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【ハロウィン特別編】

【彼女】は突然現れた。


「こんにちは。【神竜の珠】というものを探しているのですが」


彼女は頭に大きな『かぼちゃ』を被っていた。

その日はハロウィン。

仮装、なのだろう。

かぼちゃからは後ろ髪がはみ出ていた。

スラリとした外見と柔らかな雰囲気、清楚な声の感じからして美人のお姉さんというのは誰しもが分かる。


彼女は、仮装する集団……ボクらの所にまでやって来て、よりにもよってこの学園で、そんな質問をした。


「ええっと……この学園に来るのは初めてですか?」「……面白い女」「それがどういうモノか理解していまして?」


質問の意図を訊ねるボク達。

神竜の珠は、この学園都市を支える最も重要な神秘だ。


優秀な魔剣士を多く輩出した我が学園都市。

そこは同時に、この国を外敵から守る剣士らの拠点でもある。

神竜の珠は、膨大な魔力の塊。

電力以上の出力をもたらすソレは、学園都市の交通やインフラを支ている他に、剣士達の力も底上げしている。

神竜の珠があるからこそ出来る訓練、行使できる魔法などなど……

こうして一部を挙げただけでも、その珠の重要性を解ってくれると思う。


かぼちゃの彼女は答えた。


「どういうモノかは把握してませんが、私の上司が『持って来い』と我儘を申しまして。なので、お譲りして頂きたくこうして足を運んだのです」


またか、と、ボクらは辟易する。

神竜の珠のそんな性質上、狙う輩はごまんといる。

力を独占したい者、私利私欲の為に使う者、他国からの遣いなど、枚挙にいとまがない。


最近、ボクらが強大な敵を退けた事で、賊も臆して、暫くはこういった人が来ないと思っていたが……。


「……一人で来た? 仲間は? どちらにしろ、損な役回り。ここで殺されるとは思わなかった?」


と呆れ顔を向けるクールな彼女は、氷使いのヒムロさん。

雪女の仮装。


「貴方の言い方はあれですが、内容は同意します。かぼちゃさんからは魔力を一切感じません。赤子にすら僅かにあるというのに……非戦闘要員ですの? よりにもよって、我々に話し掛けるとは、愚行を通り越して最早悲劇ですわね。こちらの魔法で貴方から情報を吐かせるのも可能ですのよ?」


無慈悲なこちらは、雷使いのライトニングさん。

彼女は魔女の仮装


「そ、それはやり過ぎじゃないかな……」


と、情けない事しか言えないのが、非戦闘員で『回復』しか出来ないボク。

仮装は包帯ミイラ(マミー)。


「おー。どうしたお前ら?」


ふと、吸血鬼の仮装をした男子生徒がこちらに来る。

焔使いのホムラ君だ。


この三人。

ヒムロさん、ライトニングさん、ホムラ君……この三人は、学生の身にして、世界救った英雄だ。


半年前、世界を脅かした組織ヴァルハラ。

その組織のトップはホムラ君の師匠でもありかつては世界最強の魔剣士と称賛された女、フレアだった。


世界を巻き込んだ戦いは、この三人の活躍の末に幕を閉じた。


名実共に、三人……特にホムラ君は、今や世界最強の魔剣士と言われている。

さきほどライトニングさんが『よりにもよって』と言ったのは、そういう意味だ。


最強の三人に、宝を寄越せ、だなんて……。


無謀と、そう、『思っていた』。


「ッ!?」


ばっ と、ホムラ君は顔色を変え、腰に手をやった。

それは、彼の戦闘体勢。

腰には、先程まで無かった一振りの刀。

魔法で顕現させた刀だ。

斬ったモノを燃やし尽くす炎の刀。

見るのは、それこそ半年ぶり、地獄のようなあの日々以来で……。


「おい。誰だそいつは……!」


ホムラ君はかぼちゃの侵略者を睨む。

彼女は未だ動きはない。

ホムラ君に敵意を向けられてなお、焦る様子も無い。


「……どうしたのホムラ」

「本当ですわ、急に焦ってみっともない。このかぼちゃさんは、堂々と我らに神竜の珠を寄越せと言って来た勇者ですわよ?」

「珠を……? なら、お前らもそいつから目ェ離すなっ」

「ホ、ホムラ君? でも、この人からは魔力なんて一切……」

「感じないから安心、ってか? お前ら日和り過ぎだっ! だからこそ『異常』な相手だろっ!」


ホムラ君はかぼちゃさんから目を逸らさない。

不意に、スッと、かぼちゃさんは首の後ろを掻こうとするように、右手を背中にまわす。


「分かる人には分かるものなんですね。それが良いとは限りませんが」


ゾクリ


粟立つ肌。

ボク達三人は本能的に、反射的に、かぼちゃの彼女から距離を取る。


それは、死の香り。


これまで何度も感じて来た感覚だが、今までのを何倍も濃縮したような、明確な死を意識させる甘い香り。

何故、急に?

見ると、かぼちゃの彼女は、その手に【木の棒】を握っていた。

木刀、か? どこから取り出した? 彼女も魔法で顕現を?

けれど、いまだに魔力は感じない。


ホムラ君は問い掛ける。


「……お前は何もんだ? 何故魔力を感じない?」

「魔力……それは恐らく、貴方達が使う力と私が使う力は違う概念だからでしょう。そこは気にしないで下さい」

「なんで、お前ほどの奴が今更出てきた? 身をひそめてたのか? 俺らが日和るまでっ」

「いいえ。『この世界』に来たのは先程ですよ。私は異世界の者ですので」

「異世界だと!?」


異世界……!

それは、ホムラ君と『同じ境遇』だ。

彼も、当初は異世界から来たと言っていた(いや、転生だったか)。

話が本当なら、彼女は自由に異世界を行き来出来るほどの実力者という事。


「異世界だろうがなんでもいい! どっちにしろ神竜の珠は渡さねぇ!」

「私が、何故貴方がたに声を掛けたか分かります?」

「声を掛けた理由、だと?」

「こちらの世界では、貴方がたが一番の強者と聞きましたからね」

「ふんっ、ついでに強い奴と戦いたかった、とでも言う気か?」

「いえ。貴方がたを『処理』すれば、この学園の皆の心を折れて作業が楽になると思いまして」

「テメェ……!」


ホムラ君は剣を抜く。

同様に、ヒムロさんやライトニングさんも、自らの武器を顕現させる。


「ここで始めるつもりですか? 別に構いませんが、周囲を巻き込みますよ」

「脅しか? 他の奴らの加勢があると困るか?」

「ホ、ホムラ君……今日はハロウィンで学園には一般のお客さんもいるから……」

「ッ……!」


周囲にはハロウィンを楽しむ客。

有名人という事でこちらをチラチラ見る者もいるが、今置かれているこの状況を緊急事態と思う者は誰一人居ない。

実績のあるメンバー、という安心感もあって、武器を顕現させていてもそれを悪ふざけとしか思わないだろう。

ハロウィンという仮装が許された日だから、なおさら。


「増援を呼んで頂いても構いませんよ?」

「チッ、辞めやがって……こっちに鍛錬場がある」


ついて来い、と顎で示すホムラ君に、かぼちゃの彼女は素直について行く。


「ああ、そうです。先程、お前は何者か? という問いに答えてませんでしたね」

「あ?」


「一応、神をやっていました」



……訓練場にやって来たボク達。


ここは岩場地帯だ。

草木も生えておらず、どれだけ暴れても周囲に被害は及ばない無機質な場所。


「ふむ。ではどなたから」


ドォン!!!!!


…………え?

かぼちゃの彼女が、その場から消えた。

こちらに振り返って、直後だ。

いや、ボクには分かっている。

今何が起きたか、起きているのか。


かぼちゃの彼女がいた場所には、今、巨大な氷塊が鎮座している。


小屋ぐらいはある氷塊。

それが、降って来た。


そして、この焦げ臭さ……。


氷塊が落ちる、それより先に、カボチャの彼女が浴びたのは、雷。


カッ! と煌めいたかと思うと、狙ったようにその場所に、雷が落ちた。


その後、氷塊。


タイミングはほぼ同時。

ひとたまりもない災害。


「お、お前ら……」

「卑怯とは言わせない」「ええ。これは試合ではなく殺し合いでしょう?」


攻撃を放ったのは、ヒムロさんとライトニングさん。


かたや、本気で戦った土地を年中冬に変えた氷の魔剣士。


かたや、同じ様に、死闘を繰り広げた島を落雷の止まぬ地にした魔剣士。


天災コンビと恐れられる二人は、そこまで仲良くはないが、コンビネーションは意外と合う方で。


決して、不意打ちなどしなかった正々堂々な剣士、だった。


彼女達を責めるつもりはない。

それほどまでに、あのカボチャの彼女は危険だった。

剣士としての信念を曲げてまで、二人は手を汚したのだ。


「話が早くて助かります」


……それは、もう聞く事は無いと思っていた声。


いや、本当か?

本当は、分かっていたんじゃないか?

これで終わる筈がない、と。

ボクが思う事を、攻撃した二人が思わないなんて有り得ない。

その証拠に、二人の表情に驚愕の色は無い。

ただ、苦虫を噛んだ様に、悔しそうで。


ひょっこり 氷塊の裏からかぼちゃの頭を覗かせる彼女。

その身体には……焦げ跡一つない。


「疑問に思ってそうなので、先に答えます。同じような力を当てて相殺したまで、です」


彼女が氷塊に触れると、その部分だけ スゥ と穴が空いた。

熱で溶かしているのではなく、無にした、と彼女は言うのだ。


それで、人一人分の穴を開けて避けた、と。


ヒムロさんの出す氷は、水ではなく魔力の塊。

確かに理論上、同じような力を当てれば……だが……そんな芸当を出来た敵は、今まで居なかった。

それは、ライトニングさんの、魔法の雷も同様に。


「……それが、お前の力か? この二人と同じレベルの、氷と雷の魔法を操れる、と?」


問い掛けるホムラ君。

簡単に言うが、別の属性を一つの体に宿す魔剣士など、歴史上にも存在しない。

別世界の住人だから可能、なのか?


「いえ?」


カボチャの彼女は、右手に ボゥ と炎を宿し、


「私は神ですからね。世界を創造するに必要な力は、一通り使えますよ」


さらりと、簡単に言いのける。

その炎の威力は、ホムラ君に匹敵するであろう事は、想像に難くない。


……神。


彼女はそう、自称していた。

虚実や虚勢など感じぬ、さも当たり前な口調。

本当に、別世界の神なのか?

それほどの力があって、なぜ我々の神竜の珠を必要とする?


「さて、再開しましょうか。先程 話が早くて助かる と言ったように、私は出来るだけ早く終わらせたいのです。なので、得意な力を使わせて貰いますね」


ズ ボ ボ ボ ボ !!!


彼女の足元を中心に、数カ所から飛び出したのは…………巨大な植物。

ついさっき、木刀を見せた時よりも濃厚な、死の香り。


「家に双子のおチビを待たせていますので」


サラリと、かぼちゃからハミでた『緑色』の後ろ髪が揺れた。


【to be continued……】


──────


「はぁ……つづきがきになるー」

「見ないでいいよ、(パパンの隠し子だの実は僕の未来の子供だのと設定が渋滞してる幼女)コナシ。僕はこういう俺ツエー系が嫌いなんだ」

「自分もよくしてる癖に……(キョロキョロ)……ああ、今日はハロウィンか」

「お? アンドナちゃん、その様子だと『例のアレ』な状態か。今の状況は超速理解したかな?」

「もう慣れたからね……。で、ここは? 外でもう夜みたいだけど」

「植物園」

「……マジかぁ。確かに、ハロウィンやるんならこれ以上ない場所、だね」

「おねえちゃん、どしたのー?」

「例のアレだよコナシ」

「ああ……」

「幼女に憐れまれてる……」

「さて、野外シアターでクソ映画見終わったから、他のとこ行こっか」


「ううむ、まさに百鬼夜行って感じだね。ゾンビやケンタウロスやガイコツ、中には口裂け女とかクネクネなんて日本の妖怪までいらぁ。みんな仮装上手いねぇ」

「りあるー」

「仮装じゃないのもチラホラいるけどね……」

「あっ! き とか はねのはえたおうまさん とかもあるいてるよ! あれもかそー?」

「アレはここの日常的な風景で珍しいものでもないよ」

「普通におかしな光景だけどもね……」

「アンドナのサキュバスコスもかわいいねっ」

「えっ!? あっ、ホントにしてる!」

「ハロウィンとはいえほぼ下着みてぇな格好するとか流石だなっ」

「絶対私の意志じゃなかったでしょ……」

「コナシのキョンシーもかわいいねっ」

「まえがみにくーい」

「律儀に顔にお札貼ったらそうなるよ……」

「僕の狼男も流石だろ? ガオー! お菓子いらないからイタズラさせろー!」

「もうそれが目的じゃん……」


「おかしいっぱいもらっちゃったー(ホクホク)」

「いーなー。僕も言えば貰えるかな?」

「貰えると思うけど、この歳だと流石にね……てか君はここの『王子様』なんだから食べ放題でしょ」

「人から貰ったタダのお菓子を食いてーんだよなぁ……」

「面倒くさいなぁ……」


「しかし、十月も今日で終わりかぁ。まだ回収してない記念日沢山あるんだよねぇ」

「別に、過ぎたんだから無理に回収しなくても……」

「柿の日、テディベアの日、ホームビデオの日、卵かけご飯の日、初恋の日……めぼしいのはコレらかな。まぁさっき映画見たからホームビデオは回収っと」

「雑だなぁ……」

「あっ、にそくのくまがあるいてるー」

「仮装かな? よしっ、テディベアの日回収! あとは、柿と卵かけご飯はここで若しくは帰ったら食べる、初恋の日は毎日が初恋気分だからオッケー。おいおい、瞬殺だよ」

「君がいいならいいんじゃないかな……」


「わー、おおきなかぼちゃー! ひかってるー!」

「照明的なジャックオランタンのオブジェだね。家くらいでかいカボチャだけど、この植物園ならまぁ、普通に置いているレベルだ」

「感覚が麻痺するなぁ……」

「にしても、不思議な感じの光だなぁ。中に何が入ってんだろ?」


「お菓子いらないからイタズラさせろー!」


「あーっ、おばあちゃん!」

「いきなり現れて気持ち悪い事言うな」

「親子だなぁ……」

「ハッピーハロウィンだよみんな。楽しんでくれてるかな?」

「えいがみたー!」

「おおっ、アレかっ。編集無しのママンの栄光の軌跡リマスター版っ。今回のは十年前のママンのやつだねー」

「よく自分の昔の映像とか流せるなぁ……僕なら黒歴史だぜ、アレ」

「ママンに黒歴史は無いよっ、全てが今に繋がってるからねっ。あ、そういえば、映画観たなら分かるでしょ? 神竜の珠ってやつ。それ、今このカボチャの中に入ってまーすっ」

「すごーいっ」

「おお、道理で。これが数多の不幸を生んだ呪いの灯りかぁ……落ち着くねぇ」

「浴びて大丈夫なやつなのかな……」


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