【第百三十話(2)】生きる為の配信(後編)
【配信メンバー】
・勇者セイレイ
・盗賊noise
・魔法使いホズミ
・魔物使い雨天 水萌
【ドローン操作】
・船出 道音(漆黒のドローン)
——翌朝、俺達は秋狐と空莉の待つショッピングモールへと向かう為、船出がかつて管理していた塔出高校へと訪れていた。
俺達を迎え入れるように立ち並ぶ桜並木を潜れば、やがて見えてくるのは岩壁の槍によって貫かれ、変わり果ててしまった校舎の姿。
「……」
そんな魔災による被害状況を如実に伝える光景を一瞥しつつ、俺達は先を進む道音に無言でついて行く。
しかし、沈黙を貫いていた道音は静かに口を開いた。
「……紺ちゃんはさ、重く、沈んだ空気から皆が元気になることを願ってた」
と、そんな話から切り出す。
「だから、あいつはずっと前からLive配信を歌っていたんだな」
「そう。想いを歌に乗せて、皆に届ければ幸せになれるはずなんだって信じてやまなかったから」
そこで船出は言葉を切り、ちらりとグラウンドへと視線を送る。
かつて学生達が部活動や授業の為に用いたであろうその砂地は、今や魔災の被害者を弔う墓場として活用されていた。
「……私が紺ちゃんを殺めた後。瀬川 沙羅によって運営権限を与えられた私は、真っ先に紺ちゃんを蘇らせた。データとして保管された、秋城 紺をこの世界に再び呼び戻したんだ」
「データの復元……有紀の彼氏さんと同じか」
鶴山 真水のことだ。
話に触れられた有紀は「彼氏じゃない……けどね」と肩を竦めて笑っていた。
言葉を濁した理由は、最期に両想いなのを最後に伝えられた以上……恋人かそうじゃないのか、本人としても微妙なラインだからだろう。
ちょうど、墓標に視線を送れば「鶴山 真水」と名を刻まれたお手製の墓を通りがかるところだった。
「私、Relive配信の断片から切り取って呼び戻したから、Live配信……そういう意味合いもあるんだよ」
「インターネットの中で生き続ける存在、ってことか」
「そゆこと。世界に希望が戻るまで、懸命に歌を届け続けるのが紺ちゃん……秋狐の役割なの」
「……きっと、秋狐が歌を届け続けた世界は良いものになるな」
そう言葉を返すと、道音は苦笑いを零した。
「だといいけどね」
気づけば、俺達は体育館——と言っても、船の形に大きく削れており原型など留めていないが——に到着した。
道音はそこで、手に持ったスマートフォンを操作し始めた。
「さて、ここから配信を始めるよ。乗った乗った」
俺達は彼女にそう促され、さっさと体育館の中に入り込む。
「……体育館ですよね?ここ」
館内に入り込んだ雨天は、茫然とした表情で問いかける。
「……そのはず、だが」
以前俺達が四天王として道音と激戦を繰り広げた名残などどこへやら。
剣戟に伴って刻まれた傷跡はきれいさっぱりと消え去っており、代わりに船内を彷彿とさせる個室などが配置されている。
本来の体育館としての原型を残しつつ、完全に乗客船の形へと変貌を遂げていた。
答えを求めるように道音に視線を向けると、彼女はくすりと笑みを零した。
「配信者たるもの、見栄えを重視すべき……でしょ?」
「意識が高くてなによりだよ」
やがてSympassの運営アカウントにログインが完了し、配信を開始したようだ。
道音の全身に大きくラグが生み出される。
「さて、と。久々にこの姿になるなあ……ちょっと感覚忘れてるかも』
徐々に彼女のシルエットが、小さく変わっていく。
そして、あっという間にそのシルエットは漆黒のドローンへと変化を遂げた。
『はーい。勇者一行ちゅーもーくっ。視聴者さんは集まってるかな?』
俺達が漆黒のドローンの姿をした道音に視線を向ける。それと同時に、彼女のカメラの前に生み出されたホログラムから、徐々にコメント欄が流れ始めた。
[繋がった]
[間違えて勇者一行のアカウントに行ってた。あぶね]
[↑間に合ってよかったな]
[応援してます 10000円]
[とりあえず支援額増やしとくわ 10000円]
[ナイスパ!じゃあ俺も 10000円]
[今回も頼みます]
[雨天は戦えるの?]
[そこは気になる]
まず、話題の中心は今回が初配信である雨天 水萌に映る。元々はDive配信として、戦っていたのだがその力を瀬川 沙羅によって奪われた。
そんな彼女は改めて配信者に戻るべく、日々鍛錬を重ねてきた。
——今回は、それを証明するという目的もある。
視聴者の不安を感じ取った雨天は、陰りの帯びた笑みを浮かべた。
「……確かに、皆さんが不安な気持ちも分かりますっ。今までDive配信として戦ってきた力を無くしたんですからっ」
それから、静かに雨天は俯く。右腕を水平に伸ばし、手の先に光の粒子を集める。
やがて生み出されたのは、遊び人アランから受け取った一本の槍。
「それでもっ、私は皆と共に戦うことを選ぶんですっ!皆の力を借りて、前に進むんですっ!」
再びカメラに顔を向けた彼女の表情には、覚悟が滲んでいた。
[information
雨天 水萌がスパチャブースト”青”を獲得しました。
青:スタイルチェンジ]
雨天の覚悟の言葉と同時に、システムメッセージが表示される。
『お、スパチャブースト”青”を獲得したねっ。皆に負けないようにがんばろっ』
「はいっ!」
彼女の覚悟を見た道音は、再び黒のワンピースを纏う少女の姿に戻る。改めてくるりと周囲を見渡した後、高らかに手を掲げた。
「じゃ、行こうか。皆を連れていくよっ、レッツゴー!」
[船出:ノアの箱舟]
ゆっくりと、大船の形をした体育館が浮かび上がる。全身がふわりと浮かび上がるような、重力に逆らう感覚を抱く。
「さて、人気配信者の秋狐さんは一体どんな演出を用意しているんだろう」
俺の隣に並び立ったホズミは、どこか心躍るように笑みを零す。秋狐のファンということもあり、やはり期待する想いは抑えられないのだろう。
——だが、今回のメインは秋狐ではないのは承知しているようだ。
途端にホズミは表情が曇ったかと思うと、ぽつりと低い声で呟く。
「……クウリ君は、私達に本心を打ち明けてくれるかな」
「わかんねえ……あいつは、一体どんな思いで生きて来たんだろう」
「……ちゃんと面と向かって、ぶつかり合わないとね」
「だな」
魔災に見舞われて失った日常。それでも、懸命に前を向き、進もうとしてきた俺達。
度重なる配信で何を得て、これから何を得るのか——その集大成を示さなければならないのだろう。
長きにわたる配信が示す答えの先は、そう遠くないのかもしれない。
To Be Continued……
https://youtu.be/TJVCxReb1kY?si=fQ5Klga-p9C_4Z9X
言うの完全に忘れてたんですけど、棒バトランキング2024のpick upにて砂石の棒バトが紹介されました、ぶいっ✌️
良ければ見てくださいね〜!
【開放スキル一覧】
セイレイ
青:五秒間跳躍力倍加
緑:自動回復
黄:雷纏
noise
青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)
緑:金色の盾
黄:光纏
赤:金色の矛
ホズミ
青:煙幕
緑:障壁展開
黄:身体能力強化
赤:形状変化
雨天 水萌
青:スタイルチェンジ
緑:???




