騙されなかったか。
「けっ。なら今日くらいは我慢して学校行ってやるよっ。どうせサボろうものならセレスが来るしなっ」
「ありがとう……?」
「じゃ、着替えさせてー」
「もぅ……はい、バンザーイして」




