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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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226/235

すごい会場東京ビッグドーム!

 ついにやってきました。東京ビッグドームでの本選、その1回戦。私の出番だ。

 リングに上がると、めっちゃたくさんの観客からすんごい歓声が響く。

 こいつはやばいわ。うるさいけど超気持ちいいわ!


 正面にいる対戦相手はアラサーくらいの兄ちゃんかな。真剣な顔でこっちをじっと見ているね。

 こいつはあれだ、シードとかいう予選を免除された16人のうちのひとりだよね。


「ういー、こんなもんか」


 あんま強そうには見えないわ。私のほうが100倍強くね? なんで私がシードじゃないんだよ。納得できねーわ。

 弱そうに見えて実は強いとか? うーん、やっぱそんな感じはしないけどね。


 ピカピカ光る大型スクリーンのほうを見れば、私たちの情報がでっかく書いてある。


『永倉葵スカーレット 絶望の花園オルタナティブ代表 武器:警棒』

『柏木剣介 武骨者剣客集団所属 武器:日本刀』


 おうおう、私の顔写真はもうちょっといいやつ使えよ。なんかちょっと怖い感じじゃん。もっとこう笑顔のさあ、そういうのだってあるだろ。


「それでは本選1回戦第1試合を始めます。制限時間は15分です。リングアウト、ギブアップ、または戦闘続行不能と審判が判断した場合に決着とします。時間内に決着しない場合には延長戦、そして審判団による判定を――」


 ごちゃごちゃした説明は事前に聞いているから大丈夫。警棒をクルクル回して、準備完了の意思を示すよ!

 相手も刀を構えて、準備も気合も十分な感じだね。そうして審判が手を挙げて、


「――始め!」


 振り下ろすと同時にゴングも鳴った。その直後、アラサー兄ちゃんが動いた。

 鋭い踏み込みから刀を抜いて、私に向かって一閃って感じ?


 でも遅いし、見え見えなんだよね。ひょいっと軽くしゃがんで避けたら、勝手に近づいてきた相手の懐に潜り込むよ。

 めっちゃびっくりしてんのが、その目からわかっちゃうね。刀を振り抜いた姿勢のまま、なんにもできないっぽいね。


「ほいよっと」


 右の警棒でお腹をドン、左の警棒であごをドン!

 ここは見せ場だよね。いつもよりちょっと派手にかますよ。


 ちょいっとジャンプ! 回し蹴りを胸に叩き込んで、リングの外まで吹っ飛ばした。


 時間はどんなもんかな?

 大型スクリーンに表示されたタイマーを見たら、まだ5秒しか経ってなかったわ。

 がははっ、やっぱ弱いじゃん。楽勝!


「勝者、永倉葵スカーレット!」


 審判のマイクを通したでっかい声が響いたのに、会場が静まり返っちゃってるね。

 でも次の瞬間だよ。


「うおおおおおおおおおおおお!」


 すごい歓声だ。それと拍手も。

 大型スクリーンには、さっきの私の勇姿が流されている。それも違う角度だったりスローモーションだったりで何回もだ。

 こうやって見ると、ちょっとハズいわねー。


 でも映像が繰り返されるせいか、歓声と拍手が鳴りやまない。

 警棒の超高速クルクル回転で歓声に応えてやれば、もっと大きくなった。


「いやー、こりゃ気持ちいいわ」


 観客に応援されるのって、思ったよりずっと気分がいいんだよね。

 なんせ5万人だっけ? そんだけの大勢の人たちが私の戦いで喜んでくれるとかさ、なかなかないわ。

 がははっ、もっとサービスしたくなっちゃうね。


 これが東京都大会、本選の舞台っすか。

 マジすげーっす!



 控室に戻ると、ひとりの空間がちょっと寂しい。

 マドカとリカちゃんは観客席に行っちゃったから、次の出番までやることないわ。

 どうすっかなと思っていたら、スマホの着信音が鳴った。


「んお、夕歌さん! おいすー、私の勇姿見た? 見てくれた?」

「おいすー、葵ちゃん。見た見た、すごかったわねー」


 ネットでライブ中継してるらしいからね。知り合いみんなに見てねって言ってはいたけど、電話をくれるとはナイスだよ。戦い終わったら待ち時間が長いんだよ。


「まあ、よゆーだったよね」

「あの人はハンターとしてはあまり活躍していないのだけど、こういった武闘会ではよく見かける人ね。今日もシード枠だったし、結構有名人なのよ」

「ほーん? そう言われると技はそこそこだったかな。でもやっぱハンターとしてのレベルが低いとさ、ステータスの力が出せないじゃん? そのせいで弱いのかも」

「葵ちゃん。ステータスの力をダンジョンの外でも発揮できるのって、よっぽどの高レベルか天才しかいないのよ?」


 私って天才だったのか。やっぱそうだよね。そうに決まってるわ!


「この調子で優勝するしかないわ。もう決まったも同然だよ」

「そんなこと言って油断してると、意外な相手にやられちゃうわよ?」

「いやいや、私ったらまだ全然本気じゃないし。むしろ本気で戦いたいよ。予選もやったけどさ、みんな弱っちいんだよね」

「本気じゃないの? 容赦ないわねー、なんて思ってたのに」

「あんなの全然だよ。それでさあ――」


 弱っちすぎて、本気でやったらぶっ殺しちまうからね。気を使う私も大変なんだよ。ちゃんと手加減しないとだし。

 そんなことを夕歌さんに話していたら、まあまあ時間が経っていた。


「――ごめん、そろそろ仕事に戻らないと。試合はちょこちょこ見るから、がんばってね」

「うん、夕歌さんまたね」


 次の試合までまだ時間あるけど、あんまうろうろすんなよって言われてるからね。どうしたもんかな。

 別の奴の試合がモニターで流れてるけど、あいつらも全然弱っちいわ。見ててもつまらんし、マジで暇だね。


「ういー、でもこれなら派手に勝って、評判を上げられるかな。あんだけ超たくさん客がいるんだし、たぶんライブ中継見てる人はもっといっぱいいるよね」


 私も花園も評判爆上げになること間違いなし!

 今日も来週も、その次も勝って、あとは天剣主催の大会でも勝ちたいね。やっぱ天剣のが本命かな。


 この東京都大会もすごい注目されてるだろうけど、天剣主催の大会が一番だって言われてる。

 そこに殴り込んで、目立ちまくりたいわ。

 あらかじめ目立っておけば、この先はもっと目立つよね。


 どうせやるなら、ガツンとかましてやらないと。

 よっしゃ、お次も派手に勝つぞ。



 ――東京都大会本選2回戦。


 ベスト16に勝ちあがった奴らが、準々決勝をかけて戦うのがここだ。

 準々決勝とか聞くと、なんだかわくわく感がこみ上げる。いいね!


 対戦相手の兄ちゃんも気合入ってる感じだね。

 ほーん、今度の奴は刀じゃなくて剣? でも細っこい剣だね。ちょこっと殴ったら折れちまいそうだよ。

 あれ、折っても怒られないかな? 戦いなんだし、場合によっちゃ仕方ないよね。私だってわざとそんなことはしないけど。


「――始め!」


 試合が始まってすぐ、剣士の兄ちゃんが動いた。

 低い姿勢で下のほうから突き上げるような感じ?

 前の試合で私がしゃがんで避けたからかな。ちゃんと考えてやってるなら、いい感じだよ。


 ただ、やっぱ遅いんだよね。


「おりゃー」


 ちょいっと横に動いて、片手の警棒をフルスイングだよ。

 突き出された剣をガキンと吹っ飛ばしつつ、勢いのまま回転してもう片方の警棒をお腹にドン!

 兄ちゃんは硬そうな防具でこらえたけど、踏ん張りすぎなんだよね。


「とうっ」


 動きが止まった兄ちゃんのあごに、ジャンピング飛び膝をお見舞いした。

 もう遅いんだよね。防がれるなって思った時には、もう次の手の準備をしてるんだからさ。

 仰向けに倒れた兄ちゃんとほぼ同時に、ストッと着地を決めた。そうしたら、また大歓声と拍手の嵐だよ。


「がははっ、もっとほめておくれよ!」


 どんどん調子に乗って、華麗に勝ちたいもんだね。

 応援してくれれば、もっと派手にやってやりますとも!


 いやー、東京ビッグドームってマジで気持ちいいわ。ここ、気に入っちゃったわ。


 あ、そうだよ。この会場って私のものにできたりするのかな。

 売ってくれないかね?

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