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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
②総合病院ダンジョン編
37/322

【第十八話(1)】 500円の覚悟(前編)

[informaiton

ライトが 配信メンバーに参加しました。情報が新規作成されます。]

[information

noise:スパチャブースト”青”を獲得しました。

青:影移動]

[information

ライト:スパチャブースト”青”を獲得しました。

青:リロード]

配信を開始した途端、早速コメント欄にシステムメッセージが表示された。次から次に通知が流れ込み、勇者一行は一つ一つその内容を確認する。

「スパチャブースト、というのはセイレイの使っていたスキルのことだな?」

『はい。同義のものであれば、恐らくスパチャ総支援額から消費して使用することの出来るスキルだと思います』

noiseの質問に、ホズミは淡々と答える。しかし、どこかライトは気になる様子があるようで顎に手を当てた。

「しかし、ですが。セイレイ君の使っていたスキルは支援額のうち500円で使えていましたね。あまりにもスキルを使うにしては、安くないですか?」

「確かに……」

ライトの質問は最もだった。魔災以降、収入を得ることが不可能となり、今持っている通帳残高で支援を行っていくというシステム上支援に限りがあるのは理解できる。

しかし、それでも明らかに人の理を超えたスキルだ。あまりにも、使う額が少なすぎる事がライトの頭の中から離れなかった。


彼の質問に答えたのは、コメント欄だ。

[あ、新しい人居るじゃん。こんにちは、ライトさん]

[来ました。よろしくお願いしますー]

[初見です。頑張ってください]

[確か、今回はアクションカードは使わないんだったな。戦闘時の報告方法は変わらずだったよな?]

[↑あってる。残数カウントも随時な]

[わかった。]

[あ、ライトさん。で良いのかな?スパチャブースト発動に使う額が少ないのは気になるよな。俺も同じ事思った]

次から次に流れるコメント欄の中、ライトの質問に触れた者がいた。ライトは深々とドローンに頭を下げる。

「これは、これは。コメント欄の皆様。初めまして、私はライトと名乗らせていただいているものです。若輩者ですが、何卒よろしくお願いします」

[固いな。よろしくお願いします]

[あー、調子狂うな……]

[noiseといい、ライトさんといい。二人とも服がぴちっとしてるから社長のご子息を守るSPみたい]

[↑なんかわかる]

[とりあえず話させて??俺さ前回スパチャ送ったんだけど、どうやら連続してスパチャ送れないんだよね]

そのコメントの文面に、ライトは不思議そうに腕を組む。

「連続して送ることが出来ない、ですか?」

[そう。んで送れるスパチャも青スパしか無理。これがさ、上限なんだよ 1000円]

実例を見せるように、そのコメント主はスパチャを送る。青いコメントフレームに覆われた文面が、コメントログに流れた。

ライトは深々と再び頭を下げる。

「すぱちゃ、ですね。ありがとうございます」

[俺はお前らを応援してるからさ、死んで欲しくないのよ。でも一回の配信で一回きりしか送れないみたいなんだよね]

この視点は、実際に配信している者達では到底理解し得なかった情報だった。ドローンのスピーカーからホズミがキーボードを叩く音が響く。

『かなり有益な話、ありがとうございます。つまり、一度の配信で使えるスパチャブーストの数には限りがある。そう考えて良さそうです』

[そういうこと。頼んだよ皆。安全にダンジョン配信するなら一度に突き進むんじゃ無くて、何回かに配信を分けるのも手って話だ]

[今の総支援額は4000円か。単純計算で言えば8回スキルを使えるんだな]

[全部同じ使用額だったらね]

[まあそうだな]

スパチャブーストの話については、ひとまず有益な情報を得たホズミ。だが、彼女にはまだ触れておきたい話があった。

『noiseさんとライトさんにも新たにスキルが追加されました。noiseさんは影移動、ライトさんはリロードですね』

その言葉にnoiseは腕を組んで考え込むように俯いた。指でリズムを刻むように叩きながら、自身の考えを述べる。

「ライトのスキルは文面通りだろうさ。私のスキルは実際に使わないと分からないが……」

「そうですね。配信参加が初めてなのでご指導よろしくお願い致します」

ライトは真っ直ぐnoiseの目を見て、そう言う。彼女はこくりと頷き、確認をするように短剣の鞘を撫でる。

「ああ、任せておけ。セイレイも、覚悟は良いか」

暗闇の奥に見える病院の景色を目をこらして見ていたセイレイは振り返った。

「ああ、うん。大丈夫だよ。ただ、病院ってこんなに広いんだなーって思ってさ」

彼の隣に並ぶように、勇者一行は同じ方向を見上げる。

まるで、それは病院と言うよりもショッピングモールのようだ。病院の待合室は、天井まで突き抜けるほどの高さまで吹き抜けになっている。

検査室や病棟へと続くラインが引かれており、視覚的にわかりやすいように色分けされている。だが、それも管理するものが居なくなり、魔物の巣窟と化した今はビニール材がめくれあがり、今や正確な場所を示すことが不可能となっていた。

noiseとライトは、複雑そうな表情でその病院の総合受付から見える景色を眺める。

「なあ、ライト。これは……」

「……はい。私はここで勤務をしていましたが、見るも無惨な姿となってしまいましたね」

[ライトさんの勤務先だったのか……]

[自分の勤務先が魔物の巣窟になるってどんな感情なんだろう]

[辛いよな。自分の住んでいたところなのに他人にその場所を奪われるって]

ダンジョンから見える景色を見ているライトの手に思わず力が入る。こみ上げた怒りを堪えることが出来ていない様子だ。

『ライトさん。冷静さを欠いた判断は思考を鈍らせます。貴方が言ったことです。まずは事実を捉えましょう』

彼女の言葉に気づかされたライト。ハッと気づいた様子で、視線を真っ直ぐに戻す。

「そうですね。失礼しました。見える範囲には魔物はいませんが、ホズミさんはどう思いますか?」

『少しお待ちください……サポートスキル”熱源探知”』

彼女はそう宣告(コール)する。前回のダンジョン攻略の際、追憶のホログラムを融合させて得たスキルだ。

徐々に配信画面内に、ターゲットマークが表示される。勇者一行を緑色のそれが囲う。

だが、辛うじて明かりが入り込む[受付]と書かれた部屋の奥からは赤色のターゲットマークが複数映っているのが見えた。

[受付のところに魔物がいると睨んで良いよな]

[これは長丁場の戦いになりそうだな……]

[ただ、明かりが無いんだよな。災害に備えて各部署で懐中電灯は配置されているだろうし、受付にもあるんじゃないか?]

[じゃあ行くしかないよな]

[12体だな。すげー見やすくなった]

『皆さんの仰る通りです。まずは明かりを確保することが必要となります。皆さん、準備が出来たらお声がけください。受付奥、撃破対象数12です』

コメント欄に返事をしつつ、ホズミは勇者一向に再確認する。

勇者一行は、受付のカウンターへと歩みを進めつつ、各々戦闘準備に取りかかった。

セイレイは右手に力を込める。すると、徐々に光が彼の手に集まっていく。

「さあ、出番だよ」

優しく語りかけるようにセイレイは柔らかく微笑んだ。

目映く輝く光の粒子は、徐々に剣の形を作る。やがて光は収束し、いつしか彼の手にはファルシオンが握られていた。

その動きに合わせるようにnoiseは短剣を取り出す。そして、ゆるりと隙の無い体勢で身構えた。

ライトは拳銃をホルスターから取り出し、マガジンが装填されていることを確認する。

「じゃあ、タイミングを合わせていくぞ」

勇者一行は受付奥の[医事科]と書かれたドア前に立つ。ドアノブに手を掛け、彼は確認するように振り返った。

二人は示し合わせたようにこくりと頷いた。

セイレイは指でカウントダウンをするように、等間隔でドアノブを叩く。

「3、2、1……」

そこで大きく深呼吸し、セイレイは思いっきりドアノブを捻り、押し込んだ。

「行くぞみんなっ!」

彼等は一同に飛び出す。

微かに反射光が入り込んだ、薄暗い室内。デスクの上にはボロボロの紙切れとなった資料が散乱している事務所。

ドアの奥には、驚いた様子で振り向くコボルト達がいた。狼の頭部を持ち、土色の毛皮で覆われた人型の魔物が一同に勇者一行へと視線を投げた。

未だ戦闘態勢に取りかかることの出来ない魔物へと、先陣を切るnoiseが喉元に突き立てるは己の短剣。

あっと言う間に灰燼へと姿を変えるコボルトには目もくれず、彼女は次から次に魔物へと斬り掛かる。まるで木々に飛び移るように、次から次に飛び掛かるnoise。瞬く間にコボルトは灰燼へと姿を変えていく。

[さすがnoise]

[戦闘技術で言えばダントツだよな]

[鮮やかと言うか何というか]


だが徐々に奥に進むにつれて、魔物は徐々に彼女を囲い始めた。

ゆっくりと魔物達は様子を窺うように、慎重に距離を詰めていく。

[noise危ない。フォローを頼んだ]

[撃破数:4]

『セイレイっ!!!!』

ホズミが叫ぶのと同時に、セイレイは剣を正面に構えてアタリを取る。彼の視線の先にあるのは、noiseを狙うべく固まっているコボルト達。

ぐっと足を踏み込みながら、彼は大きな声で宣告(コール)する。


「スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

そのコメントログが流れると共に、セイレイは淡く、青い光が纏った足で駆け出した。

大地を巻き上げるように土煙が高く登り、まるでで爆発でも起きたかのような衝撃波がその空間を取り巻く。

閃光の如き一閃が、コボルト達を貫いた。


To Be Continued……

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