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120 サキュバスと回想



13


ちゃぷ ちゃぷ


「いやー、総括すると、学園祭は大盛り上がりでしたね……」

「君が一人で暴れてただけじゃ……」


場所は戻って自宅inアンドナとのお風呂。

学園祭の回想タイムも終了だ。

回想タイム長かったな。

回想タイム前は……ああ、そうそう、お風呂で天体観測してたんだ。


「アレ〇サー」


と、風呂の天井に映していた星空モードも終了オフに。

なんとなく、彼女もその方が気が楽だろうと電気は付けず薄暗いままで。


……え? 学園祭閉会式の話? どうでも良くね?


「そーいえば、君も僕の神楽を見てたんでしょ? 改めて感想を賜りたいね」

「ああ、うん。とても綺麗だったよ。流石だったね」

「えー、なんか感想がフツー。もっと『過去10年で最高と言われた年を上回る出来栄え』とか『100年に1度の出来、近年にない良い出来』とか『香りが強く中々の出来栄え』とか深い感想をさぁ」

「どこの期間限定ワインなの……君の過去の踊りは知らないし……」

「まぁ僕の本気はあんなもんじゃないけどねっ」

「……知ってる」

「ん、ちょっとお湯がぬるくなったね。追い焚き追い焚き」


壁に張り付いた操作パネルを一押し。

直後、ボッとどこからか点火音。

便利な時代だよ。


…………点火といえば、ふと。

もう学園祭回想タイムは終わりと言ったが、一つだけ。



神楽の後、残っていたイベント的なのは『キャンプファイアー』だ。


木組みのジェンガのような土台の中でパチパチと燃え盛る炎。


夏のジメジメと暑い夜にやるなど正気の沙汰とは思えなかったが、バーベキューみたいなもんかと一人で納得。


因みに、夏だから虫も誘蛾灯のように炎に集まってしまうだろうと、人間の都合よりも虫の死を懸念した僕だったが、そういえば夜なのに不自然なほど、校庭には虫が寄り付かなかった。


僕がそう願ったからかもしれん。


人の血を吸って潰される可哀想な蚊は居なかったんや。


『お、あの背中は……おーい』

『(チラッ)……ど、どうもです』

『お疲れのご様子だね、偽会長さん』

『に、肉体的疲労が由来ではありませんがね……』

『精神的疲労か。姉とはいえ別人を騙るのは常にヒヤヒヤだろうからね』

『そ、そちらでの疲労も大したものではありませんよ』

『神経が太いねぇ。あ、君も踊った僕を労えよ』

『ね、労いの強要……良かったですよ』

『ふふ、君も僕の魔法に心奪われちゃったかニャ?』

『へ、変なキャラ……魔法、ですか……アレは魔法なんて可愛い舞ではないでしょう? 綺麗でおぞましい……まじないです』

『僕の呪いに掛かっちゃたかニャ?』

『あ、ある意味呪われてはいますね……』

『あ、君のライブも良かったよ。というか君ィ、歌いながら曲に共感したんじゃないかい? ラブソングみたいな恋を僕としたくなったんじゃないかい?』

『……う、ウカノさんの理想とする恋愛のラブソングは重そうですね』

『でも、ホントに驚いたよ。君はああいう飛び入り参加、しないタイプだと思ってたから。上手くメンバーを説得して諦めて貰うのかと』

『……あ、貴方と『同じ理由』ですよ』

『んー? どゆ意味ー?』

『こ、こちらの話です。カヌレなら、あの場で同じ行動を取ったでしょう? だから、です』

『カヌレは音痴で演奏も出来ないから別の行動取ったかもだけどねー。ま、いいや。その件のカヌレ、今は会長に戻ってるし。あっ、因みに優勝したのはカヌレのクラスらしいぜ?』

『……な、なんの話です?』

『ほら、朝にモブガールズが言ってた『人気一番の出し物にはカヌレを自由に出来る権利プレゼント』ってやつ。カヌレのクラスは無難にメイドカフェしたらしい。僕らは行ってないから知らないけど、カヌレが上手く客引きしたから売上もぶっちぎりだのって』

『……そ、そうですか』

『君も、今日は災難だったね』

『う、ウカノさんが私にやらせたんですけどもね』

『そうだっけ? 任命したのですら随分昔に思えるなぁ。だから、『君と』こうして二人きりになれたのも『久し振り』な気がするぜ』

『……ま、まぁ、私はもう帰りますが』

『えー、折角二人きりになれたのに? のんびりファイヤー眺めてようぜ? そして踊ろうぜ?』

『す、すいません……今日はちょっと』

『そこで自由に踊ってる人達はみんな、カップル若しくは意中の相手に勇気を出して誘った連中ばかり、だとか。僕らもラブラブぶりを見せつけてやろう?』

『や、やろう? と言われても……実際私達はそのような関係では……』

『例のドスケベ風紀委員長も変装してまでチャラ男と踊ってるんだよ?』

『だ、誰ですか? 私その人知りませんし……後でカヌレでも誘って下さい。針の筵になりそうですが、ウカノさんなら気にしない筈です。も、もうカヌレの代用にはなりませんよ?』

『めっちゃ喋るやん。君、会った頃と少しキャラ変わったね?』

『そ、そうですか?』

『良い意味で、言いたい事言えてる気がするよ』

『お、恐らく、ウカノさんとの付き合い慣れただけです』

『僕に慣れるだと!? クソ、どうやってこの子を驚かせよう……?』

『ま、まず驚かそうとしないで下さい』

『しかし見てるとアレだね。そのクールさ、君のお母さんのシフォンさんにより近づいたんじゃあないかい?』

『……ひ、酷い侮辱です……』

『母親になんて事を。何があったか知らないけど、全てはシフォンさんが君を思ってした事だと思うぜ? 母の愛を無碍にしてはいけないよ』

『う、ウカノさんが母親の愛を語りますか……』

『僕は愛についてだけはうるさいよ。まず僕達、『相思相愛』じゃん?』

『…………な、何を根拠に』


『わかるよ。相手を見ただけで『誰が誰を想ってるか』わかるんだ。根拠は、ほら、僕、『愛の女神の子供』だし?』


『っ……』

『なんてね。あ、相思相愛の部分はなんてねじゃないよ?』

『…………帰ります』



そんな感じに、普通にわらびちゃんに帰られた。

回想終わり。

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