140 会長とシロクマ
動物園デートをする僕とカヌレ。
途中、園長と会い、ホッキョクグマに挨拶して欲しいと言われたので向かう事に。
僕の場合の挨拶というのは、遠くから眺めるのではく、直接飼育エリア(檻の中)へと凸の事。
あいまみえる三頭のクマと僕。
両者は一気に詰め寄って……胴上げ。
わっしょいわっしょい!
十秒ほどそんな再開の挨拶を続けて……スッと僕を下ろすクマ達。
「ふぅ……」
僕は地面に足をつけるや否や、
「へいっ、元気だったかいブラザー!」
と両手を広げ三頭を抱き締める。
「「「グォン!」」」
と返事するシロクマら。
「こ、これは一体……」
「驚いたか新入り。あのガキはあんな感じに動物と心を通わせられる奴なんだよ」
「そ、そんな御伽噺みたいな……あのクマ達に、あんな人間みたいな動きが出来るとは思いませんでした……」
「ああ。俺はアイツを今よりもガキの頃から見てるが、昔からあんな感じだったよ。初めてここに来た日なんて、気付いたらライオンの檻の中だ。他の子ライオンどもと一緒に、母ライオンの前でゴロゴロしてたよ」
「……獣に拾われ育てられた野生児は、獣と意思疎通が出来るという話を聞きますが……あの子はそういった子で?」
「いや。アイツはそういう理屈とかじゃねぇんだ。妖怪かなんかの類だと思え」
「は、はぁ…………じ、自分もいつか、あの子みたいに心を通じ合えますかね?」
「まぁ、考えるだけならタダだ。その志は大事に持っときな」
なんだか失礼な会話が聞こえるが、今の僕はデート中なんで心が広い。
そして目の前のクマ達物理的に懐が広い。
三頭のクマ……ポール、カイン、ハチ。
カインとポールは10歳だがもう大人。
生まれた時は僕も立ち合っていて、僕にとっては弟達のよう。
もう一頭のハチは御年35歳のおばあちゃん。
平均寿命が30年と考えると、長寿のホッキョクグマだ。
子供の頃から可愛がって貰ってる、この動物園の中の一頭。
女王という異名を持ち、この動物園の顔でもある彼女だが……
「ハチ婆、聞いたぜ。何か動物園の異変を感じてるって?」
「グオグオッ」
「ふぅむ……『異物』が紛れ込んでる、か。どこにいるか検討つく?」
「グオッグオッ」
「んー……『色んな所にいる』、と来たか。『やはり』というか、『期待通り』というか……ま、その辺は僕が解決するよ。情報ありがとね」
ポンポンと、僕はハチの昔と比べて少し薄くなった背中を叩きつつ、
「それよりハチ婆。体は大丈夫かい?」
「グォグォ……」
「ふぅん、腰が辛いねぇ。年には勝てないね。そんなんで僕胴上げするなよ(さすさす)」
「グオッ」
「『孫を抱っこ出来なくなったら終わり』か。変わらないねぇ。……僕んとこに元気になれる薬があるんだけど、どうだい? 副作用は無し、身体の痛い所も無くなって若い頃みたいに活性化、倍どころか百歳まで生きられるぜ?」
「グオグオ(ふるふる)」
「……そっか。ズルはダメか。そう言うと思ったよ。野生から離れても根っ子は獣。女王らしいね」
ちょっとしんみりした空気、僕はそれを振り払うように、
「今度の誕生日はまたみんなで北海道の流氷のとこ行こうぜっ。セレスも呼ぶからよっ」
「「「グオッグオッ」」」
第二の家族ら(この動物園ではこんな風に親しい奴らが何頭もいる)との挨拶を済ませ、その場を離れる。
僕は園長に、
「ハチ婆、腰が痛いってよ。内臓に疾患抱えてんね」
「ああ。歳だしな。手術は……年齢的にキツイと思うぜ。体力がもたねぇ」
「だろうさ。ま、後で痛みを和らげるウチ特製の薬送っとくよ」
「悪ぃないつも。お前らのお陰で、ウチの奴らは最期まで苦しまずに旅立てる」
「別に、大した事じゃねぇさ。じゃ、僕らはデート兼パトロールに戻るかんな」
「おお。あとその前にこれ、駄賃代わりに持ってけ」
「なにこれ。シロクマ(フルーツミルクかき氷)? タピオカも載ってるけど」
「ああ、売店の新作だ。ウチも流行りに乗ろうと思ってな。器にはアイツら(ホッキョクグマ)のイラスト付きで、これがホントのシロクマってな」
「流行りの周回遅れが過ぎるな。逆にナタデココとかパンナコッタとかマンゴスチンでも載ってた方がナウなヤングにバカ受けかもよ。ま、有り難く頂くぜっ」
二人分のアイスとは気が利いてる。
どっかに座ってカヌレと食べよう。
「んじゃ、行くよーカヌレー。……カヌレ?」
「……あの子」
カヌレは、三頭のクマを見ていた。
正確には、ハチと見つめ合っている。
ふと ペコリ ハチが頭を下げるように首を振った。
「そういやカヌレの事紹介するの忘れてたな……今戻ると感動のお別れが台無しな空気になるし、今度でいいか。行こうぜ」
「……うん」
ホッキョクグマゾーンから離れる僕達。
丁度近くにベンチがあったので、二人で座ってシロクマをパクパク。
「んー、口溶けサッパリッ。今更なタピオカだけど、まぁミルクとも合うもんだね。ミルクティー味のシロクマとかもいいんじゃない?」
「美味しいのは分かるけど、それは普通のクマ色では?」
「ミルクティー味カキ氷【ヒグマ】」
「あまり可愛さ感じないな……女の子ウケ悪そう」
「モッモッ(よじよじ)」
「おっ、モルちゃん下におりて来て、シロクマ食べたいのかな? はい、アーン」
「(パクッ)……!? キュッキュ!」
「おっ、冷たくて甘い感覚は初めてかな? 美味かろう美味かろう。むっ、君の白、茶、黒の三毛……新しい味のヒントになるやもしれんっ。カヌレ、ミルクと紅茶とコーヒー味のカキ氷『モルモット』はどうだろう? 目とかはチョコで再現してさ」
「さっきから色合いが地味過ぎる……せめて赤と緑とかカラフルさがないと」
「そこは中から赤いフローズンイチゴが出てくる仕様でいいでしょ。ね、モルちゃん」
「キュッ!?」
「グロいなぁ……」




