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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
276/322

【第百三十三話(2)】仲違い(中編)

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・船出 道音(漆黒のドローン)

「私こういうのは得意だから、任せて欲しい」

 noiseはドヤ顔で、声高々にそう言い放った。

 発言自体は頼もしく見えるのだが、何だろうか。不安が滲み出る。

 知識と戦闘技術以外は絶望的なのはとっくに理解しているだけに、正直任せられる気がしない。

「ふふ……じゃあ有紀ちゃんにまずはやってもらおうかな、と言いたいけどその前にルール説明ねっ」

 秋狐は既に隠しきれない笑みを堪えつつ、モニターの前にふわりと移動する。

 ちょうど、彼女が移動した位置はモニターの中央付近。彼女を中心として、モニターに表示されたラインが伸びる形となった。

「まず、そこに半透明のバーがあるの見えるかな。それが判定バーね」

「うん、これね」

 noiseは秋狐の説明に沿って、モニター上の判定バーを叩く。

「そっ!私が曲に沿って魔法を打つから、皆さんは判定バーが重なったタイミングで攻撃を打ち返してくださいっ」

「……あれみたいだね。ほら、あれ。ビートセイ……」

「名前を出さないで!?」

 何を言おうとしたのか分からないが、秋狐は慌ててnoiseの発言を止める。

 恐らく、魔災以前の世界には秋狐の企画に似たゲームがあったのだろう。あえてツッコまない方が良いのかもしれない。


 秋狐は流れを切り替えるように、ひとつ咳払いをする。それから息を整えて、noiseへとびしっと指差した。

「じゃあ、有紀ちゃんこと盗賊noiseちゃんに一番手をやってもらおうかな!ミスを重ねてお稲荷ポイントが消滅したら罰ゲームだからねっ」

「ふっ、上等じゃん。任せてよ」

 noiseは不敵な笑みを浮かべて、腰に携えた金色の短剣を引き抜いた。

 続いて、静かに秋狐を睨むように立つ。


 その時、突然隣に立っていたホズミは、苦笑いを浮かべながら俺に小声で耳打ちした。

「有紀さんは参考にしない方が良いよ」

「は?」

 唐突にそんなことを言われるものだから、呆けた反応を返すしかできなかった。

 だが、俺のリアクションを期待していたわけではないのだろう。ホズミはそれ以上話を続けることなく元の位置へと戻る。

(……何なんだ、一体)

 洗練された立ち姿。隙のない構え。

 特に参考にならないところはないはずだが。


[姐さん期待してるぜ]

[相変わらずカッコイイ]

[期待してる!]

 盗賊noiseとして、あまたの戦闘を共に乗り越えてきた彼女に人々は期待を寄せる。


 その期待は、ゲームが始まった瞬間にいとも容易く瓦解した。

[ひどい]

[戦闘面以外駄目じゃねえか]

[カッコ悪い]


「あれっ、あれ!?判定バグってない!?ねえ、ちゃんと斬ってるよ私!?」

 noiseは不満たらたらに愚痴をこぼしながら、次から次に曲に沿って放たれる秋狐の魔法へと斬りかかる。

 だが、「miss」の表記と共にいくつもの魔法がnoiseの短剣をすり抜け、彼女に直撃。

「秋狐ちゃん!?ちょっと待ってっ、ねえ、お願い!?」

「ら~♪らら~♪」

 懸命にnoiseはクレームを届けるが、当然曲を歌い続ける秋狐には届かない。


 ——failed.


 そして、あっけなくnoiseはお稲荷ポイントを全損し、あえなく脱落となった。

「……こんなの、ない。何かの間違いだよ?」

 だがnoiseは不服なようだ。

「ごめん知ってた。有紀ちゃん音痴だし、リズム感皆無だし」

「も、もう1回!さっきのは判定がバグってただけだし!?私悪くないし!」

「大人げないよ……バグってるかどうかは穂澄ちゃんに確かめてもらおうかな」

 勇者一行の中で最も最年長である27歳の盗賊noiseはみっともなく秋狐に食って掛かる。

 だが、彼女は困ったように愛想笑いを浮かべた後、次のチャレンジャーとしてホズミを指名した。

「私?別に良いけど……」

 指名されたホズミは、自分を指差して首を傾げる。

 小さくため息を吐いた後、右手に赤色の杖を顕現させた。それから、自然体の立ち姿となり迎撃の構えを取る。


 ホズミもnoiseほどではないが、相応に戦闘経験を重ねてきた。

 だが、音感に関しては幼馴染の俺でさえも分からない。

「別に、音に合わせて弾くだけでしょ?」

「そ、音に合わせて弾くだけ。ね、()()()()()

 厭味ったらしく、秋狐はニヤニヤとした笑みを浮かべてnoiseに視線を向けた。脱落者のnoiseは納得がいかないようで不貞腐れたようにむくれている。

「納得がいかない……この私が……」


「一ノ瀬さんって戦闘面以外ほんと酷いですね。料理もそうでしたけど……」

 さすがの雨天は幻滅したようで、氷のように冷め切った目でぽつりと呟く。

『言ってあげないで。男性の時からあんな感じだから』

 道音もフォローのつもりかそう言葉を重ねるが、俺からすれば追い打ちにしか聞こえない。

 そして案の定、元四天王2人の会話が聞こえたnoiseは落ち込んだようだ。

「……私だって頑張ってるし。勇者一行に貢献してるし」

 ブツブツと文句をたれながら、体育座りとなっていじけてしまった。

 今回の配信で、俺達は違う意味でダメージを負っている気がする。


 ----


「やっ、たっ!合わせるのは、簡単だけどっ……!」

 ホズミは秋狐の歌に合わせて、テンポよく流れる魔法を切り払う。弾かれた魔法は、皆光の粒子となりモニター上に消えていく。

()()()()()()()()()()

 何気なく聞こえたホズミの言葉に、noiseは目くじらを立てる。嫉妬にも似た表情を浮かべながら、恨めしそうにホズミの姿を眺めていた。

 どうやら、ホズミは音感に優れているようだ。次から次に流れる魔法を弾いては、素早く態勢を立て直す。

 だが、やがて異なる問題がホズミに襲い掛かった。

 

「……っ、はっ……」

 徐々にホズミの息が切れ始めた。魔法使いである彼女の表情に見える色は、疲弊のそれだ。

 それから、逡巡するように視線を左右させる。

「……スパチャブー……いや、ダメか……」

 などと何度も葛藤が滲む呟きが聞こえる。おい。さすがにインチキ禁止って言われている以上はダメだろ。

 結局スキルに頼るのはダメだと判断したのだろう。ホズミは首を横に振り、杖を握り直した。

「ここがラスサビだから、ここを乗り切ればっ、終わりだっ!」

 秋狐の熱心なファンでもあるホズミは、さすがというべきか秋狐の曲を熟知しているようだ。最後の力を振り絞って、秋狐がラストスパートをかけるように放った魔法の数々を払いのけた。

「やっ!」

 最後に甲高い声で魔法を弾き飛ばす。

 

 ——perfect.


 モニター上にでかでかと表示されたメッセージを見たホズミは、完全に限界が来たようで大きく大の字になって倒れ込んだ。

「っはぁ……もう、無理……」

「ぶーっ、つまんない……」

 お題をクリアされた秋狐は、わざとらしく頬を膨らませる。だが、どういう訳か目元は嬉しそうに笑っていた。

「でも穂澄ちゃんはさすがだね、どこかの盗賊さんとは違って!」

 話に触れられたnoiseはびくりと肩を震わせていた。

「秋狐さんのファンとして、示しがつかない、でしょ……」

 ホズミは息も絶え絶えになりながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

 それから息を整え直し、ゆっくりと身体を起こした。

「じゃ、次は雨天ちゃんかな……結果見えてるけど」

「……どっちのです?」

 雨天はじっと低い声で言葉を返しながら、静かに右手に槍を顕現させる。

 ホズミはちらりと苦笑いを向けた後、這いずるような動きでモニター前から離れた。

「次は雨天ちゃんか、期待してるよ?」

「青のドローン、雨天 水萌!こんなところで決して負けませんっ!」

「おっ、言うじゃん」

 槍先を秋狐へと向けて、彼女は声高々に宣言した。

 だが、ホズミだけではなく俺にとっても結果は見えていた。


「……ぜえ、はっ、ひぃ……」

 久々に体力が底を尽きて、限界を迎えた雨天を見た気がする。

 引きつった笑みで何度も首を横に振りながら、疲弊した身体で懸命に槍を振るう。

「や、やですっ……いや、です……」

 わかる、わかるぞその気持ち。

 罰ゲームを拒むように悲鳴を漏らしながら、よたよたと身体を動かす。

 周囲を見渡せば、背後では空莉がげんなりとした様子でスタンバイしていた。

「……僕だっていやだよ。また雨天ちゃん泣くじゃん」

 空莉も、空莉で乗り気じゃない様子だった。


「……ごめんね、雨天ちゃん。脱落です」

「ひぃ……」

 体力が底を尽きた雨天は、ぺたりと座り込んで力なく俯いた。

 それから、肩を震わせて嗚咽を漏らし始める。

「……うぅ、うっ……」

 配信中という事も忘れ、彼女は声を上げて泣き出した。俯いた彼女の顎を伝う涙が、照明に反射してきらりと光る。

「……うぐ」

 その悲痛に満ちた表情に秋狐も思わずたじろぎ「あー……」と視線をあちらこちらに向けだした。

 さすがにこうも泣きじゃくられては放送事故も良いところなのだろう。


 しばらく葛藤したのち、秋狐は「よし」と頷いた。

「さすがに雨天ちゃんが可哀想なので、雨天ちゃんは罰ゲーム免除です!」

 その言葉を聞いたnoiseは「えっズルい」と不満を漏らす。

 雨天はぐしゃぐしゃにした顔を上げて、秋狐に問いかける。

「……ほん、と、ですか……?」

「ほんと、ほんと!雨天ちゃん頑張ったもん!」

「……」

 それから、雨天はゆっくりと立ち上がった。

 ゆっくりと、右腕を持ち上げて——。


「やったー!!罰ゲーム免除ですっ!!」

 高く右腕を突き上げ、ガッツポーズ。

「……ちょっと?雨天ちゃん?」

「あっ」

 秋狐にその様子を咎められ、雨天は引きつった笑みを浮かべて硬直した。

「……えへ」

「雨天ちゃん、やっぱり罰ゲームありで」

 今までの流れが全て演技だったと理解した秋狐は、静かに怒りを滲ませた声音でそう宣言した。

「えーっ、そんなあ!?」

 雨天は不満たらたらと言った様子だったが仕方ない。

「……魔性の女過ぎるだろ、お前」

 さすがに自分の容姿さえも武器にしてくるとは思わなかった。

 やっぱお前、魔物使いの称号似合ってるよ。


 To Be Continued……

Beat Saberやったことありますが、凄く疲れますね……。


【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:スタイルチェンジ

緑:???

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