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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第045話 違わない


 なんとかメアリーにバレないように痛みをこらえて開店準備を終え、3人で魔石の加工をしていく。


「あー、いてて。店にベッドを置こうよー」


 メアリーがアホなことを言ってきた。


「お前、肉屋に買い物に行って、バリーが店で寝転がってたら舐めんなって思うだろ」


 最悪な店だろ。


「その前におばさんとシャーリーに怒られてそうだね」


 ウチも副店長に怒られるわ。


「ちゃんとマッサージして寝ないからよ。今からしてあげましょうか?」


 アンジェラが笑いながら提案してくる。

 ちょっとSっぽい目だ。


「今からは意味なくね? アンジェラちゃん、いじめは良くないよ」

「あんた、良い声で鳴きそうね」


 アン、戻ってこい。

 お前はSじゃないだろ。

 というか、チラチラこっちを見るな。


「嫌なお母さんだ。マッサージできる道具でも作ろうかな?」


 頑張ってくれ。


 俺達はその後も魔石を加工していくと、店の外に馬車が止まる。

 そして、人が降りてきて、店の扉が開いた。


「いらっしゃい……キースか」


 総合商店のキースだ。


「やあ。注文の品を持ってきたよ」


 おー、ついに部品が届いたか……いや、待てよ。


「お前、いつ戻ってきたんだ?」

「昨日の夕方。18時前」


 おー……


「無事で良かったな」

「いや、ホント。家に帰ったら妻や子供が涙目で駆け寄ってきたからびっくりしたよ。ちょっと嬉しかったけど、話を聞いて、ゾクッとした。俺、普通に森の前を通って東門から帰ってきたからね」


 少し遅れたら巻き込まれてたかもしれんな。


「お前、最近ツイてないな」


 前も盗賊に襲われてたし。


「そうかもね。次からは教会でお祈りをしてから行くよ」


 大変だねー。


「そうか……じゃあ、荷物を……」


 あれ?


「手伝ってくれる? 多いんだよ」


 やっぱりね

 かなり頼んだし、馬車で来てるからそう思ったわ。


「ああ。任せておけ」


 我慢だ。

 ここで手伝わないのは不自然すぎる。


「ごめーん。私、無理ー」


 メアリーは無理だろうな。

 まあ、俺もなんだけど。


「私も手伝うわよ」


 アンジェラ……超良い女過ぎて涙が出そうだ。

 でも、お前は非力だから無理。


「いい。重いし、俺がやる。2人は魔石の加工を頼むわ」


 そう言って、キースと共に馬車に乗っている木箱を運んでいく。

 重いし、全身に痛みが走ってかなり辛いが、それを表情に出すことはない。


「聞いたよ、エリック。魔法の水筒が売れそうなんだって?」


 全然、苦じゃなさそうなキースが聞いてくる。


「ああ。その材料もこれだな。お前も買うか?」

「買う、買う。子供に持たせたいし、2、3個は欲しいね」


 一つの家庭で何個も買うケースも十分にある。

 やはり大量に部品を仕入れて正解だったな。

 今はちょっとこの痛みで後悔してるけど。


 その後もキースと協力して木箱を運ぶと、代金を払った。

 そして、キースが帰っていったので椅子に座り、項垂れる。


「大丈夫?」


 優しいアンジェラが背中にそっと手を置き、顔を覗いてきた。


「大丈夫だ。ちょっと疲れただけだよ」


 身体がすんごい痛い。

 きっつ……


「わはは! エリックもおじさんになったねー!」


 なんでメアリーは嬉しそうなんだろう?


「お前もいずれおばさんだ」

「そん時はエリックがお爺ちゃんだ。ウケるー」


 お爺ちゃんになった自分もおばちゃんになったメアリーも想像できないな。

 もちろん、アンジェラも。


「いいから魔石の加工をしてくれ。アンジェラは水筒を頼む。俺はコンロの方をやるわ」

「お任せー」

「りょ」


 俺達は作業を分担し、商品を作っていく。

 昼になると、アンジェラが料理を作ってくれたので3人で食べ、午後からも変わらず仕事をしていった。


「エリックー、筋肉痛もだいぶ良くなってきたし、カトリーナとシャーリーと話してきていい?」


 もう治りかけているのか。

 強化魔法による筋肉痛は割かし早く治るもんだが、それでも早い。

 これが若さか……


「ああ。行ってこい。ついでに夕食の材料を買ってきてくれ」


 シャーリーの家は肉屋だし。


「ほーい」


 メアリーは魔石を置くと、いつものように走ることもなく、ひょこひょこと店を出ていった。


「あいつ、カトリーナにヒールを頼む気だな」

「でしょうね。まあ、いいじゃない。ヒールを使えなくてごめんね」


 教えてないからな。


「大丈夫だよ」


 そう言って、足に手を当て、ヒールを使う。


「何も見なかったことにするわ……」


 アンジェラが目を逸らした。

 回復魔法は教会関係者じゃないと使ってはいけないのだ。


「神父さんには言うなよ」

「大丈夫。そもそも神父様とはそんなに会わないから」


 教会に行かないもんな。


「アンジェラ、昨日はフルフェイス・マスクマンが来るまではどんな感じだったんだ?」


 俺は最後の方しか見ていない。


「最初は危なげなかったんだけど、途中から厳しくなった。数の差ね。ウチの冒険者はどいつもこいつも重い武器だし、それをゴブリンやコボルト相手に振り回していたのよ。しかも、森で」


 そりゃ疲れるわ。


「軽装備で戦えよ」


 ゴブリンやコボルトなら軽い剣でも十分だ。


「冒険者はそんな戦い方なんてしないのよ。基本、狩りを主体としているから連戦なんかしないし、1つの得物しか使わない。練習もしないし、稼いだら食べて、飲んで、寝る連中なの」


 軍人じゃないからな……


「それであんなに満身創痍だったのか」


 皆、息が上がっていた。

 元気だったのはロジャー、ジェイク、それにメアリーぐらいだ。


「アンジェラもか?」

「そりゃそうよ。私は魔法が使えなくなったら終わりだしね」


 アンジェラは魔法一本だしな。


「体術でも教えてやろうか?」

「えっちねー……」


 違うわ。


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