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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第036話 どーん!


 扉の前に来ると、アーヴィンがノックをする。


「大佐、フルフェイス殿をお連れしました」

『入ってくれたまえ』


 中から低い声が聞こえると、アーヴィンが扉を開き、中に入る。

 俺も続いて中に入ると、デスクにつく白髪で立派なカイゼル髭の爺さんがいた。

 爺さんだが、身体は分厚く、軍服に付いている多くの勲章がその強さを表している。

 座っているが、隙がなく、魔力も感じる。

 間違いなく、10年前の戦争にも参加している歴戦の猛者だ。


「なるほど……確かに怪しいな」


 爺さんが苦笑いを浮かべた。


「私がフルフェイス・マスクマンだ。貴殿は?」


 わかってるけど、一応、確認しておく。


「これは失礼。私はダドリー・グレイアムだ。階級は大佐になる」


 ダドリー・グレイアム……

 歴戦の猛者どころではない。

 10年前のノクス戦争だけではなく、多くの戦争で活躍した英雄だ。

 こんな町にいたのかよ……


「ほう? 高名なグレイアム殿か。噂はかねがね」


 動じない俺、かっこいい。


「ふっ、やはりノクスの亡霊か……」


 亡霊?


「それは何かな?」

「よい。それよりもよく来てくれた。急な呼び出しに応じてくれて感謝する」


 じゃあ、お茶でも出せ。

 フルフェイスを取れないから飲めないけどな。


「自分の格好が不審者と呼ばれてもおかしくないことは重々に承知しているから仕方がないことだ」

「そうか。実は町民から通報があってな。通報があったら動かねばならないのが我々だ。大変申し訳ない」


 動いたという事実が必要なわけだ。


「私は問題ないかな?」

「冒険者ギルドが保証するギルドの冒険者だろう? ならこちらの領分ではない。君が犯罪行為をしていたら別だが、そのような報告は受けていない」


 当たり前だ。

 やってるのは娘を見守っているだけ。

 あ、ストーカーじゃないぞ。


「問題ないようなら良かった」

「そうだな。時にフルフェイス・マスクマン君。君はこのアーヴィンと戦って勝てるかな?」


 は?


「勝てる、と言っておこう」


 アーヴィンはめちゃくちゃ強いが、さすがに義足じゃあな。


「そうかね。それは素晴らしいな……」

「やめておけ。素晴らしい功績をお持ちのグレイアム殿でも歳には勝てまい」


 今、殺気を出したぞ、このジジイ。


「そうかね? まだ若いものには負けんぞ」

「私もそこまで若くない」

「つまらんな」


 いや、ホントに。

 やる気を出すんじゃない。


「もう失礼してもいいかな?」

「よろしい。聴取の結果、貴殿は何も問題ないことがわかった。詫びにまた注文でもするよ」


 何をかな?


「何のことかわからないが、そうした方がいいんじゃないかな? では、これで失礼する」


 そう言って、マントを広げると、転移を使った。

 そして、家のリビングに戻ったので腕輪のスイッチを押し、元の姿に戻る。


「やっべー……ダドリー・グレイアムかよ」


 軍人なら知らない者はいないぞ。

 いつこの町に転属になったんだろうか?


 首を傾げながらも店の方に行く。


「あ、店長、おかえりー」


 アンジェラがいつもの軽い感じで迎えてくれる。


「ただいま。アンジェラ、ダドリー・グレイアムって知ってるか?」

「ダドリー? 誰?」


 この町では有名じゃないのか……


「大佐の名前だな。結構なビッグネームだ」

「へー……そう言われても軍人の名前なんてアーヴィンさんくらいしか知らねー」


 サム……なんかごめんな。


「平和になったってことか」


 軍人が有名になる時は戦時だ。


「そじゃね? あんま店長の前では言いにくいけど、戦争なんて知らんし」


 この町は戦地から離れているし、戦争が終わった時、アンジェラはまだ10歳か。


「いや、それでいいんだよ」


 平和に暮らせているということが勝てなかった俺達にとってはせめてもの救いだ。


「黄昏てんねー。それよりも仕事だよ。今日もお客さんがいっぱい来て、看板を見て帰ったよ」

「そうだな。持ち運び用コンロの注文も来そうだし、頑張るか」

「おー」


 アンジェラが拳を上げたので仕事を再開することにした。


 俺達は魔石や部品が来る明日か明後日に備えてできる仕事をしていく。

 そして、昼食を食べ終わり、午後からも仕事をしていると、アーヴィンがやってきた。


「まーたアーヴィンさんだし」

「やあ、アンジェラちゃん。何度も悪いね。おい、エリック、勝手に帰るなっての」


 アーヴィンが文句を言ってくる。


「用件が済んだから帰っただけだろ」

「転移で帰るな。普通に帰れよ」

「かっこよかっただろ?」

「お前、ホントにノリノリだな……いや、確かにちょっとかっこよかったし、大佐も『ほう……!』ってかっこつけてたけどな」


 大佐もわかっているんだよ。

 じゃなきゃ、あんな髭は生やさない。


「とにかく、あれでいいだろ?」

「ああ。問題ないと思う。訴えてきた人にもそう説明するし、それでフルフェイス・マスクマンは問題ないっていう噂が広まるだろう」


 まあ、そんなに現れることもないと思うけどな。

 メアリーがもう大丈夫と思えるくらいに成長すれば出てくることもない。


「なら良かったわ」

「あ、それでサムはどうする?」


 あー、あいつか。


「サム? あいつがなんかしたの?」


 アンジェラがアーヴィンに聞く。


「ちょっとフルフェイス・マスクマンに剣を向けようとしたんだよ。簡単に抑えられたけど」


 相手にならないな。


「バカねー。ホント、ガキだわ」

「アンジェラちゃんと同い年でしょ」

「昔から同世代はガキとしか思わなかったわよ。もっと大人になれって思ってた」


 アンジェラは本当に成長が早かったからな。

 初めて会った10歳の時でもかなり大人びていた。

 ギャルだけど。


「アンジェラちゃん、子供の時から大人っぽかったもんな。今はもっと大人になったけど」

「さいてー」


 あ、殴らないと!


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
子供の頃からイケオジ(イケてるお兄)見てたらそら狂うわな
毎度おなじみのエピソードタイトルがオチ。
やっちゃえ
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