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116 兄妹と神楽 6

箱庭神楽が始まった。


『彼』がドリーに酒を浴びせ掛けて、泥酔ドリーと縦横無尽の鬼ごっこ。


そんな最中、謎の赤いロボットが現れ、横槍を入れて来た。

ロボットは、スピーカーか何かで兄妹に話し掛ける。

操縦士は、どこぞの組織のトップの者らしいが……



『聞こえているか? この国の言葉を話しているつもりだがな。そこの二人の少女よ。お前達がこの催しの指揮者コンダクターだろう? 演目中、横槍を入れて済まないとは思っている。続けて貰っても構わない。このまま、一方的に話させて貰う』


『端的に言おう。これは勧誘スカウトだ。先程は我が組織の男が失礼を働いた。『処分』した件については何も言わない。奴のような狂犬は組織でも扱い難かったのでね』


『私の組織は世界平和を目的としている。が、君達に思想などを強要するつもりはない。仕事クエストを淡々とこなして貰えれば、あとは自由だ。居住地も変える必要は無い。それだけで、君達を即幹部クラスとして迎えよう。当然、報酬も弾む』


『悪いが、返事は今頂きたい。私は今追われる身で、のんびりしてられないのでね。YESであるならそのベルを一度、『その他』であるなら二度、鳴らして欲しい』



彼は、なにも動く度に鈴をリンリンと鳴らしているわけでは無い。


鈴の付いた木刀を持って飛んだり跳ねたりしながらも、任意の瞬間でしか鳴らしていないのだ。


鈴自体は特殊な代物だが、振れば鳴る、という基本は変わらない。


器用というか、バランス感覚が良いというか……兎に角、ロボットの操縦士が言うように、鈴での返事は可能だろう。


リン リンッ


踊りながら、音楽に溶け込ませながら、さり気なく二回、鈴の音。


はぁ…… 少しの安堵。


彼の場合、その場のノリでYESと答えても違和感無かったから。


まぁ、付いていった所で、飽きたらすぐに帰ってくるだろうし……

彼からすれば、今はあの玩具(巨大ロボ)を入手(強奪)出来れば従う必要もないしな。


『……そうか。いや、そう返答がある事も前提としていた。だが、私は君達二人の力がどうしても欲しい。悪いが、無理矢理にでも来て貰うぞ』


ガコガコッ ガコッ

ロボットの腕部分の一部がパカリと開き……


弾罪だんざい


ドドドンッッッ!!!


棒状の【何か】が複数発射される。


ミサイルだ。


隣の彼女が言う通りであるならば、コレも、現代兵器のミサイルを超える貫通力と爆発力を持つのだろう。


ステージへと煙を上げながら向かうミサイル。


そのまま、ドリー目掛けて飛翔して


ヒュヒュヒュ


……………………そうして、

ミサイルは忽然と『消えた』。



「え? い、一体、何が? 不発で、そのまま地面にでも落ちた……?」

「いえ。あの木から伸びた枝が普通に全てのミサイルを掴んで『捕食(口はどこにでもある)』しただけです。見えませんでしたか」

「……あの木は、一体『なんなの』?」

「(今は)ラフランスの木ですよ」


【世界樹】の断片でもある。



『……素晴らしい。想像以上だ。その木も、君達の仲間なのだろう? 益々欲しい……!』


ジャギン! ロボットの手が大剣に変形。


剣花けんか


巨体とは思えぬ速さでそれをヒュンヒュンと振り回す。


ギィン! ガィン!


両者の武器が交わり、飛び散る火花。


ドリーの方は、『一つ』の腕(大木)で応戦!

……しているように見えるが、どう見ても『片手間に』、だ。


ドリーの本命は、変わらず目の前で飛び跳ねる彼。


彼には百を超える腕を回しているのに、ロボには一つだけ、というのがその証拠。


だが……『そろそろ』だ。


酔ってはいてもまだ温厚なタイプのドリーだが、『次は無い』。


許すのも二度まで。


ドリーは仏ではない。


『全く、どういう硬度をしているんだその木は。このつるぎなまくらでは無いぞ。鉄塊や山をプディングのように両断出来る特殊な合金、だというのに。……だが、これでハッキリした。出し惜しみは不粋だったな……!』


ガシャン! ガシャン!


ロボットが両手を伸ばし、手同士をガッチリ組むと、合わせた手が砲身へと変形。


すぐに砲口が眩い光で満たされて……

カッッッ!!!


殲光せんこう!』


キイイイイイイイイインンンンンンンンンン……!


光が放たれた。


軽い耳鳴りと、光による眩暈と、昼の太陽のように肌を焦がす熱。


周囲の人間が感じる被害はこの程度だが……


まともに浴びた対象は、崩壊でも黒焦げになるでもなく、まるで元から無かったように『消失』するであろう殲滅の光。


……光をまともに浴びた対象が、『まともな相手』ならば、このロボットの格も落ちなかったのだが。



シュゥゥゥ……


光の放出が終わり、残像(眩しいものを見た後視界にこびりつくアレ)も数秒で晴れ……


見上げると、確認出来たのは、多少のモヤと多少の焦げ臭さ。


『……脱帽、だな』


ロボットから漏れた声は、悔しさというよりも、畏敬に近いもの。


アレは……『うずまき』だ。


ドリーが一本の腕をグルグルとナルトの模様のように纏めて丸い盾を作り、光線を防いだ。


ダメージは、表面が少し炙られた程度。


踊っている彼はこの光景に、

『ソーセージマルメターノみたいだね』なんて思ってそうだ。


決して、このロボットの性能は低く無い。


人間社会を脅かすには充分過ぎる脅威。


それでも……喧嘩を売った相手が悪かった。

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