表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/369

117 兄妹と神楽 7

箱庭神楽ももう終盤だ。


巨大ロボの乱入という不測? の事態の真っ最中だが、それももう、雑に処理されそうな流れである。



「嘘でしょ……アレは古代兵器よ? 広大な都市を更地にする、悪魔の蒐集品よ……?」


自身の常識(世界)を再確認するように、先程のセリフを繰り返す隣の彼女。

一方的なロボの猛攻も、全てドリーに鬱陶しそうに払われて終わる現実。

そんな現実を、たとえそれが敵であっても、認めたくないのだ。

自身らを苦しめていた悪魔が、こうも片手で捻られている姿を。



『……ハッ。この既視感……思い出したぞ。いや、何故忘れていた? お前達は、我が国を、数分で地図上から存在ごと消した天災……!』



「は? 国を、存在ごと消した……?」

「ああ、成る程……これは『そういう繋がり』で……」

「……貴方、何か知っていると?」

「そういう貴方はご存知無いですか。ここ最近、そういった奇怪な出来事があったのを」

「…………心当たりは、ある」


彼女は語る。

先月、とある島国の人間全てが忽然と姿を消した、と。

彼女の組織も、蒐集品の仕業と調査したが、原因は不明。


ここ(日本)ほどの面積と人口の国が一晩でもぬけの空に。

全ての街が、戦争でもあったように荒れていた。

地面には、怪物でも這い出てきたような無数の大穴がチラホラと。

しかし、死体も血痕も無し。

只事では無いにもかかわらず、世界が騒ぐ様子は無い。

それどころか、初めからそんな国自体無かった、という認識。

その国は、スポーツや漁業が盛んな、活気のある所だった。

島に近い近隣の国の政府に訊ねても、『話す事は無い』と、まるで口止めでもされてるように話題を避ける。

一つ分かったのは……彼女の追う組織の痕跡が、そこにあった、くらい。



『お前達は突然現れ、我が国を蹂躙し始めた。抗う暇もなかった。人間はあそこまで残虐になれない。あれは、まるで神の暇潰しのような、地獄の様相だった』



以前、『母の職場の事務室』でチラリと、その国についての情報文書に目を通した事がある。

兄妹とドリーが暴れた場所が知りたかった、というだけの理由で、深い意味はない。


その文章によると、国にはとある組織の本拠地……もとい、国=組織、という記述が。

表向きは活気のある友好的な国……裏では世界を掌握せしめんと各国の中枢に潜り込み、よからぬ事を画策していた、と。

国のトップは(表向きには)中年男性だったが、真のトップは組織のリーダーでもある女性だ、と。


兄妹やドリーは、仕事か、はたまた観光でその国に行き。

そこで何かいざこざがあり、兄妹らの怒りを買った。

大方、オーラを隠さない兄妹が国の人間の目を引き、ちょっかいを掛けられたのだろう。

それだけで大暴れする兄妹でも無いが、何らかの拍子にドリーの逆鱗に触れ(それか今のようにアルコールを摂取して)……

組織は最悪の結末を迎えた。


事後処理も抜かりない。

周囲への記憶処理に関しても、また、ドリーが仕事をする。


ドリーの花粉や樹液には、薬から毒まで様々な効果があり、その中に『記憶処理効果』なんていう都合の良い毒(薬?)もあって。

それに『幻覚効果』を持つ毒とを合わせて散布すれば、近隣諸国ぐらいは欺ける。

彼が普段から所持している自白剤スナオニナールもドリー由来だったり。


だが現状、全世界が『忘れている』という状況を見ると、そこはプランさんが上手くやったのだろう。

音や映像によるサブリミナル効果だとか、それこそ(彼女達の世界観に倣えば)蒐集品だとかを使って。


「名のある国だったのよ? 歴史が掲載された教科書や雑誌、映像媒体なんて無数にあるわ。全ての回収は不可能よ。現に、書店にはまだあったのを目にしてるし」

「あったとしても、『認識出来なくすれば』、それは『無いのと同じ』ですよね」

「……貴方達は一体……」


そちらも似たような事が出来る集団なのに、奇異な目で見られるのは心外だ。



ヒュッ!


今まで、自ら手を出さなかったドリーが初めて、その腕をロボットへ振るう。


ドスッ!


腕は槍のように、ロボット腹部に刺さった。


……ザワリ 粟立つ私の肌。


不機嫌なドリー。


一度ならず二度も、彼との時間に茶々を入れられたのだ。


いい加減、手で払うのも面倒になった事だろう。


『ふっ……この超兵器をいとも容易く貫くか。つくづく化け物だな、最早驚きはしない。だが……私はまだ死ぬ訳にはいかん。逃げさせて貰うぞ』


ロボットが腹に刺さった木の腕をガシリと掴む。


グググッ……


が、案の定というか、抜ける気配はない。


『容赦が無いな。獲物は逃さない、実に野生的だ。しかし、ただでは殺されん……!』


プシュン!


ロボットの首元から出る煙。


あの辺りが操縦席コクピットなのだろう。


分離させて脱出するつもりだ。


……が。


『くっ……くくっ……分離出来ん。よもやこの木、ただ腹を貫いただけではなく、超兵器内を侵し回路をも支配するとは……既に、超兵器は操り人形というわけだ。本当に、容赦が無い』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ