第041話 フルフェイス・マスクマン! ★
俺達は襲いかかってくる魔物をスルーし、奥までやってきた。
「アーヴィン、神父殿」
「ああ」
「これはすごいね。100匹はいる」
街道から見える森の中ががさがさと動いている。
そして、木々の間から巨体の行列が見えていた。
「オークの巣ってこんなにいるのか?」
アーヴィンが聞いてくる。
「さあ?」
「魔物のことはわからん。冒険者に聞いてくれ」
3人共、詳しくないんだよな。
「うーむ……しかしまあ、これなら魔物が浅いところまで逃げるのもわかるな」
これだけいればな。
他の魔物もパニックだろう。
「やるか?」
「しゃーない。浅いところで巣を作られても困るし、こいつらをやらないと他の魔物が落ち着かないだろうな」
「これくらいなら問題なかろう」
神父さん、絶対に後方部隊じゃないな。
「では、行こうか」
空間魔法でライトセイバーを出し、魔力を込める。
すると、ブーンッという音と共に青く光る剣が現れた。
「また変な武器を……」
「君、キャラを完璧に作り込んでいるね。そこまでいくと、もはや尊敬するよ」
2人が呆れる。
「ケガ人と老体は休みながらで構わんよ。では、お先に」
そう言うと、森の中に入り、剣を振り、目の前にいたオークを斬る。
「ブホォッ!」
一撃で倒れたオークが叫び声をあげると、森の中を行進していたオーク達が足を止め、こちらを見る。
「私がフルフェイス・マスクマンだ」
そう言うと、後ろからナイフと氷の槍が飛んできて、左右にいたオークの顔面に直撃した。
「ブォ!」
「ブッ!」
2体のオークは叫び声をあげ、そのまま倒れる。
「オーク相手に何を名乗ってんだよ」
「遊んでないでやるぞ。私は君らと違って、明日も4時起きなんだよ」
2人が俺の両脇に出てきた。
「では、10分で片付けようじゃないか」
そう言うと同時に大勢のオーク達が襲いかかってくる。
「勝てると思ってんのかね?」
「やれやれ……知性のない相手は困るね」
アーヴィンと神父さんがかっこつけると、俺達の戦いが始まった。
◆◇◆
「くっ!」
状況があまり良くない。
敵は正直、弱い。
ほぼゴブリンとコボルトだけでたまにスライムやスケルトンが出てくるだけだ。
はっきり言って、冒険者じゃなくても倒せる相手である。
しかし、何と言っても数が多い。
「ギルマス! 軍はまだか!?」
戦闘が始まって30分は経っている。
向こうが先に動いているし、早ければこちらに来る時間なんだが……
「長引いているようだ。もう少し頑張ってくれ」
「そりゃやるけどよ……いくらなんでも数が多いわ。あんなのに後れは取らねーけど、体力が尽きるぞ」
それとの勝負になりそうだな……
「疲れた者は下がって後ろの奴と交代しろ!」
そう告げると、何人かは下がっていく。
「ふんっ!」
ジェイクが得物の大斧でゴブリンを叩き潰した。
見事だ。
実に見事だし、やはり強い。
しかし、どう考えてもオーバーキルだし、そんなに飛ばしたら体力が持たない。
周りを見ると、そんな奴ばかりだ。
当たり前ではある。
こいつらは普段、こんな雑魚を相手にせず、奥でオークやハイウルフと戦っている奴らなんだ。
それに冒険者は手を抜かない。
魔物を相手に力配分なんか考えないからだ。
「チッ! 不利だな」
剣を振り、コボルトを斬る。
当然、一撃で真っ二つだが、俺でさえ、オーバーキルだし、力配分ができていない。
このままではジリ貧かもしれない。
ほとんどの冒険者が息が上がっているのだ。
「ギルマス、一度、町まで下がるか?」
「それもありかもしれんな……」
軍が来るまでに持てばいいのだから籠城戦でも……ん? なんか来たぞ、おい……
「わははー! プリンセス・メアリーちゃん、見参っ!」
メアリーはそう言って、謎のポーズを取る。
全員が呆れていると、ゴブリンがメアリーに襲いかかった。
「メアリー!」
「てやっ!」
メアリーは剣を抜き、そのまま襲いかかってくるゴブリンを斬る。
さらには別方向から襲ってきたコボルトを蹴り飛ばした。
「必殺! アイスニードル!」
メアリーが空中に氷の塊を出すと、その塊が複数の矢となり、発射された。
すると、その矢が魔物達に突き刺さり、倒していく。
「わははー! やはり時代は私! 負傷した者は下がるといい! あとは私に任せなさい!」
なんでこいつ、ちょっと偉そうなんだろう?
「誰もケガしてねーよ!」
「というか、うるせーわ!」
「チビこそ下がれ!」
疲れていた奴らが息を吹き返した。
「あいつ、すげーな……」
さすがにジェイクも感心する。
「これも才能だろうよ」
実際、自分もちょっと気が楽になった。
そして、アンジェラが言っていたメアリーが笑わなくなった時が自分達の終わりという意味がよくわかった。
「行くぞ」
「おう!」
俺達はその後も戦闘を続けていく。
しかし、一向に敵の数が減る気がしないし、何よりも暗さとずっと動いていることでどんどんと疲労が襲ってきて、さすが厳しくなってきた。
「とぉ! エアカッター! ついでにアイスニードル!」
メアリーはずっと元気だ。
「……あいつ、バケモンか?」
ずーっとしゃべりながら動いている。
疲れを知らないらしい。
「あいつが救いだ。しかし、厳しいな」
「チッ! 軍の奴らは何をしてんだ!?」
もう1時間も経っている。
ジェイクの怒りもわかる。
「無理か……」
「ギルマス、撤退しよう。さすがにそろそろ犠牲者が出るぜ」
まだ粘りたいが……
「ギルマス」
アンジェラがやってきた。
「どうした?」
「魔力と矢が尽きかけている。もう無理よ。門を守るべきだわ」
後衛が先にダメになったか。
これはもう無理だ。
「てった――チッ!」
撤退を告げようとしたのだが、森の奥にオークの影が見えた。
「オークだ! オークだけはやれ! それで撤退する!」
オークはマズい。
あの巨体とパワーは門を破られる可能性があるからだ。
「俺が行く!」
ジェイクが斧を構え、姿を現したオークに突っ込んでいく。
次の瞬間、ジェイクとオークの間に黒い影が現れた。
いや、全身黒づくめの男、フルフェイス・マスクマンだ。
クソッ、ちょっとかっこいいぞ。
「なっ!? てめーは! 黒仮面!」
ジェイクが足を止め、フルフェイス・マスクマンを睨む。
「すまない。こちらは君達に任せ、邪魔をしないようにしていたのだが、こちらが取り逃がしてしまったのだよ。まさか逃げるとは思っていなかったのでね」
メアリーとアンジェラが戦場にいるのに姿を見せないなと思っていたのだが、どうやら奥にいたようだ。
「チッ! 今頃、何を言ってやがる! 失せろ。そのオークをやったら撤退だ」
「撤退? そうか……では、残りは私がやってしまおう」
「は? 何を――」
ジェイクが聞こうとする前にフルフェイス・マスクマンがいくつものナイフを取り出し、宙に投げる。
すると、ナイフが操作されているように木々を避け、魔物達に突き刺さっていった。
しかも、そのナイフは魔物を貫通し、別の魔物を襲っている。
スピードも速く、この暗さでは目で追うのがやっとだし、その動くナイフが複数あるのだからよくわからない。
ただ、魔物達がどんどんと倒れていくだけだ。
「なっ……! おい! 後ろだ!」
驚いていたジェイクが叫ぶ。
それもそのはずであり、オークがフルフェイス・マスクマンの後ろから襲いかかっているのだ。
「ずっと逃げていたくせに後ろを見せたら襲ってくるんだな。しかし、これは罠だよ」
フルフェイス・マスクマンは謎の棒を取り出した。
すると、ブーンッという音と共に青く光る剣が出てくる。
「黒仮面!」
ジェイクが叫ぶと同時にオークの太い腕がフルフェイス・マスクマンを襲った。
しかし、フルフェイス・マスクマンは身を翻して躱すと、そのまま光の剣でオークを斬る。
ブーンッという音と共にオークの巨体が半分になり、地に沈んだ。
それと同時に周りの魔物達が一斉に森の奥に逃げ出す。
「あれ? 逃げた?」
アンジェラが首を傾げる。
「元凶がいなくなったからだろう」
あの魔物達は間違いなく、オークから逃げてきた魔物達だ。
そのオークがいなくなれば、混乱は治まり、森に戻るだけ。
「てめー……何者だ!?」
魔物が見えなくなると、ジェイクが怒鳴る。
とはいえ、虚勢なのはわかる。
それほどまでにフルフェイス・マスクマンは強いのだ。
しかも、ただの強さじゃない。
さっきの動きは実に華麗だったが、美しくはなかった。
「ジェイク、よせ!」
あの動き、剣の振り……あれは魔物を相手にするものじゃない。
人間を相手にする戦闘術だ。
エリックは10年前にこの町にやってきた。
戦争が終わった10年前だ。
こいつ、元冒険者でもなんでもなく、黒影団の暗部……停戦に納得できずに姿を消したノクスの亡霊だ。
「私か? 私は漆黒の使者、フルフェイス・マスクマンだ」
……いや、魔道具屋のアホだった。
これが普段は仏頂面で愚痴ばっかりこぼしているエリックなのだから恐ろしい。
「かっけー!」
メアリーが拍手をする。
どうやらこの親子は感性がそっくりらしい。
そして、フルフェイス・マスクマンを見る嫌そうなアンジェラの顔だ……
これが子供の頃からべったりで他の女に牽制しまくってた女の顔か?
「何言ってやがる!」
「ふっふっふ。とにかく、問題は片付いた。私はこれで失礼するとしよう。では、さらばだ!」
フルフェイス・マスクマンは外套を広げると、一瞬にして姿を消した。
「なっ! き、消えた……一体……」
あー、なんかジェイクまで役者に見えてきたな……
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