【第九章】終幕
「ディル先輩!ディル先輩!」
私は突如として巻き起こった世界の変化に対し、慌ててオフィスのソファで眠っているディルを叩き起こそうとした。
だが、彼は煩わしそうに寝返りを打つのみで、私の話など聞いちゃいない。
「んん……まだ昼寝時間……あと10分だよ……」
「言ってる場合ですか!?空!!空、見てくださいっ!!」
「ふぁあ……なに?一体何さ……」
明らかに不機嫌そうな声を上げながら、ディルはゆっくりと身体を起こす。それからブラインドをずらし、赤黒く濁った空を見た途端。
「……なにこれ?」
ディルの表情に、困惑が滲む。
これに関しては伝えていなかった私も悪いのだが、慌ててパソコンの画面に映し出された先輩の配信画面を見せつける。
「先輩の配信見てくださいっ!」
「え、セイレイ君今日配信なの!?教えてよ!?」
「ごめんなさい言うの忘れてました!それよりもこれ、これ!」
今は説教を食らっている場合ではない。私は慌てて配信画面に映る魔王の姿をバシバシと叩く。
「魔王!魔王が出たんですよ!魔王セージ!」
「言われなくても分かってるよ!?アランちゃんも落ち着いてよ」
あまりにも私が慌てた反応をするものだから、かえって冷静になったのだろう。ディルは苦笑いを浮かべて私を窘める。
「う、すみません」
「こういう時こそ冷静に、ね。ってことは、セイレイ君……四天王全員に勝ったんだね」
ディルはどこか感慨深そうに、うんうんと頷いていた。
それから、パソコンの上に放置していたスマートフォンの端末を操作し始める。
それは、私のパパで、なおかつ四天王——荒川 東二の遺品であるスマートフォンだ。
「ねえ、アランちゃん。このスマホ、使ってもいいかい?」
「え、なんですか。それ、必要ですか?」
「必要になるかもしれない。ボク達も、身支度をしておいた方が良いかもね」
一体、彼は何を言っているのだろうか。
話について行くことが全く出来ない。
しかしディルはそんな私を無視してスマートフォンの画面をじっと見つめていた。
「荒川 東二。キミが遺したものを……存分に使わせてもらうよ。キミの想い、無駄にはしない」
「……ディル先輩?」
私が呼びかけると、ディルはハッとした様子で取り繕うような笑みを浮かべた。
「あ、ごめん。アランちゃんも配信に備えた方が良いかもね」
「え?もうこの周辺には魔物が出ないように設計してますが……」
さっきから、ディルは一人で何の話をしているのだろう。
「ボク達だって、勇者一行の一人なんだ。誰一人欠けても、配信は成立しない」
「……?」
「待っていてね。魔王セージ……いや、千戸 誠司。言ったよ。ボクは……死とは”二度と元に戻らないこと”だって……その意味、理解しているよね?」
To Be Continued……




