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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第048話 違うね


 その後もどんどんと客が来て、水筒が売れていく。

 さらにはコンロの方もたまに売れるし、営業は成功したようだ。


「おー、エリック。なんか噂になってるぜー」


 あ、ジェイク坊やが来た。


「何しに来たのよ」


 アンジェラがジト目でジェイクを見る。


「客だよ、客。水筒を売ってくれ」

「はい」


 アンジェラが赤い水筒をカウンターに置いた。


「ジェイク、噂って何だ?」

「エリックが久しぶりに良い発明をしたってよ。それで俺も買いに来た」


 久しぶりは余計だ。


「アンジェラ、サービスでお風呂に浮くアヒルちゃんを付けてやれ」

「うん」


 アンジェラが黄色いアヒルを水筒の横に置く。


「どうも。ウチのキャロルが喜ぶわ」


 嫌味のサービスだったんだが、そういえば、ジェイクには8歳の年の離れた妹がいた。


「ジェイク、昨日はご苦労さんだったな」

「あん? たいしたことねーよ。ギルドも軍も騒ぎすぎだっての」


 良い強がりだ。

 これでこそ、町の人は安心する。


「メアリーはどうだった?」

「あんた、そればっかりだな。メアリーはよくやってたぜ。実力的にはまだまだだが、センスはある。それにうるせーけど、あのどこに行っても何が起きても変わらないのがすげーわ。おかげで動揺してたり、焦ってたりした冒険者達が平常心に戻った」

「あんたもでしょ」

「ちげーわ。とにかく、ありゃすごいと思うぜ」


 ふーん……


「やらんぞ?」

「あんなチビ、いらねーわ。俺はもっとドーンで大人な女が良い」


 それはそれでムカつくな。

 チビはまぎれもない事実だけど。


「悪いわね、ジェイク。私、好きな人がいるの」


 ジェイクがフラれた。


「おめーのことじゃねーよ。それよりもあのフルフェイス・マスクマンとかいう仮面野郎がムカつくぜー」


 ジェイク、めっちゃ絡んでくるもんな。


「魔物を倒してくれたんだろ?」

「あん? 知ってんのか?」

「アンジェラやメアリーから聞いた」


 聞いてないけど。


「あっそ。あの野郎、最初から参加せずに最後の最後の良いところだけ持っていきやがった」


 そう見えるわけだ。

 お前らや軍よりも俺とアーヴィンと神父さんの闇の三人衆は貢献したんだぞ。


「強いのか?」


 この質問はけっして自意識からじゃない。

 どう見えたかが気になるからだ。


「強いな。ただ、得体のしれない強さだった。ありゃ冒険者じゃねーな。暗殺者とかそういう闇の仕事の人間だ」


 暗部はまあ、そうだ。


「そうなのか?」

「武器にナイフを使ってたからな。冒険者はあんなものを武器にしない。ましてや、損得を考えるから投擲なんかしねーよ」


 なるほど。

 アンジェラが言っていた冒険者はもっと重い武器を使うってやつだ。

 魔物を相手にするか、人間を相手にしてきたかの違いだろう。

 この辺は少し、注意しないといけない。


「そうかい。とにかく、お前らはよくやった。これからも町のために頑張れよ」


 そして、ちゃんとメアリーの面倒を見てくれ。


「そりゃあんただ。冒険者連中の中でも水筒が話題になってるし、客がどんどん来ると思うぜ」


 マジか。


「どれくらい来そうだ?」

「さあな? ヴィオラが自慢してたし、冒険者連中はほぼ耳に入っていると思うぜ」


 ちょっと予想を超えるかもしれんな。


「わかった」

「じゃあな。次も良いもんを発明してくれ」


 ジェイクはそう言って、帰っていった。


「なあ、アンジェラ、あいつって強いのか?」

「エリックから見たらひよっこでしょうけど、この町の冒険者の中では3位以内に入るわよ」


 そりゃすごい。

 あのガキ大将のジェイク坊やが立派になったもんだ。


「アンジェラは?」

「私はこの店の2位であり、誰かさんの2位」


 あ、うん……


 俺達はその後も水筒やコンロを作っていくが、町の人や冒険者のガキ共が次々とやってきて、水筒を買っていった。


「このペースだと、今日で水筒のストックがなくなるぞ」

「想像以上ね……あれだけ注文した部品や魔石が早めになくなる可能性も見えてきたんじゃない?」


 ちょっとあり得る。

 嬉しい悲鳴だが、実際問題として。ウチの店の規模を超える需要だ。


「アンジェラ、どう思う? 追加注文するべきか?」


 注文しても、魔石は冒険者達が集めないといけないし、部品は王都からの輸入になるからすぐには来ない。

 だから早めに仕入れておくというのも手だ。

 部品も魔石も腐るものじゃないし、倉庫も物置もあるから保管場所には困らない。


「少し、様子を見ましょう。在庫が1週間以内に半分を切るようだったら追加注文しても良いと思う。何しろ、シーズンを考えたら本番はまだだし」


 水筒が活躍するのはこれから暑くなる時期か、寒くなる冬だ。

 今はまだ春だし、シーズンじゃない。


「わかった。そんな感じでいこう」

「メアリーはどうする? 言ったら手伝ってくれると思うけど」


 それはそうだろうな。

 あの子は優しい子だから。


「いや、あいつは冒険者だ。そっちをメインにやってもらいたい。アンジェラには負担になるかもしれないが」

「私は大丈夫。店のことだし、何度も言うけど、私はここが本職だから」


 良い子だ。


「ボーナスは出すからな」

「そうね。私、3ヶ月後に21歳になるわ」


 あ、うん……誕生日プレゼントが欲しいのかな?

 違うか……


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
アンジェラが襲った方が早くね?
アンジェラ本当にイイ女なんだけど なんだろう 微妙に漏れ出る残念感...
「私、〜でお誕生日が来るの、2×歳になるのよ」 は割と露骨なプロポーズの催促 エリック責任とったれよ(笑
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