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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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223/235

はじまったかもしれないヴィクトリーロード!

 アホみたいにたくさん届いた、武闘大会へのご招待。

 これは天剣の子分たちが、私たち花園が大会に出たいって言ってたよ、みたいな話を勝手にばらまいたせいらしい。


 普通だったらそんなもんに構ってられないからね。ちょっとくらいは出たかもしれないけど、ほとんどはお断りしまくる流れだ。


 でもアホの敵は私たちがその普通のことをやったら、「あいつらお高くとまってんね」とか「調子に乗ってるわー」とか「感じ悪い奴ら!」みたいな噂を流そうって魂胆だって聞いた。


 つまらんことをするもんだわ。その評判っていうのも、まあまあ微妙じゃない?

 私は別にどこの知らん奴らにどう思われようが、あんまり気にしないし。直接嫌なことを言われたらぶっ飛ばすけど、そうじゃなければ別にね?


 でもそれだと、私たちをかばってくれるセーラさんたちまで、ちょっと忙しくなっちゃうかもしれない。

 ふざけんなって、マジかよって、感じだ。


 だったらもう許さんわ。それに変な奴らの思いどおりに行くのも、やっぱ気に食わない。

 だから逆に出られるだけ出まくって、評判を上げてやるのだよ。こうなったらもうね、思い知らせてやるわ!


 誰がどこの大会に出るか決めて、みんなでこの大会期間は戦いの練習をすることになった。

 すでにウルトラハードな環境で鍛えまくったみんなは、超強い私から見てもそこそこ強い。ダンジョンの外でステータスやスキルの力が出せなくたってだいぶ強いと思う。


 それでも練習して悪いことはないからね。集中特訓して大会に備える。



 私と沖ちゃんは予定を詰め詰めにしたから、どこぞの大会が割とすぐ近くに迫っている。

 クランハウスの中にはトレーニングルームやらもあって、気分によって室内でやるか、お庭でやるか決めている。

 やっぱりこのクランハウスは便利で住み心地がいいわ。


 そんな日の午後、特訓後の私たちのところに雪乃さんがやってきた。


「皆さん、ニュースです。紫雲館がついにやりました」


 なんだろうね。やぶからぼーに。


「やったって、ガラスの森ダンジョンか?」

「第五十階層に到達したと速報が入りました」


 おお、やったじゃん。

 ダンジョンの五十階層まで行けたのは、天剣だけだったからね。セーラさんたちもついに壁を破ったんだね。


「こうなってくると天剣は焦るだろうな」

「でも天剣は第五十二階層だったけ? そっちのほうがまだすごいよね?」


 たったひとつの階層を進むだけでも、めっちゃ大変そうだからね。そういう苦労は私たちまだしてないから、全然わからんけど。


「そうだな。到達階層でリードはしているが、天剣は比較的に攻略のしやすい浦安ダンジョンでのことだ。それに対してガラスの森ダンジョンは難易度が高く、しかもポーションを獲得しやすいというわかりやすい特徴がある。第五十階層以降では新たなポーションが見つかるかもしれんし、期待と注目度が違う」


 なるほど。銀ちゃんは詳しいね。

 それにしてもだよ。天剣の奴らはずいぶんと威張ってるって聞いたしね。セーラさんたちが巻き返せてよかったわ。


「よっしゃ、盛り上がってきた感じするわ! 私たちも活躍して、もっと盛り上げていきたいよ!」

「あたしも気合入ってきたわ」

「じゃあマドカには、私が編み出したウルトラハード警棒術の次の段階を伝授してあげるね」

「アオイって言葉で教えるのはヘタだけど、模擬戦を通して教えるのは意外と上手よね」


 いやいや。全然意外じゃないし、フィーリングでも通じるから。

 そんなこんなで練習相手を組み変えながら、ダンジョンの外でもあれこれレベルアップ! 私たちったらいい感じだよ。



 予定を詰めまくったお陰で、早くも私には出番がやってきた。

 自分でやるよって言ったことだけど、これがまあ結構忙しそうな感じになってしまった。


「葵は今日からですね。まずは品川区主催の大会でしたか」

「そうだね。明日は横浜のもあるし、なかなか大変そうだよ」


 基本的に土日はほぼ大会で埋まってしまった。平日は規模のでっかい大会の予選があるし、もうずっと忙しそう。


「おう葵、そろそろ出るか?」

「遅刻したら不戦敗だっけ? それは嫌だからね。早めに行こうよ」

「じゃあ行くか」

「いってらっしゃい。アオイ、期待してるわよ」

「葵姉はん、気をつけて」

「大丈夫! サクッと勝ってくるわー」


 朝からクランハウスのロビーにいるみんなに見送られて、まゆまゆと一緒に出発した。


 一応、私たちは単独行動は避けることになっている。

 銀ちゃんたち4人があぶない目にあったし、私たちはハンター業界でちょっと有名だ。


 どの大会に出るかも公表しちゃってるから、変な奴に狙われるかもしれない。そいつを返り討ちにしちゃえば話が早くね? なんて思ったけど、油断はよくないよね。

 そんなわけで送り迎えとか付き添いを、その日に空いてる誰かがやってくれる。


 まあ、なんやかんやあるけど、あちこちお出かけできるのも、大会で暴れられるのも割と楽しみではあるね。

 ちょっとごついSUVでの移動中、朝メシとは別腹のどら焼きを食べてエネルギーチャージもよし。


「この車もいいけど、やっぱ早く王者の車に乗りたいねー」

「アタシもだ、納車まで楽しみにしとこうぜ。そういや今日の大会って、どんな方式なんだ?」


 隣で運転中のまゆまゆは、いつものキャバ嬢スタイルにサングラスをかけている。派手な女感がすごいけど、なかなかカッコいい。

 これならあの超絶カッコいいオープンカーに負けてないと思うわ。さすがだよ。


「なんか数人まとめて戦うのを、何回か繰り返すやつだったと思うわ」

「バトルロイヤル形式か。葵は狙われるだろうな」

「かかってこいってなもんだよ。そっちのほう面白いわ。でもめっちゃレベル高い人とも戦えたらよかったのに。上級クラスをゲットした人とかさ」

「レベル50以上の奴らは、ちょっとした化物って話だからな。基本こういうイベントには参加しねえらしいぜ。なんせ、日本だと200人くらいしかいなかったはずだ。現役のハンターに限れば、もっと数は少なくなるしよ。もし大会みたいなもんに出るとすれば、上級クラスの奴を集めた特別な大会だろうな」


 そっかっそっか。めちゃ強い人たちからしたら、普通の大会なんかに出たって面白くないよね。

 たしか、日本には何十万人もハンターがいるのに、レベル50以上ってだいぶ少ないわ。セーラさんたちはその中に入ってんだよね。そう考えるとマジすごいね。


「まあいいや。今日はダンジョンの中じゃないし、結構つまらんかもねー」

「かもな。スキルも使えねえし、派手な戦いにはならねえだろうな。それでもアタシらよりは、高レベルの奴がいるだろ? それなりには強いだろうしよ、葵ももしかしたら追い込まれるかもしれねえぞ」


 それがそうでもないんだよね。


「雪乃さんが言ってたけど、来週は東京都? 都が主催する大会があるんだよ。平日から予選でさ、週末に本選があるんだよね。だからその直前の大会に、強い人は集まらないっぽいよ。あとはでっかいクランが主催するやつとか、そっちのほうに集中してんだってさ」


 私は今日も明日も来週も出るけどね。


「じゃあこんなところで負けてられねえな。葵、派手に勝てよ」

「とーぜん!」



 そんなこんなで武闘大会の一発目。


 品川のバトルロイヤルを制したのは、私、永倉葵なのである!


 サクッと勝って終わったよね。まあ、よゆーっすわ!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ナレーションで品川大会終わったww まぁ以前の光霊石集めで多少はレベルアップしてた(ついでに石で格があがってる)でしょうし、元々その辺の有象無象よりは遥かに強い→冷静に考えたらよ…
サクッと勝ってしもうた笑
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