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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第054話 うひょー


「ちょーっと待ってくれ」

「すみませーん」


 俺とアンジェラは立ち上がると、俺の部屋に行く。


「どう思う?」

「悪い話じゃないわね。というか、すごく良く聞こえる」


 俺もそう。


「1つ5000ミルドで売っている水筒が1日で50個売れるとしよう」

「うんうん」

「材料費を引くと儲けは2500ミルド。つまり、人件費を無視すれば1日で12万5千ミルド儲かるわけだ」

「すっごいね」


 うん。

 今更ながらにすごい。


「これがひと月続けば、かける30で400万弱。半年で2千万強だ」


 半年で他の商会にパクられると考えたら最大でもここだろう。


「3000万ミルドの方が高いね」

「そうだ。もっと言うと、この計算は休みを一切、考慮してない」


 半年間も休みなしで働く計算だ。


「きっついね」

「というか、無理だし、そこまでやる気もない」


 ウチは町の小さな魔道具店なんだ。

 アンジェラが言う身の程を知れってやつだ。


「そうね……」

「俺、正直に言うと、水筒を作るのに飽きてきた」

「私も。エリックとしゃべりながらお菓子を作って、2人で店を切り盛りしていくのが私の夢だもん」


 最近、アンジェラがお菓子を作ってないな。


「売っちゃうか」

「また良い商品を思いつくよ」

「だな」


 俺達は頷き合うと、リビングに戻る。


「ランドルさん、水筒の販売権を売るということは他の人には教えたらダメってことだよな?」


 席につくと、ランドルさんに確認する。


「そうなりますな」

「俺はもう水筒を売れないってことか? 町の人が困るんだが」


 客の半分はまだ町の人なんだ。


「ああ……それは売っても結構ですよ。そんなことをしたらこの店の信用に関わります。というか、下手をすると、役所や軍が私のところに来ますね。それは勘弁願いたいのでエリックさんが普通にこの店で売る分には何も問題ありません。これまで通り、5000ミルドで売っても大丈夫です」

「ランドルさんは3万ミルドで売るのに大丈夫なのか?」


 この人はその値段で売るだろう。


「この店とウチでは生産力が違います。5000ミルドで買いたかったらこの店で買えばいい。わざわざ王都からここまで来て、売り切れているかもしれない商品を買いたかったらどうぞご自由にって感じですね」


 それもそうか。

 馬車で何日もかかるし、それだったら差額の2万5000は高くない。


「なるほど……」

「正直なことを言いますと、私はあなたをウチの店で雇いたい。いくら払ってもね」

「それは……」


 さすがにな。

 この町から出る気はないし、そもそも王都はちょっと……


「無理なことは重々承知しています。あなたは店のオーナー。一国一城の主です。綺麗な奥様と可愛い娘がおり、この町で唯一の魔道具店を開いている。雇うのは無理だと承知しています。しかし、今回の水筒や折りたたみ傘を発明した類まれなる才をお持ちだ。こちらとしては今回の取引だけでなく、今後も実りある付き合いをしたいと考えています。そのための3000万ミルドです。本来ならこれの半分から交渉をします」


 俺も3000万ミルドは高すぎと思っていた。


「これからも良いものができたら売ってくれってことか?」

「そういうことです。売れ行きが良い商品ができたら一声かけていただきたい。もちろん、手紙でも結構ですよ」


 手紙なら冒険者ギルドやジェフ爺さんの店に頼めば王都に運んでくれるな。


「なるほど……」


 大手の商会長さんはそこまで評価してくれたわけだ。


「どうです? 悪くない話だと思うのですが……」


 ランドルさんはそう言って、カバンから布に包まれた明らかにカバンより大きいサイズの塊を取り出す。


「魔法のカバンか?」

「ええ」


 魔法のカバンは空間魔法が組み込まれたカバンだ。

 見ての通り、カバンの中に別の空間があり、サイズ以上のものを収納できる。

 これを作るのはかなり難しく、高価だ。

 空間魔法が使える俺でも作ることができない。


「さすがは商会長さんだな……え?」

「おー……」


 商会長さんが布を取ると、俺とアンジェラが驚愕する。

 何故なら、布の中から見たことがない札束のピラミッドが出てきたからだ。


「3000万ミルドです。先ほども言いましたが、この商売は時間との勝負になります。頷いていただけたらこの場で代金をお支払いしましょう」


 アンジェラと顔を見合わせる。

 すると、どちらからともなく、頷き合った。


「ランドルさん、やはりウチではこれ以上の売買は厳しい。遠くからわざわざ来た客に売り切れているからと帰ってもらうのも心苦しい」

「わかります。売りたいのに売れないのは商人にとってきついです」


 多分、この人と俺では意味が違うんだろうなって思う。


「ランドルさんの前では言いにくいですが、ウチはそこそこ儲かっているんだよ」


 町で唯一の魔道具屋だし。


「それもわかります」

「最近、休みがない」

「無理をなさらずに。そうやって売り上げは好調なのに身体を壊して、閉店になった店も知っています」


 怖いわー。


「明らかにウチでは持て余す。なら捌ける商会に任せるのが良いだろう」

「ありがとうございます」


 ランドルさんは頭を下げ、札束ピラミッドをこちらに押した。


「アンジェラ、設計図を」

「ええ」


 アンジェラが店の方に向かう。

 俺は目に毒なので金を風呂敷で包み、テーブルの端に寄せた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ヴェンチャー作って大企業に売るのが一番賢いって誰かも言ってましたしね。
水筒も10年使えるという話だったけど、魔道具だからそこまで持つのかな? 実際、無くしたり、古くなったり、追加で欲しくなったりで、途切れないと思うよ。 だから、権利をあって自分たち分だけでも販売するなら…
夏になっても水筒の生産数が増やせなければ水筒をめぐっての喧嘩が始まるかもしれないしね 需要が高まり過ぎると殺気だった冒険者が押しかけて来そうだもんね
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