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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
268/322

【第百二十九話(1)】沢山の言葉(前編)

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 庭に敷き詰められた芝生の上を、俺と雨天の駆け抜ける足音が響く。

 雨天は小柄な体で素早く俺の動きを捉える。出会った頃と比べると、見違えるほどに体力がついたものだ。

「とりゃっ!」

 雨天は、精一杯の掛け声とともに、両手で構えた棍を駆使して鋭い突きを繰り出した。

 だが、あまりにも安直な攻撃だ。

「っと」

 彼女と相対する俺は、木刀でその突きを軽くいなす。

 だが、雨天が繰り出した突きはブラフだった。

「……っ、どこに消えたっ!?」

 弾いた棍が芝生の上に転がる。その転がる先に視線を送るが、雨天の姿はどこにも無かった。

 その時、背後——少し下の方から、雨天の声が響く。

「チビというのも、考え方によっては利点ですねっ」

「うわっ!?」

「ていっ」

 雨天はまるで子供の戯れのように、右手で軽く俺の背中を小突く。

 ぽすっ、と布から空気の抜ける情けない音が辺り一面に響いた。

 俺達の戦いを眺めていた穂澄は「やるじゃん」と感心した表情で頷く。……いや、何目線だよ。

「武器に視線を誘導する、ってのは上手いね」

「えへへ」

 穂澄に評価された雨天は、照れくさそうに首根の辺りを掻く。レインコートのフードの、固い布の擦れる音が鳴る。

「この前穂澄ちゃんと戦っている時に気づいたんですよっ。武器に意識が向きやすいのなら、それを逆手に取ると良いんだって」

「なるほど、偉いじゃん」

 そう言って穂澄は優しく雨天を撫でる。

 雨天はむず痒そうにしていたが、しばらくしてからふやけたような笑顔を浮かべていた。


 ただ俺としては、ちょっとだけ納得がいかない。

「……もう1回やるぞっ」

「またですかっ!?」

 雨天はぎょっとした表情で振り返る。

「さっきは油断しただけだ、次は負けない」

「やめなよみっともない」

 いつの間にか背後に回っていた穂澄は、俺の後頭部に鋭いチョップをかます。

「ぶっ!?」

「2回も女の子に背後を取られるようなセイレイ君が一体何を言ってるの」

「い、いや……ここは先輩としての威厳をだな。カッコがつかねえだろ」

「うるさいカッコつけめ」

 はあー、と大きなため息を吐く穂澄。日に日に彼女の辛辣さが増している気がする。

 俺達のやり取りを聞いていた雨天は、突如として「ぷっ」と小さく噴き出した。

「……あははっ、なんだかセイレイ君と穂澄ちゃんって、お父さんとお母さんみたいですっ」

「はっ!?はあっ!?」

 唐突にそんなことを言われるものだから、なんと言葉を返していいか分からずに困惑の声を出すしかなかった。

 雨天は笑いすぎたのか、涙目になった瞼を擦りながら言葉を続ける。

「はー……穂澄ちゃんもセイレイ君のお世話大変ですねっ」

「本当にもう、この馬鹿はいつもすぐ突っ走るからね。私がストッパーにならないとすぐどっか行く」

 穂澄は冷ややかな目でじろりと睨む。

 ……正直、心当たりしかない。

「……すまん」

 何か反論でもしたい気分だったが、返す言葉が思いつかなかった為に大人しく謝るしかなかった。

 雨天はニコニコと嬉しそうな表情を浮かべている。

「でもでもっ、そんなセイレイ君を穂澄ちゃんは好きになったんですねっ。素敵です」

「……まあ、実際に私だってセイレイ君の無茶に救われてるわけだし」

 照れくさそうに穂澄は苦笑を漏らした。

 配信開始当初と比べると、随分と棘が出てきたような気はするが彼女なりの成長した姿なのだろう。

 しかし、そんな常に達観したような視点を持った彼女だからこそ、救われた場面が多いのも事実だ。

「穂澄が居なかったら駄目な場面も多かったしな。お前が幼馴染で本当に良かったよ……安心して背中を任せられる」

「ま、勇者一行の魔法使いとしては当然の務めよね」

 そう言うと共に、穂澄はそっぽを向いてしまう。

 耳が赤くなっているが、あえて気付かないふりをすることにした。

 俺達のやり取りを見ていた雨天は「ほあー」と感嘆とも取れるような声を漏らした。

「2人はいいお父さんとお母さんになれますよっ。本当に……」

 自分の言葉に何か引っかかるものを覚えたのか、雨天の声音が尻すぼみになっていく。

「……っ……お母さん……」

 その言葉の意味を探ろうとするが、俺よりも先に穂澄が気づいたようだ。彼女は優しく雨天を自身の身体に抱き寄せた。

「……お母さんのこと、思い出したんだね」

「覚えて、くれてたんですね」

「うん。雨天ちゃんはお母さんのこと、嫌いだったの?」

 穂澄は極力穏やかな声音で問いかける。だが、雨天はふるふると首を横に振った。

「分かりません……沢山、嫌な言葉を吐かれました。生まれてこなければ、お前なんて、って……でも、分からないんです」

 雨天はぎゅっと穂澄に抱き着いた。

 強く握られた穂澄のワンピースに、大きな(しわ)が作られる。

「今でも、思い出すと胸の奥が辛くなります。息苦しくなる時だってないとは言えません。でも、私にとってのお母さんは、お母さんだけなんです……」

「……雨天は、今はどう思ってるんだ?」

 掘り下げることが酷なのは分かっていたが、問いかけずにはいられなかった。

 雨天はちらりと俺へ顔を向けた後、再び俯きながら言の葉を紡ぐ。

「後悔、なんですかね……お母さんを何で放って逃げたんだろう、助けようともしなかった私は親不幸者かな……でも、愛情を与えられなかったんだから仕方ない、って言い聞かせる自分も居て……」

「……正しさを見つけるって、難しいよな」

 返ってきた言葉には、凄く理解できるものがあった。

 全ての人にとっての正解を見つけることは不可能だ。それをどうにか見つけ出そうとして、悩んで、何度も苦しんだ。

 かつて、重圧に押しつぶされて何もできなくなったほどに。

 俺の考えを悟ったらしい穂澄は、呆れたような笑みを零す。

「後悔ってさ、誰もが重ねるものだと思う。過去にしなかったこと、出来なかったことをどう悔やんでも現実は変わらない。でも、これからの未来は変えられる」

「……未来は」

 穂澄の言葉に、雨天の表情に光が戻り始めた。

「雨天ちゃんは、どんな未来を描きたい?」

 そう尋ねると、雨天はひょいっと穂澄から飛びのいて姿勢を正した。

 続いて、右手に力を加える。すると、徐々に彼女の期待に応えるように光の粒子が集い始めた。

「……それは」

 雨天の右手に顕現したのは、ひとつの小さな魔石だった。

 彼女はそれを持った腕を高く掲げる。

「私は、皆が手を差し伸べてくれたように、誰かに手を差し伸べられる人間でありたいですっ!これが、私にとってのスパチャブースト”赤”の鍵なんですっ」


 かつて、俺達が四天王であった雨天を倒した後。

 彼女は、自身が倒される為に再度魔物の姿に戻ろうと、魔石を自身の口の中に放り込もうとしたことがあった。

 

 ——ねえ。雨天ちゃん。考えてよ。君を殺すのは私達なの。こうして戦うまでに、沢山会話を交わした私達なの。

 

 だが、それは穂澄が未然に防ぎ、結果として彼女を救ったのだ。

「……そこまで考えて言ってなかったんだけどな」

 穂澄は照れくさそうに肩を竦めて笑う。

「瀬川 沙羅さんの言う縁とか関係ありません!後付けの縁だって、悪いものじゃないですっ。無いなら作ればいいんです!」

 雨天の瞳には、確かに決意がにじんでいた。

 

 ドローンの姿を持つ者達。

 皆、それぞれの覚悟を抱いて次の配信への準備を着々と進めていた。

 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:???

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