診断メーカー書き出しと終わりネタ
1「私は雪の日に死にたい」で始まり、「それだけで充分」で終わる物語
「私は雪の日に死にたい」
柔らかな微笑みを浮かべて彼女が告げるのは、どこまでも無慈悲な言葉だ。雪の日。これから冷え込んでいくこの時期に、そんなことを言う。
ね、と微笑む笑顔は美しく、声音は優しく。けれど告げる言葉はどこまでも残酷だった。嘆く私に彼女は言う。
「それだけで充分」
2「都合の良いお伽話に夢を見ていた」で始まり、「恋って偉大だ」で終わる物語
都合の良いお伽話に夢を見ていた。
例えば、いつかこの場所から誰かが救い出してくれるとか。例えば、真面目に頑張っていれば誰かが気づいてくれるとか。例えば、もしかしたら何か財宝が与えられるとか。
そんなくだらないことを考えて、必死に生きてきた。そうすることで自分を保ってきた。
そんな自分が嫌いでもあった。何かに願って、何かを頼って、けれど自分では決して大きく動かない。そんな卑怯者な自分が嫌いだった。
けれど。
「君のそれは、慎重なんだと思うけど」
そんな風に優しく言ってくれる人が出来た。それだけで、世界がずっと明るくなった。本当に、恋は偉大だ。
3「精一杯背伸びをした」で始まり、「私は諦めないよ」で終わる物語
精一杯背伸びをした。私は子供で、彼は大人で。だから精一杯、いつだって背伸びをして、その広くて大きな背中に届くようにと手を伸ばした。いつも、いつだって。
けれど、子供でしかない私を見る彼の目は、優しい年長者のものでしかなかった。彼にとって私はいつだって、可愛い幼子でしかないのだ。
「フリッツ!」
怒ったように彼の名前を呼べば、銜え煙草の不良騎士は振り返る。
「はいはい、何ですか、姫様?」
「貴方、また私をのけ者にしようとしたでしょう?」
「さて、何のことですかね?」
肩を竦めるフリッツの顔には、「また姫様の我が儘が始まった」と書いてある。……悪かったわね。
騎士団に所属する下級騎士。騎士という名前を与えられているだけの雑兵に等しい身分。そんな場所にいながら、フリッツは誰よりも強かった。銜え煙草がトレードマーク。昼間から酒を飲む。周囲のお小言なんて右から左に聞き流す。
……けれど彼は、この国のどの騎士よりも、強かった。本当に。
望んで騎士になったわけではないのだと彼は言う。本当は傭兵や冒険者のような、自由に生きられる立場が良かったのだと。けれど彼は騎士の家に生まれた最後の男児で、騎士にならなければならなかったのだと。
だからこそ、せめて自分の望むように生きるのだと笑っていた。そんな、不良騎士。
けれど、貴方だけが私の騎士。私が願う、私が求める、たった一人の騎士様なのに。
それを告げれば彼は笑って「助けられたことによる刷り込みですよ」なんて言うのだ。違うのに。確かに彼に助けられて彼を見るようになった。けれど、私がフリッツを好きになったのは、それだけではないのに。
彼に恋をした。
とても騎士とは思えない男に、私は恋をした。姫様と呼ばれる身。いつかきっと、国のために誰かに嫁がされるであろう私。それが解っていても、私は彼に恋をして、彼の背中をいつも追いかけている。
弟達に混ざって騎士団の鍛錬に顔をだし、少女に使いやすい細剣を振るう。
そんな私を彼は、「物好きな姫様」「お転婆が過ぎると嫁入りに支障が出ますよ」なんてからかうだけだ。大剣を扱う彼に指南を請うことは出来ない。だからただ、己の鍛錬の合間に彼の姿を見る。普段のふざけた姿とは裏腹に、剣を振るう時の彼はとても騎士らしかった。私が焦がれた騎士そのもので。
「フリッツ」
「何ですか、姫様」
「私、いつまでも《お嬢さん》ではなくってよ?」
にこりと微笑んで告げてみせれば、フリッツは瞬きをした後にからからと笑った。笑って、私の頭を幼子にするように撫でる。いつものように。
「姫様がお嬢さんじゃなくなろうが、姫様は姫様ですよ」
そう、その言葉は事実。彼は騎士で、私は姫。私が大人になろうが、彼の中で私は姫様でしかないのだろう。一人の女として彼の目に映ることは、難しい。
そんなことは解っている。けれど、それでも、私は。私は諦めないよ




