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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
278/322

【第百三十四話】賑やかな時間

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・船出 道音(漆黒のドローン)

「くっ、こ、殺せっ」

「ダメ―っ、感情が乗ってない!ほら、もっと!」

「くっ、殺せー!」

「分かってないなあ、高いプライドを捨てきれず、それでいて恥辱に塗れた雰囲気を出して!」

「くっ、殺せ……っ」

「良いねーっ!最高、予想通り有紀ちゃん似合うなあこういうの」


「……何やってんだこいつら」

 一体何を見させられているのか。

 秋狐の前で正座するのは囚人服を着せられたnoise。どういう訳か、noiseは秋狐から謎の特訓……?を受けていた。

 noiseの隣で同じくちょこんと正座する雨天は、軽蔑の滲んだ目で秋狐を見上げる。

「あの、秋狐ちゃん。馬鹿やってないで早く先に進みません……?」

 ため息交じりの言葉を受けてなお、秋狐は楽しげな笑いを崩さなかった。

「ノンノン、雨天ちゃんも覚えておいた方が良いよ?プライドの高い人が屈辱に塗れる姿が一番面白いんだからっ」

「性格悪いです」

「雨天ちゃんに言われたくないけどねっ」

 それから、秋狐は傍らに置いたワゴンから、稲荷寿司の乗った皿を取り出した。

「さ、まずは雨天ちゃんからだよ。散々私を弄んだ罰も兼ねて、ね」

 恨みの籠った声音に、雨天は引きつった笑みを漏らす。

「うげー……嫌です……」

 

 そこで、秋狐が持った皿を見て「あれ?」と疑問の声を漏らす。

「あれ、そう言えば今回は空莉君じゃないんですね?」

「ん?うん、空莉君は次のお題の準備中だよ」

「次の準備って何してるんです?」

「……話逸らそうとしても駄目だよ」

「えへ」

 空莉の話題を散々引っ張ろうとしたのを秋狐に見透かされ、雨天はペロリと舌を出した。

「……はあ、仕方ないです。行きますね」

 それから明らかに気分の沈んだ表情で、ひょいと稲荷寿司を口に運ぶ。

「もう少し躊躇って欲しいなあ」


「……ん、んぐ。あ、美味しいです」

 雨天は、何のリアクションも見せることなくきょとんとした表情を作った。

「え?」

 そんなはずはない、と言った様子で秋狐は困惑の声を漏らす。

「……辛くない?」

「行けますよ、普通の稲荷寿司ですっ。秋狐ちゃんも食べたらどうですかっ」

「……ちょっと確認するね」

 まじまじと雨天を見つめていたが、そこに偽りを感じ取ることが出来なかったのだろう。秋狐は皿に残った稲荷寿司を口に運ぶ。


 ——だが。

「ふっ、ごふぁっ?!ふぇ!ふぁ!ふぁあああああ!?」

 もはや言葉で表現するのが難しい悲鳴を漏らしながら、突如としてワゴンに手をかけて蹲る。

 そのあられもないリアクションを繰り広げる秋狐に対し、雨天は声を上げて笑い始めた。

「ぷぷっ、あはははははっ!最高ですっ、秋狐ちゃん!」

「っ、これも演技……!?」

「辛いですよっ、舌の奥がヒリヒリしますもんっ」

 悶え苦しむ秋狐の姿がよほど面白かったのだろう。雨天は「べーっ」と自身の舌を見せつけながら、秋狐をからかい続ける。

「やー、良いもの見れましたっ。バレたらバレたで有効活用できますね、これ」

「雨天ちゃんは絶対敵に回せない、ね……これ……いたぁ……」

「あ、飲み物あるじゃないですか。それ飲んだらどうですか」

 雨天はわざとらしく、ワゴンの上に置かれたコップを指差しながら楽しげに笑う。

 ——恐らく、その飲み物の正体も分かった上でだろう。

「……い、いやぁ……私は良いかなぁ……」

「そうですか?残念です」


 俺は、傍らで彼女達の姿を配信し続ける漆黒のドローン——道音に声を掛ける。

「なあ、道音。お前。いつかの時さ、雨天のこと……四天王最弱とか言ってなかったか?」

『……言ったね』

「俺らの中で一番やばいだろ、あいつ」

『……』

 道音は気まずくなったのか、ふわりと空を泳いで俺の傍から離れた。


 そんなリアクションを繰り広げる中で、徐々に表情が固まっていくのは。

「……ねえ、もうやめにしよう?良いことないよ、放送事故だよ」

 noiseは、カチカチに引きつった表情筋を無理矢理動かして笑顔を作る。

 だが、秋狐はワゴンに体重を預けながら、よたよたと身体を起こした。

「さ、させない……っ、私は、この役目を果たすまで……っ」

「そのシーンだけ切り取ったらカッコいいんだけどね……」

 ちらりと雨天の方を見てから、noiseは覚悟を決めたように頷く。

「さあ、盗賊noise!今ここに散るっ」

「散っちゃダメじゃないかな」

 潔い前向上と共に、noiseは稲荷寿司を口に放り込んだ。

 ——一瞬、何故かホズミへと視線を向けた気がするが。


「——っ、くっ!?秋城ッ、お前……、これはやりすぎだぞ!?」

「男が出てる」

 男性の口調となり、恨めがましくnoiseは秋狐を睨む。

「くっ、クソッ!痛えっ、だが……」

 口を懸命に抑えながら、何故かnoiseは皿に残った最後の稲荷寿司を手に取った。

「まだ食べるの!?」

「っ、スパチャブースト”青”!」

[noise:影移動]

 突如として、noiseは宣告(コール)を発する。

 訳も分からずに始まった彼女の奇行に、秋狐のみならず全員が目を丸くした。


「おい、noise何してんだ!?」

 俺は訳も分からずに叫ぶが、既にスキルは発動した後だ。

 影の中に潜り込むようにして、配信画面から消えるnoise。地中に消えたnoiseの影が、檻を潜り抜ける。

 次に彼女の姿が現れた先は、ホズミの背後だった。

「ホズミちゃんも、道連れだっ!」

「えっ」

 呆けているホズミ目掛けて、noiseは稲荷寿司を口の中に突っ込んだ。

「むぐっ」

 ホズミの表情が、ぴたりと硬直。

 それから、彼女の瞳が涙に潤み出す。

「……っ、うっ……?!」

 口元を抑え、懸命に手をばたつかせ始めた。それから、右手に杖を顕現させ、背後に立つnoise目掛けてその杖を振るう。

「むー!んぐ、むっ!」

「あははっ、これで皆等しく罰ゲームだっ」

「むー!!」

 ホズミは涙目となり、懸命にnoise目掛けて杖を振り回す。だが、noiseはけらけらと笑いながら、ひょいと幾度となく襲い掛かる攻撃を躱し続ける。


 やがて、疲れ果てたのだろう。ホズミはげんなりとした様子で項垂れ、恨みの籠った視線だけをnoiseに向けていた。

「私……お題クリアしたのに……」

「あははっ、飄々としたホズミちゃんのリアクションが見れて満足だよっ」

「悪趣味……」

 最後に小さくため息をついてから、そして体勢を立て直す。


 俺達は改めて、秋狐に視線を向けた。彼女も彼女で頬を撫でながら、困ったように笑う。

「あはは、本当に無茶苦茶なことするのが好きだね、皆……」

「私は何もしてないんだけど」

 疲弊した表情でホズミはぽつりと呟く。秋狐はホズミに苦笑いを向けた後、指をパチンと鳴らした。


「おっ」

「わあっ」

 すると、徐々にnoiseと雨天の服装が囚人服のそれから元に戻る。同時に、彼女達——というかnoiseは脱獄した為に雨天だけだが——を囲っていた檻が消えた。

「あっ、やっと出れました」

 雨天はぴょこっと俺達の元に戻る。

 それから、秋狐はエレベーターの方へと視線を送った。

「さ、次が最後のお題だよ。屋上駐車場へ行くよーっ!おー!」

 空高く腕を伸ばし、秋狐は俺達を導く。


「……最後、かあ」

 noiseはどこか寂しそうにぽつりと呟いた。

「私も、もうちょっとこの配信続けたいです。こんなに皆でワイワイした配信、初めてでしたし」

 雨天も名残惜しそうに、ショッピングモールを見渡す。

「楽しい時間も、いつか終わっちゃうもんね」

 ホズミは腰に手を当てて、静かにため息を吐く。


「また、全てが終わったらやろうぜ。いつでも出来るだろ」

 俺は、最後にそう無責任な言葉を吐いた。

 全ての配信が終わると同時に、俺がこの世界に留まっている保証など……どこにも無いのに。

『うん、全部終わってから、またやろう?いつだって出来るよ』

 道音も恐らく俺の言葉の意味を理解していないだろう。俺の無責任な言葉に同意しながら、そう返事した。


 そろそろ必要になりそうな気がして、総支援額に視線を送る。

 残り支援額は、96500円だった。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:スタイルチェンジ

緑:???

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