【新年特別編】
ガチャ
スタスタスタ
「ふー、寒い寒い、コタツコタツ。はぁ……あ。あけおめー」
「……今日は何日?」
「一月八日」
「もう年末年始も過ぎて正月気分終わってる時期じゃん……学校だって始まってるでしょ?」
「いや、今日は土曜だし、今日だってまだギリ正月なんだぜ?」
「そうなの? また何かの記念日?」
「正月事納めの日って言ってな。門松やしめ縄とかの正月飾りを外す日なんだ」
「ふぅん。その正月飾りをお焚き上げする『どんと祭』は14日だっけ」
「そ。鏡開きが11日だから、正月は14日までって事で」
「ズルズルと自分基準で延長させてるなぁ……」
みかん剥き剥き
「あ。あと今日は他にも一つ記念日があるんだ」
「ふぅん。なぁに」
「勝負事の日だってさ」
「へぇ」
「正月らしいゲームで勝負する? 羽子板、福笑い、めんこ、姫はじめ。負けたら脱衣な」
「結果の見えてるゲームをやるのはちょっと……あと変なの混じってるし」
「ヤロー! 僕を全裸にするのは容易いだとっ。デカい口叩くじゃねぇかっ」
「……罰ゲーム無いんならやってもいいけど」
「姫はじめの名前の由来ってなんなんだろうね?」
「(スマホスッスッ)……新年を迎えてから炊いたご飯を食べる事、だって」
「はえー。ならもう姫はじめヤリ終えてたんだねー」
みかんパクパク
「勝負事、というなら、年末の宝くじがあったよね。私は別に買ってないし、発表の日なんてとうに過ぎてるけど」
「君の基準だと勝負事はギャンブルなのか。宝くじがギャンブルかは微妙なラインだけど。あ、そーいえば百万当たってたわ」
「へー、新年早々幸先いいね。使い道は?」
「悩むねぇ、額が多過ぎず少な過ぎずで中途半端だからねぇ。あ、バイクなら教習と車体でいい感じに収まりそう。来月には2ケツドライブ出来るぜ?」
「二月はまだ寒いでしょ……それに、二人乗りは免許取得から一年近く経ってからじゃないっけ」
「だっけ? なら車の免許が先でいいかー。それならドライブ出来るしね」
「在学中は免許あっても運転出来ない校則あった気が……?」
「なら学校やめるか」
「ドライブ一つに重い決断をサラッとしないで」
二個目のみかん剥き剥き
「物を買うのがアレなら、『一日〇〇貸切』の費用に充てるとかはどうだぜ?」
「んー? 球場とかショッピングモールとか? いや、そういうのはもっと費用掛かるか」
「(タブレットいじいじ)お、調べたら和歌山に『一泊二日一組で島と高級旅館貸切』なんてまさにこの為に生まれたようなプランが見つかったよ」
「なになに……釣りを楽しむもヨシ、温泉を楽しむもヨシ、朝と夜は豪華な食事、か……綺麗なとこだけど一日で百万……ううむ……」
「パッと使って余暇を満喫、いいかもねー。お? 同じ四国だけど愛媛でも百万で〇〇貸切系あるね」
「こっちは城の天守閣に一泊。鎧を着られるなど当時の武将体験が出来る、ね。歴女なら楽しそう」
「ま、同じような事は僕ん家所有の島でも出来るけどさ、それだと新鮮味が無いよね」
「これだから坊ちゃんは……」
「で、どっちにする? 島? 城?」
「え、行く気満々なの? も、もう少し検討した方がいんじゃないかな……」
「僕は海外の未開の地に行って君と虫探しするとかでも構わんぞ?」
「ならまだ国内かなぁ……」
「じゃあ適当に決めとくよ。んー、なんか甘い物が欲しくなったなぁ。冷蔵庫何かあるかなぁ? よっこいしょ」
「みかん食べた後に言う?」
「(ガチャ)お? 黒豆とか伊達巻あるじゃーん」
「あー、おせちの残りかな」
ニマメニマメ
「んー(パクパク)ガキん頃はおせちに魅力を感じなかったけど、酒飲みが好きって理由今なら分かるよ。甘いのが多いのも日持ちさせる為なんだよね」
「おじさん化が進んでるなぁ」
「昨日の朝の七草粥も美味しく頂けたからねぇ。その内ヒゲもじゃになったりハゲたり臭くなったりするかもしれん」
「それは本気でやめて」
「お、おう……でも、汚っさん化を避けられたところでナイスミドルになるのは避けられないぞ?」
「そういう成長は求めてないかな。今の状態で成長止める手段探さなきゃ……」
「やだ、この子怖い」
伊達巻パクパク
「なんかこう、お正月終わる前にお正月っぽい事したいな?」
「夏休み終了間際にやり残しがあってモヤモヤする感じ?」
「それそれ」
「んー……逆に、正月っぽいイベントで何してないの?」
「えーっとぉ……初詣はしたし、福袋もあけたし、お年玉もあげたり貰ったりしたし、年末年始のお笑いは見たし、親戚の子らと正月っぽい遊びもしたしー」
「ならもう無くない? 十分満喫してるよ」
「こいつ、面倒くさいからって適当な返答しやがって。あー、なんか正月どころか年末にもやり残しがある気がしてくるなー。年越しそば食べ忘れたから年明けてないなー」
「夕飯にそば茹でてあげるからそれで満足して」
「年末ジャンプ(日が変わる直前にジャンプするアレ)してなかった気がするなー」
「年末ジャンボみたいに言わないでよ、宝くじの話題は終わったよ」
「実は僕が年末年始ジャンプした結果この並行世界へとやって来た異世界人だったらどうする?」
「今のとこ何も違いが無いから大した問題じゃ無いよ」
「テセウスの船ってやつか……」
「使い方間違ってるんじゃ無いかな……」
栗きんとんパクパク
「てかさ、去年の今頃に比べたらウカノ君、記念日イベントを満喫してる方でしょ」
「去年の今頃? 記憶に無いなぁ……」
「今頃って言っても、バレンタインとかひな祭りの時期だったかな。なんか君嘆いてたじゃない。クリスマスも正月もやれてないって」
「いや、普通にやったと思うけど? この世界はサザ◯さん時空じゃないぞ? 君だって今は1◯歳で……」
「言わないで良いからっ。そ、そりゃあ実際にはイベントをやるにはやったんだろうけど……説明が難しいな」
「大丈夫?」
「頭に指向けないでっ。と、兎に角君はっ、嘆く程寂しい年末年始を過ごしてないって話っ」
「そりゃあそうさ。過ごしたい相手と過ごせたんだから、これで嘆いてたら非モテの奴らを煽る事になっちまう」
「そこに配慮するの今更手遅れな気がするけど……」
お腹ポンポン
「ふぅ……なんやかんやでお腹一杯になっちゃった……」
「食べ過ぎだよ。夕飯もあるんだよ?」
「んー、普通に食えるだろうけど、腹ごなしに何かしよっかねぇ、正月っぽいこと」
「まだ言ってるし……」
「神様狩りなんてどうだい?」
「聞き馴染みのない不穏な単語だ……何する気?」
「毎年この時期になると色んな神社に『自分を神と言い張る存在』が現れてね。なんか気持ち悪いからセレスと狩ったりしてたんだ」
「それは本当に倒していい相手なの……?」
「何故か狩った後の神社は衰退してるけどたまたまだよね」
「やっぱり倒していい相手じゃないよそれ……」
「さっ。暇してるであろうセレスも誘いましょうかね。君は?」
「本当に行くんだ……私は……遠くで見てようかな」
パキポキ(立ち上がった拍子に鳴る関節)
「あ、言い忘れてたけど……今年もよろしくー」
「ああ、うん」




