◆三部◆【七章】122 サキュバスと喫茶店でモーニング
夜中に鳴く謎の鳥 < アオッアオッ
「すー……すー……むにゃむにゃ……」
「スッキリした顔しやがって」
指で彼女のホッペをプニプニ突ついたあと、手を伸ばし、枕元辺りをゴソゴソすると、指先にコツンという感触。
スマホを持ち上げ画面を見ると、風呂上がりから一時間近く経っていた。
今はベッドの上な僕達。
まだ今日は終わってないらしい。
ん? 何してたかって?
無粋な事訊くなやい。
さっき。
お風呂の時、彼女の前では『行為』に乗り気ではない態度を見せたが、別に、冷めたとか飽きたとかは一切無い。
まぁ、焦らしプレイみたいなもの。
一段階前のイチャイチャの方が好きなのは否定しないけど、その次の段階でしか味わえないアンドナの『顔』や『声』の変化が僕は好きだ。
「はぁ…………」
天井を見つめながら考えるのは、隣で眠るアンドナの事。
妙に、なんとなく、今日の彼女は積極的に感じた。
それは、彼女の気分かもしれないし、抵抗感が薄くなっただけかもしれないが、少し引っ掛かった。
物事には全て因果があると思っている。
……原因、理由。
今日は何あったっけ?
頭の中で箇条書きでもするように、出来事を並べる。
学園祭。
アンドナも訪れた学園祭。
そこで彼女は何を見た?
神楽。
僕の神楽。
素晴らしい神楽を見て惚れ直した?
それとも。
『姉妹』とイチャついてるとこ見て、嫉妬した?
うーん……。
全部、かな?
特に、一番の要因は最後だろう。
アンドナにとっては初めてその目で確認したであろう姉妹。
そのそっくりさに驚愕したはずだ。
ドッペルゲンガーを疑って、僕らの前に顔を見せなかったのやもしれん。
迷信を信じる子供みたいに可愛い(身体だけは大人な)淫魔だ。
「ふぅ。でもまぁ、そろそろ方針は固めなきゃ、ね」
「むにぁ?」
「独り言だよ。夢の続きに戻りな(ナデナデ)」
「むにゃむにゃ……zzz」
方針。
ヒロイン達との付き合い方、だ。
嫁は三人居ても、この体は一つのみ。
こちらも三人に分身出来ればいい、というわけでもない。
てか僕の分身だろうと、それはもう僕の基準じゃ他人みたいなもんだし、ダメ。
「うーん……公平な方法……みんなが幸せになる方法……」
ヒントになりそうなモノを求めて周囲を見回す。
時計、テレビ、カラーボックス、漫画、ティッシュ……
「ん……ティッシュ……」
枕元のティッシュボックスで止まる僕。
なんだっけ……なんかの漫画で有効活用してたな…………あっ。
ティン!
と妙案を閃いた僕は、早速、スマホで目的のアプリを探し出す。
ふふふ……楽しくなって来たな。
1
チュンチュン チチチ
「ふあぁぁぁ……むにゃむにゃ。外は寒いねー」
「朝ご飯準備してあるのに……」
「まーだ言ってんのか」
学園祭の翌日、早朝。
僕はアンドナと外を歩いていた。
朝の散歩……といえば爽やかな印象だし、間違ってもないが、今回は目的地がある。
『喫茶店』だ。
「だからぁ、朝のは昼に食うっつってんぢゃん」
「朝は朝のイメージがあるのっ。昼に焼いたトースト出たらおかしいでしょっ」
「別に?」
「出し甲斐の無い男め……」
普段は。
朝はいつもカヌレと一緒、と決めていた(何となくそういう流れになっていた)が、今日は別々だ。
昨晩、彼女から、
『今日は実家に泊まるから』
なんて、怒った嫁みたいなメッセージがスマホに来ていたから。
いや嫁なんだけどさ。
まぁ彼女にもプライベートはある、たまには家族水入らずで過ごさせてやるぜ。
けど、妹のわらびちゃんとは気まずくなってそうだな?
「で、喫茶店だっけ? そんなに行きたいとこあったんだ」
「いや、昨夜君の隣で寝転がりながらスマホで検索したら近くに話題の店があったみたいだから適当に」
「……まぁいいけど」
「昨夜裸の君の隣でさ」
「どこ繰り返してんのっ。……てか、今日学校は?」
「学園祭明けで休みだってさー。てか、しばらくはもう学校行かなくてよくね? 感覚的に夏休みとか明日からでしょ?」
「感覚で休まないでよ……」
「君だって、サキュバス学校はどうしてるのさ」
「新たな設定を……私はほら、飛び級で合格して今はフリーだから」
「エリートなのかぁ。今の所優秀なとこは見た事ないけど能ある鷹はってやつだね」
「変に期待しないでね……あー、こっちの世界じゃ表立って能力は使えないってやつ? だから」
「じゃあ君の故郷の【魔界編】に行くの楽しみにしてるよ」
「変な予定立てられてる……」
「……お? 多分ここ、かな?」
足を止めた場所。
目の前には、こじんまりとした、いかにもなモダン系喫茶店。
モダン……モダンってなんだろう? なんかこう、レトロな感じ?
「ああ、確かここは……」
「知ってンの?」
「まぁ……名前はね」
「そんなに有名なんだ。ま、僕ァ美味しいモーニングが食えりゃあいいよ」
「あれ、でも予約が必要だった気が? 住宅街だし、行列を防ぐ為って意味で。してるの?」
「そりゃ顔パスよ」
「絶対知り合い居ないでしょ……」
「兎に角入るよー」




