紫音と神崎の絡み合い
入浜警察予備校高の教師が持って来た映像を観た紫音。彼はその映像を観てどう思うのか?
「って事があったんですよ!」
「そんな事があったかぁ〜」
あの動画を観て終わった後に下谷先生と時間の許す限り色々お話をしたのだが、ミリタリー系には詳しくない筒城先生にとってはチンプンカンプンな話みたいだったらしく、話が終わるまで目が点の状態で僕やコニーさんを見つめていた・・・・・・筒城先生、つまらない話に付き合わせてしまってゴメンなさい。
そして今はバイト先であるスナック・マザーラブにやって来ていて、神崎さんがカウンターでお酒を飲んでいる。
「はい、舞ちゃん達を担当している下谷先生も余りの遅さに困っているそうです」
「誰だっで最初の内はそんなもんさ、それにその子達はお前と違ってまだ実戦に行く予定はないんだろう?」
「そうですかぁ〜・・・・・・あ、これが最後の荷物です」
そう言って真理亜さんに酒瓶を差し出すと、喜んだ表情を浮かべながら受け取った。
「有り難うね、紫音ちゃぁん。でも神崎ちゃぁんはそう言っているけど、アタシとしては心配なのよねぇ〜」
「どうして心配なのですか?」
「その子達は入学して早々に実銃を持っているんでしょう? 入学して間もないのなら、模型を使って訓練をするのが当たり前でしょう?」
「遅かれ早かれ銃を持つんだから、早くても変わりははなさ。ビールをお代わりと枝豆!」
「もぉ〜、元警官とは思えない発言ねぇ〜」
真理亜さんはそう言うと、神崎さんがオーダーした物の準備を始める。
「それで、お前もコニーのようにボロクソ言ったのか?」
「僕はコニーのように言ってませんよぉ!」
そう、コニーさんは下谷さんが流す動画を見つめながら突入の姿勢がダメだの、2人の感覚が一定じゃないだの、終いにはあれが実戦だったら、確実に死んでいるだの言っていた。
「まぁでも、コニーさんの言いたい事はよくわかりますよ。流石に今のままの彼らでは、実戦投入は難しいと僕も思っていますし」
「おうおう! 紫音くんも言うようになったねぇ〜。まぁお前はお前で活躍しているからこそ、言えるんだろうなぁ〜」
「あ、ちょっとぉ! 神崎さん、止めて下さいよぉ〜!」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇんだからよぉ〜」
僕を捕まえて頭をグリグリと撫でて来る神崎さん。これってもしかして、絡み酒?
そんな事を思っていたら、出入口の扉がカランッカランッ!? とベルが鳴ったので僕と神崎さんは反射的にそっちに顔を向けたら驚いた顔になった。
「唯凪さん!」
「やぁ、紫音くんと・・・・・・神崎くん?」
「・・・・・・唯凪さん」
何かわからないけど唯ならぬ雰囲気を感じたので離れようとしたのだが、掴んでいる腕が強いせいで振り解けない。
「連絡もなかったから心配したよ」
「・・・・・・」
「まぁ、ね。キミがその反応をするのは当たり前だよね。鈇田くんはいないから、安心していいよ」
「そうですか」
神崎さんはそう言うと、腕を振り解いてカウンターに顔を向けた。
「はいどうぞ、枝豆とビィ〜ル。唯凪ちゃぁん、アナタが欲しい情報を今出すからちょっと待ってねぇ〜」
「うん、ゆっくりでいいよ。久々に会った彼とお話がしたいからね。あ、今日もノンアルコールビールをお願いね」
「はぁ〜い、わかったわぁ!」
どうなるんだろう? と思っている紫音を余所に、唯凪さんは神崎さんの隣に座った。
「元気にしてた?」
「まぁ・・・・・・はい」
「そう、ならよかった」
「唯凪さんは?」
「うん、僕はいつも通り元気にしていたよ。だけどあの時違って厳しい目を向けられているからねぇ〜。正直言って居辛いよ」
唯凪さんの言葉を聞いた神崎さんは、ちょっと辛そう表情を見せた。
「そうですよね」
「キミが背負い込む事なんてないんだよ。僕だって責任の一旦はあったんだからね」
そのタイミングで真理亜さんがまるでバーテンダーのように静かにビールを置いた。
「・・・・・・鈇田のヤツは相変わらず?」
「うん、相変わらずだから僕も困っているよ。鈇田くんじゃなくてキミが残ってくれたらって思っているよ」
「・・・・・・すみません」
「仕方ないよ。キミか鈇田くんか、どちらかが辞めなきゃいけなかったからね」
どちらかが辞めなきゃいけなかったって、どういう事何だろう?
「まぁ、そのぉ、何と言うかね。さっきも言ったけど、キミが元気にしていてよかったよ」
「唯凪さんも元気でいてよかったです」
神崎さんはそう言うと、自分が頼んだビールに口を付けた。
「・・・・・・ところで紫音くん」
「あ、はい!」
「確か来週の月曜日に入浜警察予備校の子達がキミの学校に訪問するそうだね。紫音くん的にどう思ってるの?」
「どう思っているの? と言われると、ちょっと答えに困ります」
「紫音くんと同じPMCのコニーさんが、実戦とはほど遠いと言っていたっス!」
いつの間にか真奈美さんが、お店の方にやって来ていた。
「ああ〜、やっぱりそう思うのね」
「やっぱりって、どういう事ですか?」
「特殊急襲部隊の人にも学生達の実力を見て貰ったんだけど、彼らもこれでは実戦に投入出来ないと言っていたんだぁ。
しかも理事長が厄介でね。そう言った人達の声に耳を傾けないんだよ。多分銃器の教えを担当している先生は、苦労していると思うよ」
「確か理事長のお名前はぁ〜、 羽ノ原 美世子って名前だったわねぇ〜。はい、これ」
「ん、ありがとね」
唯凪さんはそう言うと真理亜さんから封筒を受け取り、ポケットから封筒を取り出して渡した。
「あ、そうだわぁ〜! 唯凪ちゃぁんに驚く情報をタダであげるわよぉ〜!」
「え? 僕に驚く情報? それってどんな情報なんだい?」
「ニュース番組で出て射撃をしていた女の子はぁ〜、実は紫音ちゃぁんの幼馴染みなのよぉ〜!」
「ニュース? そういえば取材を受けたって同僚が言ってたね・・・・・・って、ちょっと待って! それじゃあ、つまり言うと。紫音くんの幼馴染みは入浜警察予備高校に入学したって事?」
「そういう事よぉ〜! アタシも最初紫音ちゃぁんに聞いた時は驚いたわよぉ〜」
身体をクネクネさせる真理亜さんに対して、唯凪さんは驚いた表情を浮かべながら僕の顔を見つめる。
「紫音くん、それって本当なの?」
「あ、はい。事実です」
「え? 俺は初耳なんですけど」
「神崎ちゃぁんにはお話をしてないから、知らないのは当たり前よぉ〜!」
「俺だけの除け者にしやがってぇ!」
「聞かれなかったから、話さなかったんですよぉ!」
さっきみたく掴み掛かって来ようとする神崎さんの手をヒョイと避けるら、悔しそうな顔で見つめて来た。
「何で避ける?」
「危ないって感じたので避けました」
「っと、話が逸れちゃった。来週の訪問の事だけど、気を付けてちょうだいね」
「どうしてですか、唯凪さん?」
「紫音くんの通っている学校を訪問するだけなのに、何か危ない事でもあるんですか?」
「うん、その理事長も訪問するし、キミの事を調べているっぽいからさ。何か心配なんだよねぇ」
唯凪さんはそう言いながら、スマホの画像を僕達に観せて来た。
「この人が入浜警察予備校の理事長だから、見掛けたら注意してね」
「いくら何でも、他校にやって来て問題を越すようなマネをしないと思うっスよ」
「俺もそう思います。上の立場の人間が自ら問題を起こすようなマネはしないと思いますよ」
「僕もそう思いたいんだけどね。ちょっと融通が利かないって言うかね」
「理事長なのに、問題児ってところかしらぁ〜?」
「うん、その通り。同行する先生も注意するみたいだけど、キミ達も気を付けてね。特に紫音くんと、コニーさんだったけ? まぁその子にも気を付けるように言っておいてね」
「あ、はい!」
唯凪さんは僕の返事を聞いたら、椅子から立ち上がり真理亜さんにお札を渡した。
「あらぁ〜、もう帰っちゃうのぉ?」
「うん、まだ仕事が残っているからね」
「そう、また来てちょうだいねぇ〜!」
「それじゃあね」
お釣りを受け取った唯凪さんは、僕達にそう言うとお店から出て行ったのであった。
こうして、お店を出る唯凪であった。




