131 お嬢様とイチャイチャ制限
姉妹の家に行くと、わらびちゃんがゲーム配信をしていたので乱入。
二人でイチャイチャ共同プレイ。
ゲーム配信を終えたあと、次は彼女のお絵描き配信に。
あまり乗り気じゃ無いけど、おだてりゃ描くだろう。
「ほらほら、ちょちょいと描いてよ、プロなんだから簡単でしょ?」
「それ絵描きが一番ムカつくセリフだからね?」
「内容は、僕らが向かい合って手組んでイチャイチャしてるやつでっ」
「コイツ……変な切り抜き動画作られなきゃいいけど」
「これだけ『お布施』が飛び交う生放送が注目されんわけないだろ。明日にはTwi◯terとかpi◯ivに僕らのイラストが溢れてるんだぁ(うっとり)」
「のんびり活動してたんだから目立たせないで……」
いそいそとゲーム機器を片付け、ペンタブなどのお絵描きの準備を始めるわらびちゃん。
それを眺めていると トントン メイドさんが「失礼します」とオヤツを持って来てくれたので、僕が受け取る。
気付けば丁度、オヤツ時、か。
「んー? 『今の声誰(配信のコメント)』だってー? この屋敷のメイドさんだよー。そーそー、モノホンのねー」
「……ちょっと。さらりとヒトのプライベート情報漏らさないでよ。ネットリテラシーって知ってる?」
「君もそんな反応したら裏付けちゃうでしょや。ま、メイドさんなんて一家に一人でしょや?」
「どこの世界線の人……?」
「んー? 『くずもち先生は今どんな格好か』ってー? んーっと、ダボダボ仕様の萌え袖っぽいシャツとーショートパンツとー赤ふちのメガネなー、いかにもな部屋着ー?」
「だから言うなって……」
「おや。考えたら、このくずもちセンセの今のVtuberアバターと同じカッコだな? 部屋着サキュバス仕様」
「……まぁ、自分のダラけた格好がモデルだからね。さて」
お絵描きの準備が済んだらしい。
僕は片手で頭を支えながら脚を伸ばして寝転がり、彼女の仕事を眺める。
スッスッスッ……
当たり前だが、慣れた手付きでスルスルと描き進めるわらびちゃん。
迷いのない手付き。
いくら絵師と言っても、『描き慣れない対象』なら資料見つつ少しずつ描き進めるような印象だけど、そこはプロって事かな。
真剣な目が眼鏡越しに覗ける。
そんな顔もまた良い。
「んー、今更だけど君、目良かったよね? その眼鏡はファッション?」
「ああ……度は入ってないけど、目の疲れを癒す特殊なレンズなんだよ」
「日々疲れてるんだね……現代っ子特有のスマホ疲れってやつだ。それとも僕の輝きに目が眩んだかい?」
「その髪色が光に反射して目がチカチカしてたのは事実かもね……」
『てか、距離感近いな?』『顔見知りって空気だし?』『あっあっあっ』
はたと気付いたように、コメントの空気は僕らの関係性について。
「みんな察しがついてるだろうけど、僕らはリアルでも知り合いだよ。知り合いというか……ふふ」
「だから漏らすなって……あと意味深な事言わない」
『只ならぬ仲か!』『BSS(僕が先に好きだったのに……)』『あっあっあっ(脳が爆発する絵文字)』
「かっかっかっ、純朴少年ら(おっさん)の脳を破壊するのは気持ちいいぞいっ」
「この子は常に敵ばっか作って……いつか背後から刺され……そうになっても返り討ちに出来るから余計厄介だよ」
「モグモグ……断末魔を眺めながら寝転がって食べるオヤツ(メイドさんの持って来た高級っぽい串団子と玄米茶)はうめぇなぁ」
「みんなー、この子のアンチ動画沢山作ってねー」
「はい、君もあーん」
「むぐっ!?」
彼女の背中に抱き付き、みたらし団子を彼女の口に押し込む。
唇の周りにつく照り照りとした甘辛しょうゆタレ。
うーん、エロす。
「(もぐもぐ)……(カキカキ)」
「おー? 口に突っ込まれたのにノーリアクションで絵描き再開かー? プロだねー。ほら、ドロドロしたのがお口を汚してるよ? ぺろぺろして、口の周り舌でぺろぺろして」
「うっさいっ、離れろっ」
「ぐはっ」
ぺいっと引き剥がされた。
彼女もイチャつきたいだろうに、視聴者の手前そんな姿は見せられない、と。
『このぞんざいな扱い……なんだ、精霊の一人相撲かっ。先生に色恋沙汰なんてなかったんやっ』『でも俺もCV水瀬い◯りっぽい先生の声でぞんざいに扱われてぇ……いや、CV井◯由香っぽい男の娘にウザ絡みされるのもそれはそれで……』『で、何を口に突っ込まれたん?』
ぐぬぬ……モブどもが好き勝手言いやがって。
しかし否定の言葉を堪える僕。
本当の関係を隠すプレイ……それはそれでアリだ。
今は勘違いさせとけばいい、真実を知った時の絶望コメントが楽しみだぜっ。
「命拾いしたなぁ、えー? (ぷにぷに)」
「どういう思考の帰結したらヒトのほっぺつつく流れになるの……もうっ、少しは大人しく出来ないのっ(指を払う)」
「ふむ。では絵の方に着目しよう。線画は既に終わってるね? 雑なラフって感じじゃなくてこのままでも出せそうなレベルの。よく分からんけど早い方なんじゃない?」
「ふ、普通だから、これくらい」
『先生ェはよく妖精のイラスト描いてるからなー』
なぬっ。




