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暇な時は碌な事がない


 今日は、土曜日。本当は祐也の部屋に行く予定だったけど、昨日の夜彼から電話が有って、会えなくなったと言って来た。理由は藤原さんと会う為だと言う。


 彼の言っている事は分かるけど、それでも私以外の人と会っているのは面白くない。私があいつと会っている時、祐也はこんな気持ちだったのかと思うと、何て事していたんだろうと思ってしまう。


 今日は午前中勉強したら、渋山に秋の洋服でも見に行こう。買うのは○○クロとか〇〇ムラだけど、コーディネートの参考にはなる。お昼食べたら行くか。



 私は、午前中、来週の授業の復習を少しやって、お昼は珍しく三人で食べた。そう、お父さんもお母さんもお勤めになったから土日は休みだ。


「美琴、今日は祐也君の所行かないの?」

「うん、彼、今日は用事あるから、明日は朝から行く」

「美琴、祐也君とは上手くいっているのか?」

 どの口、開いて聞いているのよ。ばか親父が。


「うん、上手くいっているよ」

「そう、良かったわね」


 一時期とても辛そうな顔をしていたけど、最近はとても明るい。十月からは祐也君と同じ塾に行くと言っている。

バイトしていたおかげで塾代は自分で出したようだし。上手く行くといいんだけど。



 私は、お昼を両親と食べた後、渋山に出かけた。電車で行っても十五分も掛からない。


 最初、西急ストリームに行って、その後、すぐ隣にある西急スクランブルに行った。素敵なコーデが一杯だけど、とても手が出るとかってレベルじゃない。


 そして、今度は昔渋山のファッションの発信地で、今は新しく建て直された有名なビルに行った。ここも素敵なコーデが一杯だけど、私の感覚では値札の〇が一つ多い。とても手が出ない。



 もう午後三時半。そろそろ家に戻ろうとしてビルの外に出た時、

「友坂さん」

 

 えっ、と思って後ろを振り向くと近藤さんが立っていた。一人の様だ。

「近藤さん?」

「はい、今そこのミニシアターで映画を見終わった所で友坂さんを見かけたので、悪いかなと思ったんですけど、声を掛けました」

「そうですか」


 突然の事だったのでそう答えるしかなかった。

「あの、もし少しでも時間有ったら話出来ませんか?」

「済みません。もう家に帰らないといけないので」

「でもまだ午後三時半だし」

「時間は関係無いです。失礼します」

「じゃあ、駅まで」


 私も駅に行く。面倒だけど仕方ない。近藤さんを無視して歩いていると

「美琴さん」


 はぁ、今度は誰?声の方を振り向くと絶対に見たくない疫病神が女を連れていた。汚らわしい。私は、何も言わずに急いで駅に向おうとした時、


「真司、どうしたの?あんなブスなんかに声を掛けたら、喉が汚れるよ」

「なんだと、友坂さんになんて事言うんだ」

「あんた誰よ。他人は口挟むな」

「陽子、止めろ。美琴さん、済みません。声を掛けてしまって。新しい彼ですか?」


 新しい彼?何その言い方。私はそこで我慢の限界が来た。


「うるさい!疫病神。口を利くんじゃないわよ。汚らわしい。近寄るな」

「「「えっ?!」」」


 大きな声で言った所為か、周りの人も驚いているけどそんなこと知った事では無い。三人を無視して駅に向おうとすると


「ふざけんじゃないわよ」


 真司の隣に居た女がいきなり私の前に来て挙げた手を私の顔に振り下ろそうとした時、


 ガシッ!


「友坂さんになんて事するんだ」


 近藤さんが女の手を掴んで、私が殴られるのを止めた。

「あんたには関係ないでしょ」

「この人はバイト仲間だ。守るのが当たり前だろう」

「バイト?ふん、汚らわしい。真司、行こう。こんな奴らに構っていると私達も汚れるわ」


パーン!


「し、真司何するの?」

 真司が女の顔を平手で殴った。


「働く事が汚らわしいだと!陽子、お前とはもう終わりだ。バイトをして何が悪い。金ばかり貪る女にもう用はない」


 あれ、真司が勝手に離れて行く。それをさっき頬を殴られた女が追いかけている。なんだこの状況は?


 私が呆れていると

「友坂さん、大丈夫でしたか?それにあの人達は何ですか。友坂さんを名前呼びするし」

「どうでもいいです。もう関係ない人達ですから」

「そうですか」

「それより、先程はありがとうございました」

「いえ、同じバイト仲間です。守るのが当たり前です」


 私は、そのまま駅まで歩いて行った。横には近藤さんがいる。何を話すでもない。そのまま改札で軽くお辞儀だけすると中に入った。

 近藤さんも改札の中に入って来た。同じ方向の様だけど、私は少し離れた車両に乗った。


 

 家に着いて自分の部屋に行くとベッドに座りながら

 参ったなぁ、偶に渋山に出かければ、あんな事が起きる。もうあそこに行くの止めようかな。

 でも近藤さんには助かった。あんな女に殴られたら頭に血が上って何するか。そう言う意味では、来週というか後四日で終わるけどバイトに行ったら思う一度御礼を言っておこう。


 

 次の日、私は午前八時には祐也の家に行った。いつもの様にお母さんに挨拶してから彼の部屋に入り洋服を脱ぐと彼のベッドの中に滑り込んだ。


 嬉しい、祐也の温もり、祐也の匂い。やっぱり私はこの人がいい。誰にも渡したくない。また少し眠ってしまった。


 私の髪の毛がゆっくりと撫でられている。目を開けると

「おはよう美琴」

「おはよう祐也」


 祐也は私の背中に手を回してもブラは外してくれない。だから自分で外して思い切り祐也に抱きついた。

 でも祐也は背中や頭を撫でるだけだ。私の体魅力なくなったのかな?


「祐也、私、もう魅力ないの?」

「何だ、いきなり。美琴に魅力ない訳無いだろう。言いたい事は分かっているけど…。今はしてはいけない時期だよ」

「でも、もし藤原さんを選んだら、もうずっと抱いてくれないんでしょう?」

「そ、それは仕方ない事だ」

「祐也、嫌だよ。そんな事。私はずっと祐也と一緒に居たい。裕也に抱かれていたい。お願いだから…」

「美琴、俺だってしたいよ。こうしてお前から体をくっ付けられていると厳しいけど、我慢するしかないんだ」

「祐也…」


 私は、もう一度祐也に体を思い切りくっ付けた。裕也のあれが元気だって分かるけどそこまで我慢するなんて。そんなに我慢しないといけない事なの?私も厳しいよ。


 この日も結局いつもと同じように午前九時頃に起きて、祐也と一緒に朝ご飯を食べて勉強した。

 祐也と一緒に居れるのは嬉しいけど…苦しい。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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