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115 兄妹と神楽 5

箱庭神楽が始まった。


メインの演者である『彼』は、登場早々場を掻き乱し始める。

お酒に弱いドリーが彼に酒を浴びせられ、酔って大暴れ。

結果、数多の腕で捕まえようとするドリーと、逃げ回る彼という騒がしい光景に。



しかし、忘れてはならないのが、これが『神楽』だという事。


彼は逃げているのではなく、舞っているのだ。


演舞であり、演武。


実力の近しい者同士が縦横無尽に戦う姿ほど、美しい動きはない。


世界が神を楽しませるのではなく、神が世界を楽しませる舞。


……まぁ、多少、いや、大部分、彼独自の演出が加えられている事は確かだ。


本来の……元の予定では、組み手のような形で彼とドリーは今より抑え気味で舞うつもり、だったのだろう。


しかし、彼はそれでは『物足りない』と考えた。


『盛り上げる為にもっと激しく、真に迫る感じに』と。


ゆえに、酒瓶を持ち出し、ドリーに浴びせた。


全てアドリブとはいえ、打ち合わせ無しの本番での予定変更……そりゃあ、セレスも彼を睨む。


やる気など無かった癖に、いざ本番となると目立ちたがる『お祭り男』。


……これでも、神楽が破綻しないよう、彼は今の茶番も演奏の一部に組み込んでいる。


ドリーの動きの風切り音、衝撃音、彼から響く鈴の音……無駄な部分は一つもない。


そして恐らく、物語ミュージカル要素も組み込んでいる様子。


『悪しき魔物ドリーと闘う勇者(彼)』


という構図にしたいのが察せられる。


『真の悪は誰か』 観客のイメージとの齟齬には気付かずに。



……そして、現在は。


「あー、なんかさっき紹介されてた『種飛ばす植物』とか『燃える花』とか『植物人間』とかがさり気なく参戦し始めたけど、一瞬でウカノ君に剣舞(踊りながら斬り捨て)されてんな……」

「紹介されてない植物もポイポイ木から落ちてるけど、ウー君に野球みたいに打ち返されてる……こういうギミックのボス戦あるよね。なんか演奏もコミカルな曲調になってるし……」

「は、はぇー、デ◯ズニーのエレクト◯カルパレード見てるみたいです……」


なんと自由(やりたい放題)な展開。


素面の時ならドリーも冷静な手で彼を捕まえられるだろうが、逆に酔って暴れているせいで効率を悪くしている事実。


彼も捕まる気は無いだろうから、この神楽も演奏も、彼が『満足するまで』続く事に。


セレスは『早く終わらせろ』と思っていそうだ。


まぁ、好き勝手にやってるように見えて、ステージ外に危害が及ばぬよう立ち回りはしているようだが。



……そう、これでも彼は、周りに『気を遣っている』。


大きなステージ、大勢の動物……なんて、初めて見た者は思うかもしれないが、これでも小規模なのだ。


神聖さに『耐えられる』観客ばかりならば、本来の神楽はこれの数倍の規模。


当然、激しさも美しさも衝撃も、数倍だ。



キイイイインンン!!!


……ふと。

この場にそぐわない『エンジン音』。


正確には、『前に乗った』【戦闘機】のジェットエンジンのような甲高い音。


演奏に新たな楽器を追加するのか? と思いきや……まるで月が雲で隠れたように、周囲を影が覆う。


頭上を見上げると……


そこには、校舎や今のドリーと同じぐらい巨大な【赤いロボ】が浮かんでいた。



「ッハ! 余りの異常な光景の連続でフリーズしてたわ…………って! 何故【アレ】がこんな場所に!」

「邪魔なのですぐに屠られると思いますよ。……いや、彼があのナイ◯ンゲールのようなロボにときめいて遊ぶ可能性も……? まさに今、玩具を見つけたようなキラキラしてる目で見ているし……(ブツブツ)」

「何をブツブツと……兎に角っ、流石にアレは看過出来ないわ! 小馬鹿にしてるけど、大きいだけのハリボテでは無いのよ!」

「はぁ(無関心)」

「蒐集品の中でも最上位、世界に五つしかないとされる『古代遺産トレジャー』が一つ、【超兵器マクシム】よ! さっきの男の組織が持っていると噂されていたけど、実在したなんて……早く皆を避難させて! 逸話が本当なら、アレは一時間も掛けずに『一つの都市を更地に』する事が可能なのよ!」

「それはそれは」


益々、彼が好きそうな派手な玩具だ。



『……私は未だ信じられない。この様な辺境の島国で、お前達の様な存在が認知もされていないとは』


不意に、ロボットが声を発した。


スピーカー? 越しの、女性の声。


ロボットの操縦士だろう。


中に居るのか遠隔なのかは知らないが。


ロボットは、登場時こそウルサイ音を鳴らしていたが、今はハイブリットカーの様に静かなものだ。


宙に浮かんだままだというのに。



「この声の主……もしや、私の追っていた敵組織のボス【真紅スカーレット】!? アイツが表舞台に出てくるなんて……しかも超兵器に乗って? 組織の男がやられたから、報復しに来たとでも言うの? 冷血なあの女が……?」

「搭乗者がどんな人物かは知りませんが、知人であるなら素直にロボットを置いて去って貰うよう説得した方がいいですよ、一番被害が少ない選択肢的な意味で」

「貴方っ、まだそんな余裕な態度なのっ! アレはどんな現代兵器でも傷付けられないしっ、凡ゆる装甲をも貫く矛を持っているのよっ! 相手が強硬手段に出ないと高を括ってるのなら考えを改める事ねっ」

「そこまで怯えずとも、ここ以上の『安全な場所セーフゾーン』はありませんよ」


周囲の客も演奏中と言えど流石に気付いている様子だが、これも演出の一部としか思ってなさそうだ。


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