第031話 勝負?
家に帰ると、店は閉まっているので裏口からリビングに入る。
「帰ったぞ」
「ただいまー」
リビングのソファーで横になっているメアリーに声をかけた。
「おかえりー。デートはどうだった?」
「まあまあね。途中までは良かったんだけど、騒がしくなったから帰ってきた」
「ほーん……何かあったの?」
「森で火事だって」
「マジ? ヤバいじゃん」
説明をアンジェラに任せ、部屋に戻ると、武器なんかをしまう。
「やっぱり使わなかったか」
ちょっと心配性すぎたなと思いながら大量の投擲用のナイフや大型のダガーをタンスにしまうと、リビングに戻る。
すると、アンジェラが席についており、メアリーがコーヒーを用意していた。
「あ、エリックー、ブラックで良い?」
「ああ」
「かっこつけー。あはは!」
何が面白いのかはわからない。
「あいつがやるなんて珍しいな」
席につきながらアンジェラに聞く。
「私が淹れようとしたら自分がやるってさ」
仕事終わりで気を遣ったわけか。
あいつも大人になって…………最近、こればっかりだな。
「火事のことは?」
「説明したし、落ち着くまでは行くなって言ってある」
ならいいか。
大丈夫だと思うが、奥まで見に行くと言われたら勘弁だ。
「はいはーい。コーヒーだよー。あと、これ」
メアリーがコーヒーを持ってきてくれたが、俺の前に紙を置いたので見てみると、家の改築の見積もりだった。
「ブロックか?」
「うん。おじさんが見てくれて、見積もってくれた」
ふーん……
「高いな……」
全部やろうとすると500万ミルドもする。
さすがにそこまでの貯蓄はない。
「ローンでもいいってさ。エリックのところは儲かってるだろうし、2、3年かけて払ってくれればいいぞって」
それはありがたいが……
「なあ、この倉庫の改築って何だ?」
100万ミルドもする。
倉庫って店の方にあるし、そっちは改築が終わっているぞ。
「倉庫っていうか、そこの物置だね」
メアリーが風呂場の横にある扉を指差す。
この家は3LDKであり、一部屋空いているのだが、そこは冬物の服だったり、普段使いしないものが置いてある物置の部屋だ。
「そんなに悪かったのか?」
「部屋にした方が良くねって」
ブロックの言いたいことがわかった。
「うーん……持ち運び用コンロや水筒で儲かりそうな気配はするんだよなー……とりあえず、風呂場の建付けとお前の部屋のぎいぎいは直すか」
80万ミルドなら余裕で支払える。
「キッチンの水漏れも直した方が良くなーい?」
10万ミルドか。
確かにそうだな。
「直すか」
「エリックの部屋の窓は?」
5万ミルド……
「それもかなー……」
高いのは屋根だな。
200万ミルドもする。
しかし、これも近いうちに直さないとマズい。
雨漏りでもし始めたら最悪だ。
「メアリー、数日は休みだろ?」
「そうなるかなー。まあ、仕方がないよ。カトリーナが出張る可能性もあるもん」
火事の規模によっては教会も出るからな。
というか、メアリーも魔法使いだから俺やアンジェラと同様に協力を頼まれるかもしれない。
「暇な時にでもちょっと水筒を宣伝して回ってこい」
「例のやつ? 良いけど、コンロは?」
「あっちは遠征する奴らのだ。水筒は誰でも使える」
外でも屋内でも使えるのだ。
「わかった」
「とりあえず、他の改築はそれらを見てだな」
俺達はコーヒーを飲みながら過ごしていく。
夕方になると、珍しく、メアリーが料理を作りだしたので俺とアンジェラは窓から空を見る。
「曇ってきたわね」
空は厚い雲に覆われている。
そのせいでまだ夕方なのだが、辺りが薄暗くなっていた。
「こりゃ今夜にでも雨だな。火も消えるだろ」
「だといいけど……明日は店よね?」
そうなるな。
「ああ。メアリーに宣伝を任せるし、俺達は在庫や材料の確認をして、計画を練ろう」
「そうしましょうか」
俺達は空を見続ける。
「アンジェラちゃーん、目が痛いよー! たまねぎがー!」
「はいはい。何を作るの?」
アンジェラがキッチンに向かった。
「ハンバーグ!」
「みじん切りか……エリック、お父さんのために料理を作ろうとしている娘のためにみじん切りができる道具でも作ってあげたら?」
いつも料理を作ってくれるちょー良い女のためにも作るか。
俺達はその後、夕食を食べ、この日を終えた。
翌日、朝からアンジェラに水筒の作り方や材料を教えると、午後からは材料などのチェックをしていく。
「水筒が8個。材料的にはあと10個は作れるな。持ち運び用コンロはゼロだ」
倉庫を開け、アンジェラと見ているが、思ったより部品が足りていない。
「やっぱりジェフ爺に頼んでおいた方が良くない? 宣伝しておいて店に行ったら商品がありませんってマズいっしょ」
悪ガキ共に文句を言われると腹立つな。
「問題は数だな。なあ、アンジェラ、売れると思うか?」
「コンロよりも水筒が売れると思う。ヴィオラが即買いしてたじゃん。それだけ魅力なんだと思う。あとは何て言ったって安さ。5000ミルドなら誰でも手が届く」
もう少し高くすれば良かったか?
「勝負をかけるべきか?」
「借金はダメよ」
まあ、さすがにそこまではしない。
「ただいまー。雨がうぜー」
宣伝に行っていたメアリーが帰ってきた。
「そんなに降ってないだろ」
小雨って感じだ。
「それが逆にうざい。傘を差すか差さないかの微妙な感じ。降るならどーんと降ってほしいね」
それも嫌だと思うが、火事のことを考えると、降ってほしいものだ。
「メアリー、ご飯は?」
「これからー。アンジェラちゃーん、作ってー」
「昨日のハンバーグでハンバーガーを作ったから食べて」
昨日、メアリーが大量にハンバーグを焼いたので余ったのだ。
まあ、美味かったな。
「ありがとー。お礼にエリックあげるー」
「どうも。それで営業はどうだったの?」
それそれ。
「好評だったよ。というか、結構な人が買うってさ」
「エリック」
よし。
「アンジェラ、ジェフ爺のところに行ってくれ。俺は冒険者ギルドに行く」
「了解!」
「ご飯、食べよー」
俺達はそれぞれビジネスチャンスのために動き出した。
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