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138 会長とガッチャン

カヌレとの動物園デート。

どうやらカヌレは動物園に逃げ込んだというモルモット型UMAを探しにここに来たという。

協力すると胸を叩く頼りになる彼氏な僕。

UMAを探す為、動物園のモルモットをレーダーの代わりに頭に載せた。


さ、準備も出来た所で散策開始。

同時に、デート中だった事を思い出し、さっきとは別ルートを通る事に。


「ほら見て。この動物園は触れ合いゾーンにはヤギとかカピバラもいるんだよね。意外にしっかりしてるでしょ?」

「さっきはしょぼいだのと散々下げてたのに……」

「あそこは猿系だね。ワオキツネザルやチンパンジー、シシオザルなんかもいるよ」

「シシオザル……なんか長老って感じの貫禄のある毛むくじゃらなお顔だね…………にしても、私達、のんびりし過ぎじゃない?」

「も少し焦ろって?」

「君がマイペースなのは分かってるけどさ……」

「心配で心から楽しめない、ってか」


それは困るなぁ、折角のデートなのに。

彼女をあの手この手で説得せねば。


「全く、君はあの人喰いモルちゃんをよく観察してないようだね。注意深くあの子の挙動を見ていれば、僕の落ち着き振りも理解出来たろうに」

「君は基本焦らないだろ……」

「カヌレには、あの子が手当たり次第生き物を襲ってるように見えたかい?」

「えっ? それってどういう意味……」

「僕はひと目で分かったぜ。あの子は『正々堂々』としか戦わない」

「正々堂々……? 動物なのに?」

「うむ」


僕は頭のモルちゃんを「キュワ!?」ヒョイと引っぺがし、ぷにぷにとホッペを突きながら、


「あの人喰いモルからは『不意打ちしない』と、そういう矜持を感じた。ルール無用の自然界なのに、武人みたいな獣だよ。いや、武モルか」

「言い直しても意味が分からない……」

「多分、餌になる対象は『先に攻撃してきた』相手だろう」

「……でも、見た目はただのモルモットだよ? オヤツみたいなものだ。映像にあったワニみたいに、相手は油断して攻撃を加えると思うけど?」

「常に飢えが満ちる野生なら、ね。でも、ここの動物園の子達はそこまで飢えてない。その人喰いモルを虐めようとしない限り、安全だと思うよ」

「……それも希望的観測というか、勘でしょ?」

「うん。でも僕の勘は当たるぜ?」


ジッと目を細めて僕を見るカヌレ。

僕の言葉に信憑性があるか判断しているのだろう。

手持ち無沙汰な僕はモルちゃん顔を「モギュー……」グニグニマッサージ。


「……とある組織がさ」

「うん?」

「君のいう人喰いモルモットを作ったとされる組織さ。そいつらがさ、モルモットに【ラクタ】と、そんな名前を付けたという情報があったのを思い出して」

「ふぅん。ラクタ……ラクタヴィージャがモチーフかな?」

「え?」

「知らないのかい? インド神話の登場人物さ。アスラの仲間でドゥルガーと戦った豪傑」

「物好きじゃないと知らないよ……よくサラッとそういう知識出てくるね……」

「ソシャゲやってたら名前覚えるよ。ソシャゲのキャラには日本神話やら北欧神話やらの登場人物が多いからね」

「そ、そうなんだ」


わらびちゃんなら話が通じるだろうけど、こういうのに疎いカヌレはカヌレで可愛いと思うぜ。

教える楽しみもあるからね。


「ラクタだってさ。カッコいー名前だねーモルちゃん?」

「キュッ!?」

「その子は違うでしょ……」

「というか、ラクタを作ったってゆーその組織はなんなん? 超生物の研究をしてる組織とか、そんな漫画みたいな存在、実在する方が驚きだよ」

「君の周囲に比べたらおままごとみたいな存在だよ……まぁ、そういうUMAを作って金儲けなり野望なり自己啓示だったりの欲を満たす輩はどこにでもいるって事さ。件の組織は潰されたけど、その際にいくつものUMAが散り散りになったんだ。いくつかはウチで回収済みだけど……」

「今回はそのラクタの回収って事ね。……しかしなぁ。ラクタが『名前のモチーフと同じ力を持つ』なら、少し厄介だね」

「え? それってどういう……」

「むっ」


僕はしゃがんで、目に入ったソレを拾う。


「……鉄くぎ?」

「もー、危ないなぁ。スタッフは何をしてるんだっ。脱走した動物が食べたらどうするっ」

「脱走する前提なのはアレだけど、まぁ客の子供が怪我したら危ないもんね。錆びてたら特に」

「どっかにスタッフいねーかなー。説教+処理をお願いしたいとこだけど。その辺には捨てられないし」

「入口のとこまで戻ろうか?」

「キュッ! キュッ!」

「ん? どしたのラクちゃん頭から降りて来て。くぎ持ってるから危ないよ」


パクッ バリボリバリ ゴクン

よじよじと僕の頭まで戻るラクちゃん。


「はえー、最近のモルモットってガッチャンみてーな事出来るんだね」

「いや、無理でしょ。……この子、もしかして……」


「おっ、ウカ坊じゃねぇか!」


む?

不意に、白髪の作業着おじいちゃんに呼ばれる僕。


「おー、園長じゃん。まだご存命だなんて驚きだよー」

「ちょっ、ウカノ君っ……!」

「カッカッカ! 相変わらず口の悪ぃクソガキだなっ。ガキ(動物)どもを置いて簡単にくたばれるかってんだっ」

「衰えた姿見せたらライオンにガブリとやられるもんな?」

「腐った肉をウチのグルメなガキどもが食うわけねぇだろ?」

「「カッカッカ!!」」

「何だこの二人は……」


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