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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第055話 お金最高


 しばらく待っていると、アンジェラが一枚の紙を持って、戻ってきた。


「ランドルさん、これが設計図だ。材料や作り方が書いてある」

「ほう? 随分と詳しいですね」


 設計図を見たランドルさんが感心する。


「アンジェラや娘のメアリーに手伝ってもらっていたんだ。だからわかりやすい設計図を書いた」


 規格を合わせたかったし、メアリーはそういうのを見ながらの方が良い。


「なるほど……しかし、特殊な材料は使っていないのですね」

「ああ。だから5000ミルドなんだ」

「これなら確かに5000ミルドで良いでしょうね。もちろん、希少性を考えなければですが」

「そうは言うが、3万ミルドで売ってもウチの町の人間は誰も買わんぞ」


 水筒に3万も出すバカはいない。


「確かにそうでしょうね。しかし、すでに宣伝はできている。いけます」

「まあ、そっちはそっちでやってくれよ」

「ええ。これならすぐに販売までこぎつけられそうです」


 良かったね。


「いえーい、ただいまー」


 メアリーが帰ってきた。

 時計を見ると、いつの間に16時を回っている。


「おかえり。お客さんが来ているから静かにな」

「あ、おじさんだ! ウチに来られたんだね!」


 メアリーがランドルさんを見て、嬉しそうな顔になった。


「ええ。おかげさまでね。助かりました」

「いいの、いいの。ウチだもん。あははー」


 よー笑う子だ。


「さて、こんな時間になりましたし、私はお暇させていただきます」


 ランドルさんが設計図をしまい、立ち上がった。


「その設計図で大丈夫か?」

「ええ。問題ないでしょう。何かあればまた訪ねるかもしれません」

「わかった」


 まあ、設計図にミスはないし、大丈夫か。


「では、これで失礼します。アポなしで訪ねて申し訳ない」

「いえ。良い話をもらいました」

「ありがとうございます」


 俺とアンジェラも立ち上がって頭を下げる。

 すると、俺達のやり取りを見て、首を傾げたメアリーもよくわかってなさそうな顔で頭を下げた。


「これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ。あ、そこから外に出られるんで」


 メアリーが帰ってきた裏口を指差す。


「ええ。では」


 ランドルさんは裏口から出ていき、表の方に歩いていった。


「夕食にするか」

「そうね。用意するわ」


 アンジェラがキッチンに行くと、メアリーが自室に向かった。

 俺はテーブルにつき、そーっと布を開き、中を覗く。


「ふふ」


 大金だ。

 俺はこれまでにこんなに大金を稼いだことはない。

 しかも、これが水筒の値段なんだからすごい。


 にやつきを抑えようと必死になっていると、服を着替えたメアリーが戻ってきた。


「エリックー、ところで、さっきの人は誰?」


 メアリーが席につき、聞いてくる。


「王都に本店があるスピアリング商会の商会長さんだ」

「へー……すごーい」


 こいつ、知らないな。


「その人がな、水筒の技術を買い取っていった」

「え? 売っちゃったの? 儲かってたじゃん」

「それ以上の額を提示された。それとな、俺もアンジェラもちょっと疲れた」


 水筒はもういいや。


「ずっと水筒を作ってたもんね……」


 いや、ホント。


「正直、渡りに船だった。よくウチを案内したな」


 グッジョブ。


「伝説の案内」


 はいはい。


「この店で売る分には問題ないそうだが、他所の人間に作り方を教えてはいけないそうだ。お前も誰かに聞かれても水筒のことは言うなよ」

「大丈夫。覚えてないもん」


 それは大丈夫、か……?


「ならいい。それでな、例の家の改築を進めようと思うんだ」

「おー、ついにか! いくらもらったの?」


 メアリーがそう聞いてきたのでテーブルの隅にある風呂敷を指差す。

 すると、メアリーが布を開いた。


「…………おー」


 あのメアリーから笑顔が消えた。


「メアリー、いっそのこと風呂とかキッチンなんかの水回り関係を全面改築しないか?」

「良いと思う!」

「よし! 明日、ブロックのところに行ってくる」

「わー!」


 メアリーがぱちぱちと拍手する。

 すると、何か視線を感じたのでアンジェラの方を見る。


「ん? 何?」


 料理をしていたアンジェラが顔を上げた。


「いや……あれ?」


 感じた視線はアンジェラじゃないようだ。


「エリック、エリック」


 メアリーが窓の方を指差すと、外の簡易小屋にいるラシェルが屋根を見て、こっちを見てくる。


「ラシェルの家も改築するか」

「うん。そうしよー」


 その後、アンジェラが作ってくれた料理を食べ、アンジェラとワインで乾杯をした。


 翌日、この日も変わらず、水筒を作りながら売っていく。

 やはり午前中で売り切れたので午後からはブロックの店に向かった。

 そして、ブロックと共に家に戻り、再度、家やラシェルの小屋を見てもらい、見積もりをもらう。


「800万ミルドか」

「ほぼ建て直しだからそうなる」


 店で見積もりを眺めながらブロックと話し合う。


「まあ、金はいい。期間はどれくらいかかる?」

「場所によるな。水回りは基本的にそれぞれ1日で終わる。お前の部屋の窓は1時間だな」


 まあ、窓はな。


「メアリーの部屋の床のぎいぎいは?」

「2、3日ってところかな? その間は別の部屋で寝てくれ」


 まあ、そうなるか。


「ラシェルの小屋は?」

「それも同じくらいだな。牧場で預かってもらえよ」


 そうするか。


「物置部屋は?」

「1週間だな」


 まあ、ここは問題ないか。

 物をどかせばいいだけだ。


「問題の天井だ」

「それなー……3週間はもらいたい」


 3週間……結構だな。


「その間、家は?」

「悪いが、他所で泊まってくれ。ないとは思うが、作業期間中だから崩落でもしたら危ない」


 寝てたら屋根が落ちてくるのは嫌だな。


「わかった。天井についてはちょっと時期を考えさせてくれ。他の場所はすぐにでも入っていい」

「じゃあ、明日から水回りを随時やっていく。その後に馬小屋とメアリーの部屋、物置きな。あ、お前の部屋の窓は今からやってしまうわ」

「それで頼む」

「わかった。ぱぱっとやってくる」


 ブロックはそう言うと、住居スペースの方に入っていった。


「順調ね」

「ああ。水筒の方もすぐに落ち着くだろう」

「よし、今日は久しぶりにケーキでも焼きましょう」


 アンもやっぱりきつかったんだよな。

 ランドルさんに売って正解だったわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
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天井弄っているときはアンジェラの家にお泊りかな?
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