大都会の武闘大会、はじまります!
超絶流行中の武闘大会に参加して、いきなり2連続優勝をかましてしまった。
がははっ、私ったら早くもまた注目されちゃってるっぽいね。
いやー、滑り出し絶好調のいい感じだよ。
それでもって次だよ、次!
お次はなんと、東京都主催の武闘大会。
これがどれだけすごいかっていうと、全国の自治体? それが主催する大会の中でもトップクラスにすごいわけだね。
参加人数は3000人とかいるらしい。しかも、ホントの初心者みたいな奴は出られないから、レベルが高めだって聞いた。観客の数だって、たぶんとんでもないことになる。賞金もそこそこ出るし、なにより注目度がやばい。
この大会で勝てば、評判が爆増すること間違いなし!
つまり私たち花園の評判を上げちゃうぞ大作戦にとって、超重要なポイントになるわけだ。
「よっしゃ、気合入れていくぞ」
平日の火曜日、今日は東京のでっかい体育館での予選1日目。
私はいつもの魔法学園の制服ルックに身を包み、両手の警棒をクルクル回しながら会場入りした。
予選は1対1のトーナメント形式。3000人以上もいる参加者を、2日かけて16人まで絞り込むらしい。
よくわからんけど、今日は4つ勝てばいいって話だけは聞いている。
まあ、なんてことはないよね――
「1回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「2回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「3回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「4回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
うーん。どいつもこいつも弱っちいね。たぶん全部、30秒もかからずに終わってしまったわ。
あんな奴ら、楽勝すぎてすぐに忘れちまうだろうね。
初戦は槍使いだったかな。正面から突かれたのを警棒で弾いて顔面をドン! 次の奴は剣を避けてお腹をドン! ほかも似たような感じだった気がするね。
これなら神楽坂ダンジョンの骸骨くんのほうが普通に強いわ。それも低階層の。でもまあ、ダンジョンの外だしこんなもんかな。
強めの人はシード? そういう特別扱いで本選から出るらしいし。私も招待されてんだから、そのシードってやつでよくね? なんで普通に予選からなんだよ。意味わからん。
「つ、強い……」
「あれが噂の『絶望の花園オルタナティブ』代表か」
「まだ新人なのにあの強さは異常だろ……」
私に聞こえちゃうひそひそと話はやめてほしいよね。まあいいけど。
でもあれか、花園の評判が上がるならね。いくらでも噂話をしちゃっておくれよ。しまくればいいよ!
東京都大会の予選1日目から、1日だけ休憩の日があって次の木曜日。
同じ会場で予選の2日目が始まる。今日勝てば本選に出場できるからね。もっと気合入れてがんばるぞ。
「5回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「6回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「7回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
「8回戦、永倉葵スカーレットの勝利!」
勝ち上がるほどに、相手もちょっとはやるようになってきたね。一応は予選の1日目を勝ち抜いただけはあるって感じかな。
でもまあ、私のウルトラハード警棒術の前では無力すぎたね。というか、みんな弱っちいわ。普通に弱い!
やっぱつまらんかもねーなんて思ったけど、これで予選は勝ち抜けたし、本選には強い奴がいるかもしれない。
期待はしたいけどね。でもいくらレベル50以上のすごい奴がいないからって、さすがに拍子抜けなんだけど。本選は楽しいといいな。
さてと、帰りますかねー。
「出てきた、出てきたぞ!」
「永倉さん、永倉葵さん! ちょっといいですか!」
会場の体育館を出たところで、うっとうしい奴らにわらわら囲まれた。
カメラを向けられて、マイクを突きつけられちゃってるよ。
「麻布スポーツ新聞です。今回の予選、全試合圧勝でしたね。本選への意気込みを聞かせてください」
「ダンジョンハンター専門チャンネルです! 本選はどこまでいけると思いますか?」
「両手で警棒を使う技は珍しいですよね。どなたに教わったのですか?」
うへー、邪魔くさいわ。
けどこれは評判を上げまくるチャンスだからね。全部は付き合ってられんけど、花園の代表者としてちょっとは答えてあげようね。
よっしゃ。
「意気込みはそりゃあね。優勝だよ!」
決まってるよね。いちいち聞かなくてもよくね?
むしろ私に限らず、優勝以外を狙ってる奴なんていなくね?
「予選の圧勝から、その自信は当然かとは思います。しかし、東京都主催の武闘大会は歴史が長く、これまで――」
うーん? ごちゃごちゃうるせーな。周りもうるさいし、話が長いと意味わからんよ。
「すんません、ちょっとわかんないっす!」
「ではこっちいいですか? 若干、17歳にして本選出場は極めて異例ということですが、それについてコメントを!」
ほうほう、そうなんだ。でもこれまで戦った奴らが弱すぎたからね。
「ちなみに優勝候補は『天剣の星』の未来のエースと呼び声の高い――」
あーん? 天剣?
私が優勝候補じゃないのかよ。
「天剣の人も出てんの?」
「永倉さんの3回戦の相手も天剣のサブクランに所属していましたが……」
「とにかく優勝候補が永倉さんに対して、必ず勝つと宣言されていました。永倉さんからも何かコメントを!」
うっとうしい奴だね。あとで天剣が主催する大会にも出てやるんだからさ、それまであんまり関わりたくないのに。やっぱそうだよね。スルーしよう。
「えっと、優勝候補とか言われても知らないっす。全然、これっぽっちも聞いたことないっす! ほいじゃねー」
知らない奴にどうこう言われてもね。私からはなんも言えないわ。
「こ、これは過激な発言だ! 彼を知らないとは、そんなはずがない」
「次世代を代表するハンターとして、ライバル視されてもいるハンターだぞ。これは面白くなってきた」
いや、マジで知らんのだけど。勝手に盛り上がるなよ。
まあ話題になって損はないからね、どんどん盛り上げておくれ。お次は日曜の本選かー、がんばろうね。
うおっと、駐車場で銀ちゃんが待ってるし、早く行こうっと。
そしてあっという間に本選の日がやってきた。
会場は東京ビッグドーム。あの超有名なランドマークだよ。
でっかい会場の中央には、巨大な特設リングが組まれている。めっちゃ広い観客席は満員らしくて、だいたい5万人くらいいるんだとか。
すごすぎるわ。予選とは規模が違いすぎるし、どっかの区の大会とは格が数段違うわ。比べ物にならんね。
「うおおおーーーっ、すっげー! 東京ビッグドームだよ、東京ビッグドーム!」
テンション上がりまくるわ。もう朝からテンション上がりまくりで、ちっとも下がらないよ。
控室のモニターから会場の様子を見ただけで、盛り上がりまくっちまうよ。
「葵ちゃん、そんなテンションだと本番までに疲れてしまいますよ?」
「そうよ。それに天剣所属のハンターにケンカ売ったようなものなんだから。あんまりはしゃぐと、悪目立ちするわ」
「いやいや。だって東京ビッグドームだよ? すごくね? 私ったら東京ビッグドームデビューじゃん」
今日はリカちゃんとマドカが付き添いで来てくれた。花園はいろんな大会に出まくるから、いちいち誰かの応援に行くとかそういうのはやめようねってことになってる。
けどやっぱり仲間が見守ってくれてると気合が入るよね。
「よっしゃよっしゃ。今日もウルトラハード警棒術で瞬殺してくれるわ!」
「まどかちゃんと観客席から応援してますね」
「そろそろいい時間ね。アオイ、今日も期待してるわよ」
ふたりが私の肩や背中を軽く叩いて、優しく笑ってくれている。うんうん、やっぱ応援はありがたいよ。
私はただ勝つんじゃなくて、圧勝するからね。見ていてほしいよ。
仲間と5万人くらいが見守る中で勝つんだよ。想像しただけでも、マジすごいわ。
うおーっ、今日もやったるぞ!




