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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
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【第百二十八話(2)】新たな企画(後編)

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 バルコニーに置かれたベンチの上で、特に何もせずに空を眺めていた。

「……」

 隣では穂澄が静かに本を読んで過ごしている。

 何となくここに居れば、あいつが来る気がしたから。


 そして、その予感は的中した。

「よう」

「……」

 空莉は、俺の顔を見るや否、直ぐに踵を返してその場から立ち去ろうとした。

 だが、今回は逃す気はない。

「逃げんなよ、ちょっとくらい話そうぜ」

「……まあ、いいよ」

 相も変わらず暗い表情を浮かべたままだ。

 彼も逃げられないと判断したのだろう。俺の隣に静かに腰掛ける。

 さて、どこから話したもんか。

「なあ、都心部から戻って来てから表情暗いけどさ、何かあったか?」

「……別に」

「そうか」

 あまり、深く詮索する気はない。

 必要以上に踏み入ってしまえば、余計にこじれる気がしたから。ずけずけと踏み入らず、相手から語るのを待つのに限る。

 その代わり、俺はバルコニーの屋根の隙間から覗く青空を見上げた。

「俺らがさ、魔災以降に出会ったのもこんな空の下だったよな」

「……そうだね。あの頃はセーちゃん、余裕のなさそうな顔をしてたね」

「今だって余裕なんかねーよ。あるように見せかけてるだけだ」

「強くなった、セーちゃんは……本当に。でも、それに比べて僕は……」

 不安そうに何度も両手の指を組み替える空莉。そわそわと落ち着かない様子で、空を仰いだり俯いたり、を繰り返す。

「……ねえ、セーちゃん」

「ん?」

 空莉の不安げに揺らぐ瞳が俺を捉える。

「……力を持つことって、何だろう」

「もう少し、具体的に教えてくれるか?」

 そう促すと、考え込むようにじっと地面を見つめた後にぽつりと言葉を紡ぎ始めた。

「雨天ちゃんは、変わることを恐れて閉じこもる為の力を得た。船出ちゃんは、誰かが安らぐことが出来る場所を作る為に力を得た。アランちゃんのお父さんは、家族を守り、生活を維持する為に力を得た」

 一人一人、関わってきた四天王の思い出を語る。

 そして、空莉は四天王——Life配信としての自身の想いを語り始めた。

「僕はね、ただその日を穏やかに過ごせればいい。そう思って、力を望んだ……でも、なんでかな。上手くいかなかったんだ。守りたいものがあったのに、守ることが出来なかった」

「……」

「力があれば、何でもできると思っていた。何もかも望んだ幸せを生むことが出来る……そう思っていたのに、出来なかった。だから、力を捨てた」

「……そうか」

「ねえ、セーちゃんは僕と同じように、配信者としての力を得て後悔してる?それともしてない?」


 ……後悔、か。

 確かに、もう俺は配信者となる前の、誰も自分のことを知らない存在に戻ることは出来ない。誰も彼も、自分の顔を、存在を認識している状態だ。

 逃げたいと思っても、姿を隠したいと思っても、世界は一生それを許してくれないのだろう。

 俺が居なくなるということは、つまり世界が終わりを迎えるという事だから。

「……セイレイ君」

 気づけば、穂澄もじっと俺を見つめていた。

 曖昧な答えは、避けなければならない。

「後悔か……散々したな。俺が配信を始めてから、色々なことに巻き込まれた。魔王が現れて世界はより一層滅茶苦茶になった。何度も、配信を始めなかったら何も起こらないままだったのかな、ってのは今でも考えるよ」

「でも、セイレイ君が配信を始めなかったら世界に色は戻らなかった。真っ白の世界のままだったはずだよ」

 気を遣うように穂澄はフォローの言葉を入れる。それもまた事実なのかもしれない。

 世界は、動き出す瞬間を待っていた。

「世界を呼び起こすトリガーは俺だった。こんなふざけたことしやがって、って何度もイラついたな。なんで俺がこんな目に遭わないといけねーんだって……」

 それから、思い立ったように右手に力を入れる。俺の想いに応えるように、スケッチブックが顕現した。

 長い配信の間で、沢山描いてきたものだ。

「でも、その代わりに沢山の出会いもあった。苦しいことだけじゃない、ちょっと視点を変えればこんなに世界は多くの人で成り立っているんだ、って思ったのもまた事実だ」

 スケッチブックを開けば、俺が描いてきた光景が蘇った。追憶のホログラムで描いてきた光景に、筆圧や筆の走らせ方に俺の感情が滲んでいるのが伝わる。

「喜び、怒り、悲しみ、楽しみ……沢山の色があった。ちょうど、スパチャブーストと同じ色に当てはめられるよな」

 青は、悲しみ。

 緑は、喜び。

 黄は、楽しみ。

 赤は、怒り。

 俺達は、言葉に色を乗せて戦ってきた。

 たった1つの色だけじゃ、キャンパスは完成しないから。皆の言葉の色を借りて、言葉の力を借りて。

「俺は、確かに力を持つ側の人間かも知れない。他の人よりも恵まれているんだろう。だからこそ、俺は皆から得た力を返していかなきゃならねーんだ。救える者を全部救う為に、俺は手段を選ぶ気はない」

 ——例え、その結果。俺が世界から消えることになったとしても。

 最後まで勇者としての務めを果たすだけだ。


 空莉は、静かに俺の言葉を聞いていた。

 それから、愁いを帯びた表情で俯く。

「……そっか、僕も皆を頼るべきだったんだ。力があるから何でもできる、なんておこがましい話だったんだ……」

 すくりと空莉は立ち上がる。顔を上げた彼の表情からは、決意がにじんでいた。

 穂澄はその様子を伺うように問いかける。

「……空莉君、どうしたの」

「セーちゃん、ホズちゃん……僕は残された四天王……Life配信の青菜 空莉。四天王として、お願いするね」

 空莉の藍色の髪が風に揺れる。髪の隙間から覗く表情には覚悟が生まれていた。

「僕は、たった一人で君達に勝負を挑む。勿論、手加減をする気はない。その上で、全力で僕を打ち倒して欲しい」

「四天王としての願いが……それでいいのか?」

「これは、沙羅姉への反逆でもあるからね。たった1人の行動で何もかもが思い通りになると思ったら大間違いだって知らしめるんだ」

「……なるほどな」

「これは全世界を賭けた喧嘩だ。セーちゃんに拒否権は無いよ」

 そう言って、空莉は静かにバルコニーを後にした。


 残された俺は、どうするべきか意見を求める為、穂澄に視線を向ける。

「……」

 彼女は物思いに耽るように顎に手を当てていた。

 それから、呆れたようにため息を吐く。

「はー……素直じゃないね、空莉君も。何で男って見栄ばっか……」

「見栄?」

「だってそうでしょ。勇者一行だとか、四天王だとか体裁ばっか気にしてさ。別に仲間なんだからいちいち気にする必要ないじゃん」

 穂澄は物言いこそ厳しいが、特段間違ったことを言っていない。

 だが、俺にとっては体裁こそ保つべきなのだと考えている。

「配信者はカッコつけるもんだろ。裏方なんか見せるもんじゃねーよ」

「……めんどくさ」

 穂澄に冷ややかな口調でため息を吐かれた。

 それから、彼女も先にベンチから立ち上がって、バルコニーの出入り口へと歩みを進める。

「ま、企画進行は秋狐さんがやってくれてるみたいだから。それまでには雨天ちゃんを配信者に仕上げるよ」

「分かった」

「配信に必要なのは”自分じゃ絶対に出来ない”って思わせるところから。雨天ちゃんを呼ぼう」

 俺達は、次なる配信の準備に取り掛かるより他なかった。

 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:???

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