たくさんの武闘大会
久しぶりにみんなで集まって、これからのことを話し合った。
なんだか私たち花園もめんどくさいことになっちまったね。活躍しまくるって、そういうことなんだよね。
ホントはこれまでみたいに、ただダンジョンで経験値とお金を稼ぎたかった。
みんなでわいわいしながら、あちこちのダンジョンに行って、モンスターをぶっ倒して強くなって、珍しいアイテムなんかも手に入れちゃったりしながらさ。
遥か遠いけど上級クラスを目指したい気持ちは変わってないし、まだ入ったことない練馬ダンジョンの攻略だってやってみたい。
お金を稼ぎまくって、もっといっぱい絵とか壺とか買ったり、なんかすごいコレクションを集めたりもしたい。あと運転免許も取りたいね!
クランランキングだって、どうせなら上を目指したいし。
やりたいことはいっぱいあるけど、そんな風に単純にダンジョンハンターをやっていたかったのにね。
まったくもう、ふざけた奴らがめっちゃ多いわ。そいつらが誰かわかれば、私がぶっ飛ばしに行ってやるのに。
「とりあえずはさ、いろんなところの武闘大会に出まくったらいいんだよね? どうせやるなら私はいっぱい勝ちまくりたいから、いっぱい出るわ」
「私もです。可能な限り参加したいです」
沖ちゃんは大会荒らしがどうとか言ってたね。そういうのも楽しそう。むしろ楽しまないと損だよね。
「アタシはそうだな、ほどほどにしとくか。まどかはどうすんだ? お前はあんまり目立たねえほうがいい気もするがよ」
「そうね……いえ、この際あたしも実力を示したいわ。下手に関わろうとする連中をまとめて遠ざけられるといいのだけど」
なんと。マドカは人前に出るのあんまり好きじゃないと思ってたのに。
「うおー、その意気だよ! 対戦相手をもうボッコボコにしまくってさ、そうすればなめられないよ!」
「いまからでもやれることはあります。一緒に対人戦の特訓をしましょう」
「出るからには恥はかけねえしな。よし、やるか」
「あたしもこの際、格闘戦のレベルアップを図るわ。みんな付き合って」
いいねいいね。とにかく練習して損はないからね。がんばろう!
「大会の選別は、明日にはまとめたものをお見せします。それを基に皆さんのスケジュールを考えましょう」
ありがたいね。雪乃さんのお陰で、あれこれ楽に進められるよ。
そんなこんなで、珍しくみんなで格闘戦の練習なんかをやりつつ次の日になった。
雪乃さんは部下一号の詩乃さん、二号の綾乃さんと一緒に、私たちに向いてそうな武闘大会を選んでくれて、わかりやすくカレンダーの上にあれこれまとめてくれた。
大会はどこかで年中やってるみたいだけど、いまのブーム的なものはこの先3か月くらいに集中しているらしい。たぶん11月の終わりくらいまでだ。
私たちもずっとはやってられないから、とりあえずその3か月に限って、大会を荒らしまくる。
大会の種類は剣術大会だったり、武器を使わない格闘大会だったり、なんでもありだったり、ダンジョンの中だったり外だったり、トーナメントやそうじゃないのもあれこれあるみたい。
場所も北海道から沖縄までどころじゃなく、なんと外国からの招待もあったらしい。すごいわ。
「数をこなすことを考えると、移動に時間がかかる場所は避けたいわね。でもあたしとマユは参加数自体は絞るから、そうした場所に参加したほうがいいかしら? 海外はさすがに遠いけど……」
「アタシは場所はどこでもいいけどよ、規模のしょぼい大会はゴメンだな。雪乃、その辺はどうなってんだ?」
おー、それはそうだよ。私もしょぼいのは嫌だからね。
「規模という意味では、想定参加人数が100人以下の大会は除外しています。そのような大会では賞品や賞金があまり出ませんし、注目度も低いです。花園としてのメリットが薄く、皆さんの負担ばかりが増えてしまいますから」
「そういうことか。雪乃たちに選別されてる大会なら、どこでもよさそうだな。よし、どうせならアタシは地方に行くぜ。まどかはどこがいいんだ?」
「あたしは漠然と北のほうかしらね。そっちの地方自治体か、地元の有力クランが主催する大会に出ようかな。ついでに面白そうなダンジョンの情報も仕入れたいわね」
「ああ、それはいい。資料よりも地元のハンターに聞いたほうがより良い情報が手に入るだろう」
「わたしも付き添いますねえ」
え、なんかずるいわ。そんなのもう旅行じゃん。私も一緒に行きたくなっちまうよ。
「葵と私は基本的に日帰りか1泊程度の距離の場所で、可能な限り多く参加する方針でいいですよね。剣術主体の大会は私が出るとして、葵はどこか気になるところありますか?」
「うーん、どうすっかなー」
仕方ない。ホントは私も旅行に行きたいけど、マドカやまゆまゆと一緒の大会には出るのは、話が変わってきちゃうもんね。私たち花園のメンバーで、全国の大会を優勝しまくって、荒らしてやろうって話だからね。
「決めたよ、沖ちゃん。私はもう出られるだけ出るわ。雪乃さん、詰め詰めの予定にしてもらっていい? そっちのほうが楽しそうだしさ、勝ちまくればもう誰も私たちに文句言えないよね。どれに出るとか、そういうのもお任せしたいわ。私ったら、どんな大会でも勝つつもりだし」
負ける気なんて、全然しないわ。
「アオイ、無理はダメよ?」
「無理だと思ったら途中でサボるから大丈夫! それで文句言う奴がいたら、ぶっ飛ばしにいってやる!」
「休む場合はきちんと休みましょう。無理は絶対にいけません。その上でスケジュールを詰めるとするなら、まず週末は大会で埋められます。平日は規模の大きな大会の予選が組まれることが多いので、そちらを入れていきましょう」
おお、予選か。なんかそれっぽいね。
そういや、大会ってことは客もそれなりにいるのかな。前の蒼龍杯の時も、よくわからん奴らがいっぱいいた気がするね。
「週末の大会の日はさ、やっぱいっぱい人が見に来るんだよね? 優勝したら、私たちめっちゃ目立つよね?」
「優勝以前に、出場するだけでも目立つと思いますねえ。花園はそれなりに有名になってますし」
「それに葵と瑠璃は蒼龍杯で注目を浴びていた。大会への出場は、あの時以来でもあるしな」
「今回はよ、さらに目立つまどかもいるんだぜ? アタシはおまけみてえなもんになっちまうが、それでも花園らしく、ひと花咲かせやるよ」
いいね、私も花を咲かせまくるわ。負けてられないね。
「大会の規模にもよりますが、皆さんが出場される大会は予選でも1,000人以上の観客が集まる見込みです。注目のハンターが多ければ、その倍以上にもなると思います」
「注目度の高い大会なら、観客数はまたひとつ桁が増えるだろうな。配信で観戦する人数はもっと多くなるはずだ」
がははっ、いいじゃんね。多けりゃ多いほどいい。お祭りは派手なほうが楽しいわ。
すっごいたくさんの客の前で、私たちの戦いを見せてあげようね!




