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流れるままに


 私は、祐也から別れを告げられた後、心がぽっかりと空いたままになった。一人で学校に行き、一人でお昼を食べて、一人で塾に行き、一人で家に帰る。


 学校で祐也と廊下ですれ違う事もあるけど、彼は私を全く見ようとしない。校内でも私達が別れたという噂が流れていた。


 誰が流したかなんて事では無いと思う。前はあれだけべったりだった二人が、すれ違っても声も掛けない関係になったんだ。


 クラスの子からも理由を聞かれる事が有るけれど、私の所為と言うだけで細かい事は教えなかった。


 声を掛けてくれる男子も居たけど、とても付き合える状況じゃない。小山内さんは、友達として話はするけど、前の様に仲良くというより、中学からの付き合いで義理で話しているという感じだ。

 

 祐也と別れて少しして、小山内さんが

「友坂さんとはこれからも友達として話はする。でもあなたがした事は葛城君に対する裏切り。もしその男に抱かれたかったのなら葛城君と正式に別れてからにした方が人としての礼儀だったと思う」


 そう言われた。

 彼女は、私と祐也が友達関係になっていた事なんて知らない。でも校内であれだけべったりしていれば友達関係だから私が誰と何しようが関係ないなんて理屈は通るはずもない。


 だって、日曜日の朝は彼のベッドの中にほとんど裸の状態で体をくっ付けていたんだから。


 

 塾には行っている。裕也は私を見ても無表情だ。私も彼の傍には近付かない様にしている。


 学期末考査の結果は、私は散々だった。三十位だ。それに対して祐也は三位。何も考えられなくて勉強しなかった私と違って祐也はあんな目に遇っても勉強だけは手を緩めなかったんだろう。


 政臣さんとは会っている。何も頼るものが無くなった私には彼しかいない。そして求められれば素直に応じた。抱かれている時だけが、自分が自分であることが分かる。


 勉強は教えてくれた。同じ大学に行こうと励ましてもくれた。だから今の私にとってはそれで十分だった。


 クリスマスの日も政臣さんと一緒だった。もう祐也が何をしているかも分からない遠い存在になった気がした。


 十一月二十三日に政臣さんに抱かれてからまだ一ヶ月と少ししか経っていないのに。



 お正月は、一人で過ごした。お父さんは藤原特殊金属工業の社長宅へ挨拶に行っている。信じられない事にサラリーマンなんてしなかったお父さんだったが、今ではしっかりと板について来た。


 お母さんもOLとして頑張っている。今日は同じ会社の人と会うと言って出て行った。生活はまるで変った。

 昔の様な貧乏くさい所はみんな消えた。テレビも冷蔵庫、エアコンもみんな新しくなって、私の部屋もエアコンが付いた。

 前は祐也と一緒に寒いと言ってお布団の中で包まっていた時代が懐かしい。仕方ないから一人で近所の神社に初詣に行った。


何故か政臣さんからは連絡もくれない。私が連絡すると正月は忙しいんだ、ごめん。という返事が返って来ただけだ。


寂しい。おみくじも小吉。凶でないだけ良しとした。家に帰って一人でテレビを見ながら時間を潰した。




俺は、あれから藤原さんとは土曜日は二人で遊んだ。遊んだと言っても話をしたり、映画を見たり、散歩をしたりというぐらいだ。


手は繋ぐけど、もう彼女もキスをしてくるとかは無くなった。彼女はいつでもいいですと偶にほのめかすが、俺の心はまだこの人を妻にするとかって気持ちにはとてもなれない。まだ十六の俺にそんな判断出来るはずもない。


これからだって色々な人と出会う事になるだろう。まだまだ俺の前には色々な世界が広がるはずだ。自分自身でそのチャンスを狭くしたくない。

でも大学卒業までにははっきりしないといけないという事だけは段々理解して来た。


お母さんも美琴が全く我が家に遊びに来なくなった事や俺が藤原さんとだけ会っている事で、お母さんも美琴との関係は無くなったと分かった様だ。


日曜日は、都立中央図書館で一緒に勉強している。無栖川公園の中にある最新の設備を備えた図書館だ。

五階にあるカフェテリアも渋山図書館の様にクローズ時間もない。だから勉強に疲れた時は、カフェテリアで二人でいつでも話をする事が出来る。


お正月は、お母さんと一緒に暖かく迎える事が出来た。藤原さんが会いたいと言うので二日に家に来て貰った。


とても綺麗な和服姿。ピンク色をベースに金糸の入った白帯、長い髪の毛を金色の簪でまとめている。


来れた事が嬉しいのか凄く喜んでくれて、お母さんが作ったお節を美味しそうに食べていた。そして近くの神社に初詣に行った。


 お参りをした後、おみくじも一緒に引いた。二人共大吉だった。

「ふふふっ、祐也さん、もう迷う事はありませんよ」

「えっ?」

「だって、二人共大吉です。こういう流れを大切にして…ねっ」


 そして、周りに一杯人が居る中でいきなり抱き着いたりしてくる。着物を着ているんだから、もっとお淑やかにするかと思ったが、急に女の子らしく甘えてきたりする。


 今年は春休みに藤原さんの家に遊びに行く事も約束した。


そして三学期が始まった。


――――― 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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