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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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234/235

絶望?の幕開け

 片言の日本語であぶないことを言い放った外国人野郎。

 武闘大会で人をコロスとかさあ、ちょっとムカついちゃったわよ。なんなんだよ。


「おらーっ、コロスとか言うよな! 大会は殺し合いの場所じゃねーんだよ!」


 そうだよね? やっちまったらマズいよね?


「オマエ、ヨワイ。スグ、オワル。シヌ」

「あんだとー?」


 もしかして、マジでやっちまってもいいとか?

 ダンジョンの中の試合だし、スキルによっては使ったらもうぶっ殺しちまうよね。だからアリとか?


 え、マジで? そうなん? 一応聞いてみるか。


「ちょっと審判のおっさん、ぶっ殺してもいいんだっけ?」

「駄目に決まっているでしょう」

「いやいや。だってこいつがさあ、私のことコロスとか言ってんだけど!」

「試合前の挑発は禁止されていません。本気で受け取らないように」


 そうかな。こいつ、マジっぽいんだけど。

 普通に私のことやっちまおうとしてない? 気のせいかな。


「まあいいや。ボッコボコのボコにしてやる!」

「ヤッテミロ」


 おうおう、お前こそやってみろい!

 ムキムキマッチョの外国人野郎が剣を構えて、私も棍棒剣を構える。


 やっぱダンジョンの中だと、重そうな棍棒剣も軽いね。ちょいっと上に投げて、くるくるさせてキャッチしちゃうよ。ほいほいっと。


 審判のおっさんが手をあげたね。

 すると枠線を引かれた武闘場が、うっすら青く光った。うお、なんだこれ。

 あ、これか。これが聖域化ってやつだね。


「ほーん?」


 体がちょい重く感じるね。でもまあ、このくらいなら全然平気だわ。あんま関係ないね。


「それでは…………始めっ」


 手が振り下ろされた瞬間に、外国人野郎が踏み込んできた。でっかい剣が振り下ろされる。

 こんなの当たったら普通に死ぬだろ。普通は寸止めとかするもんだけど、こいつそんなことする気なくね? 全然ないよね?

 やっぱムカつくわねー。


 それに遅いんだよ。こんな弱っちいくせに、私をコロスとかさあ。マジでやっちまうぞ?


「ほいよっと!」


 ジャンプ回し蹴りで剣を吹っ飛ばして、着地と同時に棍棒剣を軽くボールを打つみたいに横に振ってやった。


「おりゃー」

「グアアアアアアッ」


 お腹に直撃した剣はプロテクターみたいな鎧をぶっ壊して、外国人野郎を武闘場の外に叩き出した。

 なんだこいつ、見かけ倒しにもほどがあるわ。


「り、リングアウトによって、勝者、永倉葵スカーレット!」


 まだ3秒くらいしかたってなくね?

 予選の最初にしてもさすがに弱すぎるだろ。まあ見かけ倒しの奴なんて、いくらでもいるのかな。


「がははっ、楽勝!」


 見物人も盛り上がってるね。いいよいいよ、この歓声と拍手で気分が高まるわ。

 あれ、私が蹴っ飛ばした剣が誰かに当たったっぽい?

 え、大丈夫かよ。でも審判がなにも言ってこないし、平気っぽいね。


 よっしゃ。このまま今日もガンガンいってやる!



 ちょいとだけ控室で休んだら、早くも2回戦の時間だ。

 もうちゃんと看板があるってわかったから、全然迷わない。


 ほうほう、今度の相手は細マッチョの若い野郎だね。

 見るからに調子に乗ってそうで、私のことを値踏みする感じに見てる。なんか上から目線だね。

 いやいや、どう考えても私のほうが格上だろ。おしゃれ感も上だし、お金持ち感も上だよね? あと絶対強いし。


 武闘場の中央に寄って、一応のあいさつだ。こういうのって大事だからね。

 外国人野郎はコロスとか言ってたけど、ちゃんとした奴らはみんなやっている。だから私もやるよ。


「おいすー! 対戦よろ」

「はっ、お前が絶望の代表かよ」


 絶望じゃねーし。いきなりなんだよ、こいつ。


「うちは花園なんだよ! 変な呼び方すんなよ」

「思ったよりマヌケそうなガキだな」

「は? なんだよお前、弱っちそうな奴に言われたくねーわ」

「なんだと? 剣士の大会にズカズカ入ってきやがって。しかもお前の武器って金棒だろ、それ。ルール違反じゃねえのか?」

「そんなわけねーだろ! 大丈夫なんだよ!」


 マジかよ、試合前の挑発? これもそんな感じのやつってこと?

 だとしても腹立つわー。


「はっ、どうだかな」

「ちょっと審判のおっさん! さっさと始めておくれよ。ボッコボコのボコにしてやる!」

「やれるもんなら、やってみろ」


 やれるに決まってるだろ。

 審判のおっさんが手をあげると、また武闘場がうっすら青く光った。


「あれ? さっきよりちょっと色が濃くね?」


 気のせいじゃないよね。体の重さもちょい増えたっぽいし。まあ、あんま変わらんけど。


「それでは…………始めっ」

「剣士の聖域、なめてんじゃねえぞ」


 失礼野郎が細っこい剣を突き出すようにして、ダッシュしてきた。


「終わりだ、これが俺の『千の刺突』――」


 なんだよ、こいつ。そんなもんで威張ってたのかよ。さっきの外国人野郎よりも遅いじゃん。

 スキルを使ったみたいだけど、どこがどう千なんだよ。意味わからんわ。


「おりゃー」


 突き出された剣にぶち当てるようにして、棍棒剣を振り払った。

 なんかもうせっかくのダンジョンなのにさ、私ったらスキルを使うまでもないわ。


 棍棒剣をドカンとぶち当てたら、細っこい剣がぽっきり折れてしまった。その勢いで失礼野郎も吹っ飛んだ。

 倒れたまま、呆然と私を見ているね。やっぱ弱っちいわ。


 でもこれって、どうなんの? こいつ、もう戦う気力がなくなってね?


 それにしても武器をぶっ壊しちまったわ。悪いことしちゃったかな。でもあのくらいで壊れるとは思わんわ。仕方ないよね。しょぼい武器なんか使うほうが悪いよね。


「――武器の喪失によって、勝者、永倉葵スカーレット!」


 おお、勝ったわ。途中で武器を取り換えるとかはできないんだね。

 よっしゃ、よっしゃ。また盛り上がってくれてるし、それにはバッチリ応えてあげようね。


「うおおおーーーっ、勝ったぞー!」


 棍棒剣を上空に投げて、くるくるさせてキャッチ! 見物人とカメラにアピールだよ。

 これでまた盛り上がってくれよな!



 サクサク進行で3回戦の時間がやってきた。

 武闘場に入ると、今度の相手は槍使いだった。槍にしては穂先? それがだいぶ長いから、刃渡り50センチのルールはクリアしているんだろうね。

 そういや剣士じゃないっぽい。


「よろしくお願いします」

「おお、私もよろ!」


 頭まで下げちゃって、礼儀正しい野郎じゃん。さっきの奴と同じで歳は若いっぽいけど、感じのいい奴だね。


 だけどまあ、あれだよね。私ったら、ここんところの武闘大会で勝ちまくってるすごいチャンピョンなんだよね。

 格下の奴があいさつするなんて、むしろ当然だよね? 私と対戦できるだけでありがたいよね?

 がははっ、やっぱそういうことだよ。


 うんうんとうなずいていたら、審判の手が上がってしまった。


 やべ、始まるわと思ったら、また武闘場がうっすら青く光った。しかも剣っぽいマークが地面に浮かんでる。なにこれ、ちょっとカッコいいわ。

 それでもって、さっきまでとは違う感じがするね。ちょっとだけ調子悪い時くらいの感じになったかも。


「ほーん。こういう感じか―」

「それでは…………始めっ」


 剣士の聖域だっけ。面白いねと思っていたらだよ。槍使いの兄ちゃんがめっちゃ苦しそう。


「く、くそっ……体が、重いっ」


 おおー、こいつも剣士じゃないからか、影響受けてるわ。

 それにしては大げさじゃね? そこまで苦しくはないよ。

 あ、でも周りで見てる人たちがざわついてるね。


「この武闘場だけ、色が濃いよな?」

「紋章まで出てるぞ」

「明らかに効果がここだけ強いな。二人とも剣士じゃないからか?」

「あの薙刀使いの奴、明らかに体が重そうだもんな」

「いや、だとすると変じゃないか? 永倉は平気そうだが……」

「平気なんだろう。意味はわからないが」

「そりゃ絶望の代表だからな。あの程度で音を上げてもらっちゃつまらねえ」


 まあ、全然大丈夫だけどさ、絶望呼ばわりはやめておくれよ。


 とにかく。槍使いの兄ちゃん大丈夫かね。もう私と対戦どころじゃなくなってね?

 めっちゃ苦しそうだわ。


「おーい、降参? 降参したほうがいいんじゃね?」

「こ、これしきのことで!」


 うお、苦しまぎれに槍をぶん回しやがったよ。そんなもん当たらんけどさ。

 ちゃちゃっと倒してあげたほうがいいかな。よっしゃ。優しく終わらせてやるかな。この兄ちゃん、あんま動けないっぽいしね。鋭利な棍棒を首に突きつけて、審判にアピール!


 勝ちだよね? もうこれ、私の勝ちでいいよね?


「勝者、永倉葵スカーレット!」


 決まったと同時に青い光が消えて、体の重さもなくなった。槍使いの兄ちゃんもホッとしてるわ。

 兄ちゃんは黙って私に頭を下げたら、トボトボと去っていった。悲しき敗者の姿だよ。全然まともに戦えてないし、ちょっと可哀そうだね。


「ういー、私も次に備えるかな」


 武闘場から出ようと思ったら、人がすごい。

 なんか目立っていたのか、私の武闘場の周りには最初よりもずっと多く人でごった返している。移動しにくいわ。


「ちょっとごめんよー」


 私が行けばちゃんと通してくれるからありがたいね。観客はいい人たちだ。

 まあごちゃごちゃうるせーけど。そのくらいはいいかな。


「隣から光が見えたが、この武闘場だけ聖域化が一段上だったよな?」

「いや。俺はずっと見てたが、ほかより三段は上だったと思うぜ」

「なんだそれ、明らかに永倉を狙い撃ちじゃねえか」


 ほーん? 別にそんなたいしたことなかったけどね。


「そうでもしないと、あれだけ勝ちまくった永倉は潰せない。そういう判断だろ?」

「まあな。それでも普通に勝つのが絶望の代表なんだけどな」


 だから絶望じゃねーんだよ!

 まったくもう。定着しちゃう前に、早く花園に軌道修正しないとだ。

 もっと気合入れて、がんばらないと。



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・永倉葵スカーレット、現在の装備

四稜圧砕剣しりょうあっさいけん:生命力増強、攻撃力増強、防御力増強、困難を破砕する力を秘めた棍棒剣。

血風けっぷう鬼火おにび踏み:生命力増強、防御力増強、抵抗力増強、踏めば魂を崩し精神力を奪うロングブーツ。

星詠ほしよみの巡礼冥服:精神力増強、防御力増強、魔法力増強、抵抗力増強、星の導きを得る制服。

瀬織津姫せおりつひめの指輪:精神力増強、攻撃力増強、戦闘技術を向上させる武神の指輪。

■闇時計の首飾り:精神力増強、毒攻撃を増強するループタイ。

■太陽の腕輪:生命力増強、光を照らすアームレット。

■一角獣の指輪:生命力増強、邪悪な魂を打ち砕く力を得る指輪。

■剛弓破魔矢の指輪:攻撃力増強、魔法の矢を放つ指輪。

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露骨過ぎて笑うせめて他も強めて差無くせや
こんな不利でも余裕で勝つのがかっこいい!
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