クリスマス特別編
「ただいま&メリクリー」
「え? ああ、メリクリー」
「ふぅ。こたつこたつ(ゴソゴソ)はぁ。寒い寒い」
「そういえば今日がクリスマス本番だったね。もうなんか終わった空気だよ」
「イヴの夜にパーティしてそのあとエッチな事したら満足するもんなぁ」
「そ、そういう意味で言ったわけじゃ……」
「君のサンタコスは興奮したぜ。こういうイベントでしか着てくれないし」
「も、もうそっちの話はしないで……」
「じゃあ夕飯の話でもするか。鍋にする?」
「クリスマスに……?」
「チキンやらローストビーフやらの洋なものは昨日食べたし、もう良くない?」
「まぁそうだけど……せっかくの特別な日だしなぁ」
「間をとって中華とかエスニックは? 海外料理だぜ?」
「まぁ……その方面でもいいか。あとで特別な日のやつ調べとこ」
シュー(石油ストーブの上のヤカンの音)
「ご飯の話したから小腹空いたなぁ。ストーブで(昨日知り合いに貰った)餅焼くかぁ」
「だから今日はまだクリスマスだってのに……あと数日我慢出来ない?」
「日頃から大福とか力うどんとか食べてるのに、そういう配慮いる?」
「配慮というか、気持ちの問題というか……」
「サキュバスの癖に日本にかぶれ過ぎだな。海外のクリスチャンがクリスマス大切にするなら分かるけどさぁ。ま、焼くのもめんどいし、みかんで我慢するか」
「こたつでみかん……どんどん正月の空気に近づいてるなぁ」
「グチグチと小姑め」
むきむき(みかん)
「じゃあクリスマスっぽい話でもするか」
「話って?」
「クリスマスといえばプレゼントだよ。まだ僕らは交換してないよね」
「ああ……でもこの年でプレゼントってのもさ」
「世のカップルは普通にやってるっしょや」
「プレゼント考えるのとか苦手なんだよね。服とかバックとかアクセサリーとか相手の好みとかもあるし。困らないものとしたら、可愛い瓶の香水とか可愛いラッピングの入浴剤のセットとか……でも男の子向けじゃあないし」
「別に、お金掛けなくても僕へのプレゼントは用意出来るぜ」
「例えば?」
「君のエッチな自撮り写真集とかね」
「お金払ってもやりたくないよ……」
「僕のもあげるからさ」
「…………それで揺れるとでも?」
「グラグラじゃねぇか。いっそ二人で撮れば恥ずかしくないもん?」
「生き恥は晒したくないから……ならまだお金出してプレゼント選ぶよ。タダほど怖いものは無いんだね」
「今から外にプレゼント買いに行くの? なら夜になればケーキが安くなるからそこまで粘ろうぜ」
「やだよ……普通に作ってあげるから」
ガタンゴトン ガタンゴトン (電車)
「はぁー…………よっこいしょ。クリスマスなのにショッピング施設は人が多いねぇ。喫茶店も丁度二人席空いてて良かったよ」
「学生も休みに入ってるから普通の休日みたいなもんだよ」
「静かなとこ行きたいねぇ。クリスマスだから漫喫……いや、ホテル空いてんじゃね?」
「そこは漫喫で留めといてよ……ここで一休みしたら普通に帰ればいいでしょ」
「だねぇ。はぁ、全く、こんなにガヤガヤしてるのもクリスマスのせいだ。クリスチャン以外の日本人が騒ぐんじゃねぇ」
「来週のお正月でも同じような事言いそうだね……」
「(店員さん)お待たせしましたー。クリームあんみつとブレンドでーす」
「どーもー。やー、寒い日の冷たいデザートは格別だねぇ(パクパク)」
「……ま、店内がこんなにあったかいわけだから余計な事は言わないけど、お腹壊さないでね?」
「帰りの電車が怖いなぁ。あ、いっそタクシーで帰る? 運ちゃん除いたら余計な人もいないし二人きりだよ」
「まぁ、良いんじゃない? 心配なら」
「あー早く自分の車欲しいねぇ。あればどこでも二人きりになれるのに」
「前も言ってたね、それ。変なとこに連れてかれそうで怖いなぁ」
パクパク チビチビ(コーヒー)
「さっき見たアニメ映画、良かったねー。昨日のクリスマスから公開してたんだよー。作中でもクリスマスだからって理由で」
「原作は知らなかったけど、確かに楽しめたかな。バトルシーンも凄かったし」
「ねー。本質は作品のテーマの通り、純愛ストーリーだからカップルにピッタリだ。僕もいつか出せるかな? 愛を突き詰めた者だけが使える純愛ビーム」
「出せるか出せないかでいえば出せる側だけど、気軽に放たないでよ?」
まいごのおしらせです まいごせんたーで りかちゃんが おまちです(アナウンス)
「そいえば昨日は君、夜に僕が帰るまでなにしてたの?」
「え? えーっと……ま、まぁ、家族とクリスマス、かな?」
「そっかぁ。僕は朝から『植物園』の方でクリスマスイベント手伝ってたよ」
「らしいね。親子連れ多かったんじゃない?」
「そうそう。ガキは家で寝てパパママ扮するサンタからのプレゼントでも待ってろってな」
「まぁまぁ……昨日は特別な日だから、子供がハメを外すのも多少はね。というか、子供の為のイベントみたいなもんでしょ」
「全く、僕だってまだ若者だってのに、楽しませる側に回らなきゃとか……お年玉を渡す側になった気分だ」
「少し分かる例えだ……」
「君も来て手伝いに来てくれれば良かったのに」
「ご、ごめんね」
「苦しみを解らせる為に今日一日は我儘な子供になるよっ」
「いつもと同じじゃないかな……」
「ままー、おっぱいほしー」
「それはもうショタじゃなく乳児だよ……」
「ばっか。男は世代を問わずおっぱいが大好きなんだよ。だから似た食感のあんみつの求肥も大好きなんだ。あーんっ」
「えっ!? あ、あーん……(パクッ)」
「少しは気持ちが解った?」
「いや……求肥は求肥だよ」
「そっかぁ。まぁ君のはこの求肥より」
「喫茶店で何言おうとしてんのっ!?」
求肥
「昨日はコナシちゃん(自称僕の娘)も植物園に来てさ。園内を案内してやったよ」
「そっか。どんなイベントを見せたの?」
「まぁクリスマスの定番は抑えたよ。ドリーが動く巨大ツリーになったりとか」
「ツリーは普通動かないんだよなぁ……」
「雰囲気作りの雪が都合よく降らなかったから、七色に光るタンポポの綿毛を大量に降らせたりとか」
「溶けない分体に引っ付いて厄介だ……しかも光るから客が動くイルミネーションになるのか」
「トナカイの代用として空飛ぶペガサスに乗って園内の子達にプレゼント配ったりとか」
「ウマが飛ぶ光景は普通におかしいけど、まぁ子供は喜ぶだろうね」
「ソリに乗ったのは僕とコナシとヒロインズだったわけだけど、ペガサスじゃなくユニコーンならヒロインズは蹴り落とされてたね」
「それは報告しないでいいかな……」
「そういえば、プレゼント配ってる途中に迷子のショタを見つけてね。ソリに乗せてあげてママを探してやったんだけど、見つかるまでにヒロイン二人がショタを励ましてやたんだ。そしたら『ぼくとけっこんしてください!』とか調子に乗りやがってよぉ。蹴り落とそうかと思ったぜ」
「大人げないなぁ……ああ、中身子供だったね君」
シャンシャン(店内クリスマスBGM)
「コナシちゃんが楽しんだのは良かったけど、まだ記憶、取り戻せてない感じ?」
「だねー。未来から来て既に数ヶ月。もうこのままこっちに住む勢いだよ」
「それはそれで……彼女の住む世界の人達が心配しそうだけど」
「コナシを救いにまた誰か来たりするかもね。逆に来なかったなら、あの子はそのままこっちの住人になるんじゃない?」
「いいのかな……」
「それが正史なのかもしれんぞ。数年後、コナシ自身が生まれたばかりの僕の子(自分)をヨシヨシとあやしてるかもしれない」
「ややこしい情景だな……」
「下手な事してタイムパラドックス(時間的矛盾)も起こしたくないからね。僕に出来る事は、どちらにしろ、この世界で彼女の思い出を沢山作って上げる事だ」
「……随分優しいパパだこと。というか、いつの間にコナシちゃんを娘として受け入れたのさ。未来の話だのなんだの、御伽噺扱いしてなかった?」
「初めは親父の冗談かと思ってたけど、数ヶ月もそれが続いたら冗談ならタチが悪過ぎるからね。タイムトラベラー。なんともロマンじゃないか。マーティならコナーシーが過去に来て親を頼りに来たんだ、あつく出迎えなきゃ、だろ?」
「ふぅん。……その優しさと気遣いを、少しでも私に回して欲しいもんだね」
「おいおい、幼女に嫉妬するなよー」
「さっきまで男の子に嫉妬心を露わにした男のセリフか」
カラン(あんみつを食べ終えた音)
「さて……念願のプレゼント交換といこうか」
「じゃあ(ゴソゴソ)私はコレで」
「んー? おー、欲しかった可愛いジョウロだっ」
「雑貨屋で買える安いやつだけど……」
「かまへんかまへん。じゃあ僕は(ゴソゴソ)はい」
「紙袋? 本みたいのが入ってる厚さだけど…………ん? これって?」
「フォトブックだよ」
「だから自撮りはしないって!」




