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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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232/235

いつもとは違う武器!

「ところでアオイ、武器はどうするの。刃渡り50センチ以上の物を使わないといけないのよ?」

「葵が刃物を使って戦うのは見たことねえもんな。まともに使えるのかよ」


 ふふん、甘く見てもらっちゃ困るよ。


「さすがに沖ちゃんみたいに上手くは使えないわ。でも、たぶん大丈夫。ちょっと待ってね、いいもん持ってるから」


 使ってないだけで私ったら、装備はいっぱい持ってるからね。使えそうなものだって中にはある。


 椅子から立って、ちょいと離れる。それでもって、ポーチからレトロな感じの鍵を取り出した。次元ルームの鍵だ。

 鍵を持ってちょろっと念じれば、目の前に焦げ茶色の大きな扉が現れる。不思議なもんだね。そのドアの鍵穴にレトロな鍵を差し込むと、ギギッと音を立てて開いた。


「えっと、どの辺だったかねー」


 ちょっとした体育館くらいの広いお部屋には、私がこれまでにゲットしまくった大量のアイテムがある。

 武器を転がしているコーナーに行って、記憶の中のものを探し当てた。あった、あった。


 大きな武器をよいしょっと持ち上げて、次元ルームから出た。ダンジョンの外だとちょっと重いけど、本番は花やしきダンジョンの中だからたぶん大丈夫。


「これこれ、これも刃物になるよね?」


 テーブルにドンと置いてみんなに見せてあげた。


「なによ、これ。四角い柱? 15センチ四方はありそうだけど、かなり凶悪な感じね……」

「柱の部分の長さは1メートルはありそうですねえ。持ち手の部分も30センチくらい? 威圧感ありますねえ」

「全体的に黒、柱の四隅がぼんやり赤く光っていますが……しかし葵、これは?」


 これ、カッコいいよね。頼れるハンマーさんがなかったら、こいつをメイン武器にしてたかも。


「見てよ! 柱っぽいけど、ちゃんと角っこが鋭いんだよ。さわってみる?」


 みんな恐る恐るといった感じでさわった。結構あぶないんだよね。


「……とても剣と言える形状ではないが、たしかに鋭い」

「でもこれ、刃物として認められる? 試合で使ったら、失格にされかねないわよ」

「え? ダメっぽい? これって鑑定するとちゃんと剣なんだよ」

「葵姉はん、なんて名前の武器?」


 名前もカッコいいんだよね。


四稜圧砕剣しりょうあっさいけんだよ!」

「その名のとおり、四つの角があり、叩き潰す剣ということか」

「異論が出そうだけど、本当に剣なのね……」

「だがよ。こいつを刃物とは思わねえだろ。どう見ても、柱みてえな金属の棍棒じゃねえか」


 まあそうかも。持ち手のところ以外は、綺麗なほぼ四角の棒なんだよね。でも角っこが超鋭い!

 もう普通に野菜とかも切れちゃうと思う。


「雪乃さん、これでもダメっぽい?」

「そうですね。ルールでは『刃渡りが50センチメートル以上の武器』と明記されています。逆にそれ以外の記載はないので、問題ないようにも思えますが……」


 じゃあいけそうだね。


「剣聖杯の予選までまだ2週間あるわ。あらかじめ、葵はその武器を使うと公表したらどう?」

「いい考えだ。天剣に直接問い合わせても、どうせ否定されるだけだろう。それより世間に向けて公表し、ルール上問題ないとアピールするのはいい手だと思う」

「そうすりゃ、あとから天剣も文句言えねえわな。てめえらが作ったルールに反してねえ武器だって、世間様が認めりゃいい。鑑定した結果も名称は剣なんだろ?」


 おー、策略だよ。まあ、これがダメでもほかにもいろいろあるし。最悪、普通の剣でも別にいいし。

 私としてはなるべくハンマーとか殴る系の武器のほうがテンションが高まるんだよね。だからできれば、これを使いたいわ。


「葵姉はんは、注目されとる」

「ええ、剣聖杯に臨む葵さんが、どのような武器を使うかは注目の要素でもあります。事前に公表してしまうのは有効です。大々的にアピールしましょう」

「派手にアピールしたほうが、天剣も拒否しにくいですよねえ。好き放題にルールを作っているんですし、注目しているファンもこの意趣返しのような武器の選定には盛り上がるんじゃないですか?」


 いいね。私の気分も盛り上がってきたわ。


「じゃああれだよ! 動画とか撮っちゃう? 私がこの棍棒剣、振り回してさ。ちゃんと野菜とか切って刃物だってアピールしてさあ!」

「おもしれえ。注目度じゃあ、すでに天剣よりうちのほうが上だろ? あれだけ武闘大会で優勝したんだからよ。本格的に剣聖杯を乗っ取っちまおうぜ」

「動画で武器のアピール、それと葵と瑠璃の意気込みも撮る? そのほうがもっと盛り上がるわよ」

「よいと思います。編集はプロの方にお願いするので、素材を撮ってきてもらえますか? 花園のSNSから発信します」


 うおおお、なんかめっちゃ盛り上がってきたね。


「よっしゃ、さっそくダンジョンに行こう! 野菜持って行こう!」


 みんなも楽しそうな顔をしているね。そうでなくっちゃ。

 そうと決まれば、まずは商店街に行かないと。花園は誰も料理とかしないから、野菜は買いに行かないとないからね。



 ――そして。

 ダンジョンで棍棒剣の練習をしたり、気晴らしのダンジョン探索をしつつ、その時を迎えた。


 今日は武闘大会ロードの締めくくりにした最後の大会、剣聖杯の予選だ。


 華麗に勝って、高笑いして終わりたいね。

 気合は十分だし、やっちまおう! ドンとやっちまおうね。


 これまでずっと目立ってきたけど、最後も目立ちまくってやる。もう天剣の奴らがかすむくらいに、私は目立ってやるのだよ。

 天剣が主催の大会でも、主役は花園なんだよね。そういう日にするって、私が決めたからね。


 がははっ、覚悟しとけよ!


 朝早くから始まる予選に向けて、移動の時点からもう勝負は始まっている。

 昔の私だったら、芋ジャージで電車に乗って移動だった。でもいまは違う!


 まゆまゆが買った超絶すっごい車、真っ赤なオープンカーで花やしきダンジョンまで送ってもらう。

 服も気合を高めるのにちょうどいい季節。ピンク色のテカテカしたスカジャンは、背中に超かっちょいい虎の刺繍入りだ! 英国お嬢様風のジャンパースカート姿にスカジャンを合わせれば、もう完璧な私だよ。


 そんな超カッコいい私が登場すればだ。

 朝の早い時間にもかかわらず、周りがめっちゃざわついているし、視線を独占しまくりだ。


 がははっ、目立ってるわ。私ったら超絶目立ちまくってるわ!

 早くも勝ってしまったわ!


「よし、葵。まだ予選だが派手に決めてこいよ」

「おうよ、まゆまゆ!」


 王者の車から、ドアを乗り越えるようにして飛び出した。

 華麗にひらりと着地だよ。もうこの時点で、今日という日の勝者だわ。

 私以上に目立つ奴、いるなら出てこいや!


 集まる視線を一身に受けながら、堂々と花やしきダンジョンの管理所に突入だ。気分がいいわねー。


「たのもー!」


 またもや集まる視線を受けながら、受付に向かう。たぶん、あそこかな。

 それっぽい雰囲気のカウンターに行って、身分証を差し出すよ。


「おいすー! 私、永倉葵。今日はよろー」

「……永倉葵スカーレット、たしかに。試合は事前の告知どおりに開始予定です。それまでにダンジョン内所定の武闘場にお越しください」


 つまらん兄ちゃんだね。愛想も悪いし。


「ほーい。ちなみに遅れたらどうなんの?」

「遅刻は厳禁です。もし遅れた場合には即失格となります」

「マジで? 聞いてないわ。そんなんどこにも書いてなかったよね?」

「言うまでもないことです」


 マジかよ。あぶねー。今日はちょっと早めに移動しといてよかったわ。

 渋滞がどうのとか言って、まゆまゆが早めに行こうって言ってくれて助かったわ。


 早め早めの行動が大事になるね。仕方ない。

 更衣室が混むのも嫌だし、ちゃちゃっとお着替えもしちゃいますかね。


 とっとこ移動してドバンと扉を開け放ち、まだ人の少ない更衣室の中をちょっと様子見だ。

 世の中変な奴が意外と多いからねー。そういう奴の近くになっちゃうとめんどくさいんだよ。


「あ、あの! 永倉さん、ですよね」


 どうすっかなーと思っていたら、話しかけられた。

 おうおう、私のファンかね? 大ファンのお嬢ちゃんかね?


 がははっ、人気者は大変だわ。

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― 新着の感想 ―
逃げ上手の亜也子が振り回すアレですな 正宗作なんだろうか……
更新お疲れ様です。 見た目はアレですかね?昔のエクスキューショナーズソード(剣身の先端が尖ってなくて平らになってる、罪人の首を落とす専用の剣)に厚みを持たせた感じかな?四凌圧砕剣。 遅刻したら即失格…
鬼に金棒ですね。金棒…金棒…?
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