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127 サキュバスとデート……のつもりだった


モブガールBちゃんの喫茶店でモーニングを堪能した僕とアンドナ。


「さてっ。今日は一日君との日だよっ。アプリでそう決まったからねっ」

「そうなんだ……まぁ最初は律儀にそれに従うんだろうね。で、朝の予定は喫茶店でモーニングだったみたいだけど、この後は?」

「んー、基本、デート先の抽選はその日一回のみなんだけど、喫茶店だと時間潰せて二時間くらいだからねー。特別に二回目を回すか。因みに昨夜僕が入れまくった候補はこんな感じ」

「ええっと……『遊園地、ラブホ、廃墟探検、謎の洋館』……最初以外碌なのが無いね。あとなんか、異様に『家でダラダラ』が多くない?」

「基本外に出たく無いからネッ」

「正直者め」

「さっ、ランダム抽選スタートっ(ポチッ)……あー、家でダラダラに止まったー。残念だね、どっか行きたかったでしょ?」

「いや、別に」

「なら良かった。喫茶店で丁度僕の行動もターンエンドだったし」

「他のデート先が出てたらダルそうな反応してたんだろうね……」



……その後は、二人で部屋に戻って。


「映画見よー映画。バックトゥ◯ザフューチャー123通しでっ」

「またー? それとジ◯マンジは何回も見てるでしょ? あ、千と◯尋もね」

「んだよー。じゃあYouTubeで粉瘤とか魚の目治療の動画見ようぜー」

「やだよアレ嫌い……お昼前だし、二人で見るやつじゃないよね」

「文句ばっかりっ。そんなにエロい事がしたいのかっ」

「そ、そーゆう意味じゃなくてっ」


ダラダラと午前中を過ごし……

朝食べなかったメニュー(自家製スモークサーモンとエッグベネディクト)をお昼に平げた後は……


『あ、用事あるの忘れてた』


と、あっさり、アンドナは帰ってしまった。

なんて事だ……ルールを決めた初日からグダグダだ。


「はぁ、仕方ない」


このまま一日が終わるなんてあんまりだ、もう1ターン、振り絞るか……。



と、いうわけで。


「いつだかぶりに『彼女』の家の前までやって来たのだった」


その独り言は、庭の手入れをしてるメイドさんに聞かれていた(恥ずかしい)。


徒歩数分の近所だと判明して以降、二回目の訪問。

まだ二回目とは、僕も控え目な性格になったもんだ。

庭師のメイドさんに向けて、


「ちわー。姉妹二人とも家に居ますー?」

「あー。姉の方はさっき出て行きましたねー」

「えー」


と、なると入れ違いか? そのままカヌレがアパートに帰ってれば、な話だが。

スマホで彼女に連絡を取れば動向も分かる。


戻るか、それとも……


「んー、じゃあ折角来たわけだし、お邪魔しますよー」

「どうぞー」



歓迎されたので屋敷の中へ。

前来た時と同じように、メイドさんらは忙しなく働いていた。

僕の姿を認めると、軽くペコリと頭を下げるのみ。

住人は今はわらびちゃんだけ……いや、カヌレが居ても二人だけだった別館なのにどんな仕事があるんだ? と思わないでもないが、僕が知らないだけで色々(屋敷の維持やら来客やらビジネスやら)あるのだろう。


……さて、妹の方の部屋の場所は覚えてる。

サプライズで凸ってもいいのだが……そういえば、カヌレの部屋も当然ここにはあるんだよな。


ふと、彼女の『香り』が気になった。


カヌレが部屋に残した彼女の香り(生活観)。

アパートの部屋はミニマリスト仕様だ(僕が通うようになってからは物が増えた)けれど、実家もそうなのだろうか?


僕はパタパタと走っていたメイドさんを捕まえ、


「すいませーん。カヌレの部屋ってどこっすか?」

「え? あー……勝手に入ったら怒られません?」

「確かに。許可取るか」


ポチポチポチ。

一応一言スマホでメッセージを送っておく。

返事はすぐに来た。


『今君の家に居るけど部屋に入っていい?』

『なんで居るの!? ……んー、まぁいいけど』


いいらしい。


「いいらしいっすよ?」

「はぁ……ではこちらです」



メイドさんに案内してもらい、部屋の扉の前へ。

……普通の扉だ。

なんかこう、扉が傷だらけとかヤバイオーラが漏れ出てたりとかそういうのは無い。

逆にそれが怖いか? いや、そもそも、何故僕は彼女の変人性を期待してるんだ?


「(ガチャ)お邪魔しまーっすっと」


入って、まず感じたのは残り香。

嗅ぎ慣れた甘い芳香。

今彼女の住む部屋よりは薄いが、直前まで居たであろう空気なのは分かる。


「んー……相変わらずミニマリストしてるなぁ。それとも、家を出る時に片付けたのかな?」


ベッド、机、スタンドミラー。

広い間取りはわらびちゃんの部屋と同じだが、彼女ほどの生活感は無い。

アレだけ華やかな表舞台に立っていたとは思えないほど、特色の無い部屋。

これを初めて見た者が、そこに暮らしていた者の人と成りを予想するのは難しいだろう。

何も無さすぎて客間と思うかも。


「ふんふん……特に『持ち帰りたい物』は無いかなぁ…………むっ?」


この分厚くてデカくて特殊な手触りの本は……アルバムだ。

最早今では失われつつある文化(?)。

スマホ一つで事足りるので、わざわざ現像する家庭も少なくなっただろう。

だからこそ、夢先家も親子してたんだな、と意外な気持ちに。

しかし、これはいい物を見つけた。

彼女も見られるのを分かってるだろうし、覗いていいだろう。


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