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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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不思議なダンジョン、星のほこら

 九条家のお屋敷は超立派だった。もうやばい。


 まさか家の中に温泉があるとは思わんわ。露天風呂まであるとか、ちょっとすごすぎる。

 晩メシもお鍋をメインに野菜の天ぷらが盛りだくさんで、とっても満足感が高かった。

 客間もそこらのホテルなんかより、ずっと立派でベッドも寝心地よかったし。


 それは朝の目覚めもスッキリ爽快になるわけだ。朝っぱらから活動的になっちまうよ。


「ういー、朝から温泉。サイコーっす!」

「お客さんで朝風呂に入る人なんて、アオイが初めてよ」


 マドカが私の髪にドライヤーをあてながら、ちょっと笑ってる。

 いや、入ってもいいよって言ったのマドカだからね。いいなら夜も朝も入るだろ。花園のお風呂も立派だけど、露天の温泉にはさすがに勝てないわ。


「朝ごはんはフレンチトーストに生ハムとナッツのサラダや言うとった」


 マジかよ。和風のお家だから、普通に納豆とか味噌汁かと思っていたわ。あと焼き魚とか。

 別にどんな風でもよかったけど、だいぶ朝からおしゃれ感あるメシだね。九条家すごいっす。



 朝メシも遠慮なしにモリモリ食べたら、今日の労働を開始しよう。

 がんばって働くぞ。


「あ、そうだ。花園のみんなにはどうする? レアアイテムのことは言ったらダメなんだよね? ロンドンのことは?」


 グループメッセージには、九条のお家に何日かお泊りするわと送っておいたけど、細かい理由は説明していない。

 食後のお茶をすすりつつ思い出した。秘密のことはともかく、ロンドンのことを黙ってるのは変だよね。仲間なんだし。


「うちは行かへん」

「あたしもロンドンに行くつもりはないわ。雪乃さんもギンコたちも忙しくしてるはずだから、余計なことは伏せておきましょ。終わってから話せばいいわ」

「それもそっか」


 みんな暇だったら、九条のお屋敷においでよって誘いたかったね。アイテムのことがあるから、やっぱ呼んだらマズいのかな? その辺どうなんだろうね。


「あとあれだよ、ダンジョンのこと。花やしきダンジョンと似てるってことは、モンスター1体しかいないってことだよね。すぐ終わっちゃうじゃん」


 よく考えたら、アイテムをいくつもゲットするって、だいぶきついわ。

 毎日倒すとしても何日やればいいんだよ。


「花やしきダンジョンと同じなのは、第一階層しかないことと、強力なモンスターがいること、それと日付が変わった時にモンスターが復活するところね。ただ、それとは違う特徴があってね」

「あそこは6つ部屋があって、それぞれにモンスターがおる」

「おー、そうなんだ。じゃあそこそこゲットできるかも」


 たしか、巨心石をいくつかゲットしろとか言ってたよね。

 運がよければ今日だけでもクリアできそうな気がするわ。


「どうかしらね。光霊玉は平均して月に2つ、巨心石は1日に1つ手に入るのが目安よ」

「葵姉はんの『ウルトラハードモード』で、どないなるかやな」


 なるほど、そういう感じか。

 ウルトラハードだったらアイテム取れやすいし、余裕っぽい気はするけどね。


「とりあえず行ってみようよ。サクッといっぱい取れるかもしれんし。ダンジョンてどこにあんの?」

「裏山や」

「うちの敷地の中だけどね。歩いて10分くらいのところにあるわ」


 山まであるのかよ。



 九条の家のダンジョンだから、管理所があるわけじゃない。部屋でダンジョン装備に着替えて出発した。


 そうしてお屋敷の裏手にあった山をちょろっと登れば、でかい門のお出迎えだ。

 お屋敷の門と似たような感じだね。山の中のダンジョンは厳重に守られているっぽい。レアアイテムの取れるダンジョンだからね、そんな風にもなるよね。そういや昨日、じっちゃんが大昔はこの辺に村があってーとかどうと言ってた気がする。超どうでもいい話だったけど。


 マドカが門の脇にある装置にピッと身分証を当てたら、門がすいーっと開くから結構ハイテクだ。

 門の中は外から見ても超シンプル。壁のないお堂みたいなものが、ダンジョンの上にかぶさっている。門の内側はダンジョンの領域になっているみたいだね。ステータスの力が開放されてシャキッとした。


「九条が管理しているこのダンジョンは、星のほこらと呼ばれているわ」

「ほこら? 名前に特別感あるね。ちょっとカッコいいじゃん」


 私たちの練馬ダンジョンも、もっとカッコいい名前がよかったわ。


「葵姉はん。ウルトラハードやと、モンスターがどないなるかわからへん」

「普通はでっかい亀のモンスターが出るんだよね?」


 ふたりは戦ったことはないけど、見たことはあるらしい。それによると、甲羅のある亀っぽいモンスターが6つの部屋にいて、ちょっとずつ特徴が違うって話だ。


「普通はね。でもアオイと一緒だとわからないわ。とにかく、まずは『ソロダンジョン』を使わずに入ってみましょ」

「あ、そうか。私たち以外に誰もいないからね。普通に入ってモンスター倒して、そのあとで私の『ソロダンジョン』にしちゃえば、もう1回戦えるんだ。ダブルチャンスが狙えるじゃん」

「そういうことよ。『ソロダンジョン』のスキルは秘密にしていないから、お爺様はそれを込みで今回の条件をつけたんでしょうね」


 まずます楽にクリアできそうだね。

 それにこの3人でダンジョンに入るのも久しぶりだわ。なんか懐かしい感じがする。


 いつものようにちょっとしたわくわく感が込み上げるのを感じながら、ダンジョン特有の長い階段を下る。

 するとそこはめっちゃ広い空間だった。岩っぽい質感の床や壁がうっすら青く光っていて、表面がでこぼこのせいかキラキラしている。


「うおー、すごいね。さすが星のほこらだわ」

「綺麗よね」

「ここは特別」


 これまでにない幻想的な空間は、いかにも特別なダンジョンって感じだ。

 広い空間を見回すと壁のあちこちに大きな穴が開いていて、別の部屋に繋がっているっぽい。

 あ、なるほど。穴が6つあるから、たぶんそこにモンスターがいるんだね。


 そういえば花やしきダンジョンで戦った、たしか牛鬼だっけな。あれの激臭攻撃には超苦戦した。今回も油断は禁物だ。

 とりあえずは、いきなり攻撃しまくって倒せるかどうか試してみよう。そんなことをマドカとツバキと話しつつ、テキトーに決めた最初の部屋に突入した。


「おりゃー、いきなり『黒縄こくじょう』くらえ!」


 広間と同じキラキラした部屋の中には、象みたいに大きくて黒っぽい亀のモンスターがいた。そいつに向かって、私の最強スキルをぶっ放した。真っ赤に焼けた魔法の鎖が、亀のモンスターを縛り上げる。


 ザコモンスターだったらすぐ光に変えてしまう攻撃なのに、すごい防御力があるみたいだね。

 ただ、ちゃんとダメージはあるみたいで、身動きできないながらも暴れようともぞもぞしている。


 このまま待つだけで倒せるかもしれないけど、そんなことはしない。どんな悪あがきをするか、わかったもんじゃないのがモンスターだからね。


 様子を見たのはほんの数秒のこと。

 縛り上げられた亀に向かってジャンプしながら、黒い甲羅にスキル『キラキラハンマー』をぶち込んだ。


 うおっ、すっげー硬い!


 それとほぼ同時に、マドカが亀の頭に散弾銃を連続でぶっ放しまくり、横手に回ったツバキがしっぽや手足のほうに呪符を放ちまくる。するとサクッと倒せてしまった。


「……どうなるかと思ったけど、あっさりやれたわね」


 とんでもなく硬い甲羅の感触にはびっくりしたけど、ちゃんと倒せた。トドメはたぶんマドカの攻撃かな。甲羅をぶち抜きたいけど、いまの私じゃちょっと無理そうなくらい硬かった。

 てゆーか、メタル系モンスターより硬いんだけど。そんなんアリかよ。さすがは亀の甲羅だね。


「うちが知ってるのとは、大きさと何より威圧感がちゃう亀やった」

「やっぱ防御力めちゃ高いよね。次は違う方法でやってみて、ちょっとでも効かなそうだったら、またいまので倒そうよ」


 全力でやれば苦労なく終わりそうだけど、ザコモンスターとは全然違う。ちゃんとやらないとだね。


「そうね。せっかくだし、いろいろ試してみましょ」

「あ、ドロップや」

「やった! 幸先いいわー」


 光に変わって消えていく亀さんを見送りつつ、戦利品を確認することにした。

 どう見ても黄金色には光ってないから、光霊玉じゃなくて巨心石のほうかな。


 そういや、これって結局なんなんだろうね。単に珍しい宝石って感じとは違うみたいだけど。

 なんかすごい効果があるとか? 実物を前にしたら気になってきたわ。

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