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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第046話 メアリー「天がまだ帰るなって言っている……」


「こんにちはー」


 俺とアンジェラが2人で仕事をしていると、扉が開き、ヴィオラがやってきた。


「よう、ヴィオラ」

「昨日の今日で大丈夫?」


 アンジェラが心配そうに声をかける。

 それもそのはずであり、ヴィオラはちょっと元気がなさそうに見えるのだ。


「大丈夫ですよ。私は何もできませんでしたし、頑張らないと」


 いやー……


「お前、寝てるか?」

「今夜寝ます」


 ギルドも大変だ。


「無理して身体を壊すなよ。それでどうしたんだ?」

「報告ですね。今、手分けして各冒険者さんのところを回っています」


 ギルドに張り紙でもしておけばいいのに。


「お疲れさん。何だ?」

「まずは皆さんのおかげで無事に町は守られました。それも犠牲者もほぼいません。軍の方では負傷者がいるようですが、冒険者はゼロです」


 軍は深追いしたって言ってたしな。


「そりゃ良かった。森は?」

「現在、軍の方で調査中です。明後日までは森の方に行けません」


 まあ、そんなものだろうな。


「了解。メアリーにも伝えておく」

「お願いします。次にですが、緊急依頼の報酬になります。アンジェラさん、メアリーさんは10万ミルドですね」


 ヴィオラが2つの封筒をカウンターに置く。


「そんなもんか?」

「魔法使いは高めです。ルーキーであるメアリーさんは安くなるんですが、それでもメアリーさんはよくやってくれましたのでアンジェラさんと同額を出します。というか、これが上限なんですよ」


 命を懸けるには安い金だが、まあ、緊急依頼なんてそんなもんかもしれないな。

 金のためではなく、町のためにやるんだから。


「メアリーがそんなに頑張ったのか?」

「ええ。あの子はすごいですね。疲れを知りませんし、大活躍でした。特に味方の鼓舞がすごかったですね。あの子がいるだけで皆さんがやる気になりますし、大物になるかもしれませんよ?」


 プリンセス・メアリーが現実味を帯びてきたか。

 今のうちに良い二つ名に替えるように勧めよう。


「まあ、わかった。金もメアリーに渡しておく」

「お願いします。それでフルフェイス・マスクマンの分はどうすればいいですかね? あの方も満額の10万ミルドなんですけど」


 俺に聞くなよ。


「フルフェイス・マスクマンは正義のヒーローだから金は受け取らないと思うな」

「あ、そうですか。エリックさん、代わりにいります?」


 なんでだよ。

 おかしいだろ。


「いらない。ギルド職員の打ち上げにでも使えばいいんじゃないか? お前らも町のために頑張ったわけだし」


 戦うだけがすべてではない。

 それはよくわかっている。


「ど、どうも……かっこいいですね」


 ヴィオラがアンジェラを見る。


「知らなかったの?」


 アンジェラがキメ顔で髪を払った。


「この人、ホント、昔からマジだからなぁ……あ、次にですね、メアリーちゃんをEランクに上げようかと思っているんですけど、どうですかね?」


 良いんじゃね?


「それはそっちで決めろよ」


 俺、冒険者のことは詳しくないし、ランクのことを言われても知らんぞ。


「いや、一応、過保護なパパさんに相談しようかと思って」

「お前らがそう判断したならそれでいい。メアリーはバカだが、無茶をする子じゃないし、カトリーナとシャーリーがついているから大丈夫だ」


 あの子はちゃんと人の言うことを聞ける人間なのだ。

 これは結構大事なこと。


「そうですか。では、そのように進めます。明日からはギルドも通常営業を始めますし、御二人はこちらの仕事が忙しいでしょうけど、メアリーさんにそう伝えてください」


 ギルドは休みなしか。

 本当に大変だな。


「わかった。お前も早めに休めよ」

「ええ。冒険者回りが済んだら帰って寝ます。それではこれで……」


 ヴィオラは笑顔でそう言うと、帰っていった。


「ヴィオラは真面目だな」


 よーやるわ。


「あの子は冒険者になりたかったのよ。でも、小柄だし、魔力もない。だから補佐する方に回った感じね」


 メアリーと一緒で走り回っているようなアクティブな子だったからな。

 部活で言うところのマネージャーに回ったわけだ。


「ロジャーが元冒険者なのは知っているが、ヴィオラはそんな感じだったんだな」

「そうね。あのさ、聞いていいのかわからないけど、エリックはなんで軍人になったの? しかも、暗部でしょ?」


 言ってなかったっけ?


「いや、たいしたことじゃない。俺は王都のスラム出身の孤児で盗みや悪さをするクソガキだったんだ。ただ、腕っぷしには自信があったし、魔法も使えた。15歳になったら冒険者にでもなろうかと思っていた時に戦争が始まったんだよ。その時に身分を問わず、優秀な兵士を募集中っていう張り紙を見て、応募したんだ。待遇も良かったしな」


 3食保証、高収入、戦後は好待遇で国が迎える、なんかだ。

 もっとも大嘘だったけどな。

 戦場で3食なんか食えるわけないし。

 そして、高収入、好待遇は軍を抜けたからそもそももらってないのだが、噂で聞くと、戦争に勝ってないから微妙らしい。

 それで不満がすごいっていうのを聞いたことがある。


「エリック、孤児だったんだ……」

「そうだぞ。家族なんかいなかった」


 だからこそ、メアリーを育てるのは本当に苦労した。

 知らねーもん。


「私がいるからね」


 アンジェラがそっと背中に触れる。


「いや、そんな悲壮感ある話じゃないぞ。なんだかんだで楽しかったしな。軍に入ってからは訓練、訓練できつかったけど」


 その時に本格的な戦闘術、魔法なんかを習った。


「うん……一緒にこの店で頑張りましょう」


 うーん……


「そうだな。お前がいてくれて助かるよ」


 乗っとこ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
プリンセス・メアリーは冗談じゃないんだよなぁ。 建国王もこんな感じのカリスマだったのかなぁ。
天の声………(笑)
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