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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
254/322

【第百二十二話】堕ちる希望

【配信メンバー】

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・僧侶ディル

・遊び人アラン

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

「先輩っ、ごめん!」

 私は右手に槍を顕現させ、迷うことなく先輩へと駆け出した。

 そして、彼を傷つけないように柄で殴りつけるべく逆手に構えた槍を振るう。

「いや、お互い様だよ。俺だって君達を傷つけるかもしれないんだからさ」

 先輩は今にも攻撃を受けようとしているのに、まるで動じることはなかった。

 次の瞬間。

「うん、君のやり方に合わせるね」

 ——先輩の持つファルシオンにラグが生まれる。歪む武器のシルエットは大きく変形し——。

「……私の武器と同じ……っ!?」

 彼の持つ武器は、槍へと変形していた。

 いとも容易く槍の柄で攻撃を弾かれた私は、距離を取るべくバックステップを繰り出す。

 だが、先輩はそれを許さない。

「傷付け、傷付け合う。残酷だよね」

 両足に纏う、淡く、青い光。それが彼が前傾姿勢を取るのに連なって、伸びていく。

「……っ!?っぐ……」

「ごめん。俺だって本当は他人が傷つくのは嫌なんだけどね」

 咄嗟の防御も間に合わず、先輩の放った突きの一撃は私の右肩を貫いた。

 激痛に力が緩み、手から槍が零れ落ちる。それは一度地面に叩きつけられ跳ねた後、光の粒子となり消えた。

 右肩を抑える手から、ドクドクと血が流れ出る感覚が伝わる。

 だが「傷付けたくない」というのは本心なようだ。先輩は追撃をすることなく、じっと私を心配そうに見つめていた。

「……本当に、ごめん」

「先輩は……そんなキャラじゃ、ないでしょ」

「ん、そうかな。俺はこれでも自分を偽ってるつもりはないんだけど」

 それから、何か引っかかったのか、先輩は槍を持つ手を見つめる。

「……あれ、俺の武器これだっけ。というか、なんでこのスキルを開花したんだっけ……?」

「先輩……?」

 不思議そうに己の行動に疑問を抱く先輩。だが、瀬川 沙羅はそれを許さない。


「怜輝は何も間違えてないよ」

「姉貴」

「私が保証する。なに、怜輝は一度選んだ正しさを貫けばいい」

 何が正しさだ。

 話に割って入りたかったが、先輩はそれで納得してしまったのだろう。ひとつ頷いて、改めて私達の方を見据える。

「うん、俺……間違ってない。これが、正しいことだから……」

 そうブツブツと自分に言い聞かせる先輩。


 ふと、noiseは私の隣に歩み寄った。

「アラン、大丈夫か」

「……痛いですけど、まだ動けないほどじゃないです」

「そうか、無理はするな」

 そこで言葉を切ったnoiseは、改めて先輩を観察する。

 彼の頭から足先までじっくりと観察するように目を凝らした後、改めて私の方を向き直った。

「今のセイレイをどう思う?」

「どうって……何となく、配信したての頃みたいな雰囲気ですよね」

「全く……何も知らなかった頃のあいつみたいだ」

 noiseは己の持つ金色の短剣をじっと見つめた。光り輝く刀身がnoiseの姿を反射する。

「過去の想いを引き出す力……だったか。セイレイの持つ力というのは」

「いつかの配信で言っていたことですね」

「ああ。セイレイと関わるようになってから、沢山失った感情を思い出させてもらったよ……本当にね」

 思い出を語るnoiseの目が、ほんの少し暖かくなった気がした。

 しかし、状況を思い出したのかnoiseは首を横に振って冷静さを取り戻す。

「セイレイが私達に沢山の感情を与えてくれたんだ。今度は、私達が返す番だ」

「……打算は?」

「これから、考えるっ!」

 そう言葉を切ると共に、noiseは迷いなく先輩へと駆け出した。

 ……どうしてこう、勇者一行というのは考えなしに突っ走るのだろう。


「セイレイっ!」

「わっ、何さ」

 先輩は突如として飛び掛かってきたnoiseに驚いた表情を見せる。

 だが、さすがは勇者というべきか。冷静に持つ武器をnoiseに合わせて短剣へと書き換える。

「私の真似事か、お前に出来るか?」

「やってみないと分からない、よね?」

「はっ、言うようになったな……合わせて見せろっ!」

 noiseはにやりと楽しげに笑った後、躊躇することなく短剣を先輩目掛けて振るう。

 流れ星の如く次から次に襲い掛かる、煌めく連閃。だが、先輩はその一撃一撃をしっかりと捉え、難なく対処して見せる。

「うん、見えるよ……あれ?なんでこんなに見えるんだろう」

「私が教えたから、なっ!!」

 先輩がnoiseの攻撃に対応している最中。ディルはセイレイの背後を取り、右手で銃の形を作った。

「悪いけどセイレイ君、少しだけ縛らせてもらうよ。スパチャブースト”青”」

[ディル:呪縛]

 そのシステムメッセージが流れると同時に、ディルの指先から迸るのは漆黒の鎖。それは光に照らされ、艶やかな色を生み出していた。

 先輩は銃弾の如き速度で襲い掛かる鎖を一瞥する。

 それから、空いた左手にディルと同じチャクラムを顕現させ、迷いなくそれを投擲。

「うん、見えてるよ」

 放つチャクラムは、ディルが放った漆黒の鎖と衝突。軌道を反らされた鎖は地面に叩きつけられ、土煙を生み出す。

 スキルの発動を阻止されて尚、ディルはにやりと楽しそうな笑みを浮かべていた。

「……さすがだね。それでこそ、希望の種。勇者セイレイだよ」

「前からこんなスキルだった?」

()()、ね?」

 先輩の呟きを耳聡(みみざと)く聞き取ったディルはにやりと笑みを零す。

「……そんなはず、ないよ。スパチャブースト”青”」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 過ぎる思考のノイズを振り払うように、先輩は宣告(コール)を放つ。

 再び両脚に淡く、青い光を纏った彼はnoiseと大きく距離を取った。

 先輩が着地するのを狙って、ホズミは青色の杖を掲げて叫ぶ。

「氷弾よ、放てっ!」

[ホズミ:氷弾]

 そのシステムメッセージが表示されるのに連なり、ホズミの杖先から氷の塊が射出される。

 冷気を纏いながら飛んでいく氷弾は、先輩の足元で着弾。打ち込まれた地面を中心として、徐々に周囲が凍り付く。

「わっ」

 着地した地面が凍り付いたことにより、先輩は慌てた声と共に尻餅をつく。

「セイレイ君、どう?何か思い出した?」

「……思い、出せないよ……っ!」

 浮かび上がる記憶を振り払うように、先輩は強く首を横に振る。

 それから、今度は右手に持つ短剣を赤色の杖へ変形させた。

「溶かすよっ……!炎弾よ、行け!」

[セイレイ:炎弾]

 表示されるシステムメッセージと同時に、先輩が構えた杖先から炎弾が射出される。それは瞬く間に地面へと着弾し、ホズミの魔法により凍り付いたそれを溶かしていく。

 炎弾を放ったことを確認したホズミは、静かに先輩に問いかける。

「ねえ、セイレイ君。私は氷弾を放ったんだよ?炎弾は放って無いよ」

「え、うん?何の話?」

「さっきから他人に合わせて武器を変えてるよね。でも私が今出してるのは青色の杖。赤じゃないよ」

 指摘されてから、先輩は不思議そうに杖先を見た。

 それが赤色の杖であることを確認した先輩は「確かに」と頷く。

「本当だね。何で間違えたんだろう……」

「……まだ、誤魔化す気?」

 あくまで分からない、というスタンスを一貫する先輩にホズミは苛立った声をぶつける。


 私はそんな先輩に目掛けて、思いの丈を叫ぶ。

「セイレイ先輩っ、私を見てくださいっ!」

「わ、な、何」

「先輩が与えてくれたんですよっ、戦い方も、気付きも!全部、全部、全部!」

 右肩の痛みも堪え、私は高く右腕を掲げる。


「思い出してよっ、この色をっ!スパチャブースト”青”!」

[アラン:紙吹雪]

 私が放つ宣告(コール)と共に、私の頭上に降り注ぐ紙吹雪。

 それ以上でも、それ以下でもないカラフルな紙吹雪がパラパラと私に降り注ぐ。

「……アランちゃん、ふざけてるの?」

 ディルは場違いなスキルの発動に、咎めるように低い声音で尋ねる。

「……えっと」

 noiseは何か意味を探ろうとするように、困った笑みを浮かべる。

「……」

 ホズミは、じっと私と先輩を交互に見やっていた。


「あの。お節介かもしれないけど……そのスキル、もう使わない方が良いよ……あれ?」

 自分の言った言葉に違和感を抱いたのか、先輩はじっと私の方を見た。

「もしかして、これ言うの二回目だったりする?」

「ふふっ、前にも言われたよっ?」

「……他人を振り回すのが好きなのか君は……っ、あ、あれ……?」

 先輩は、自分が発した言葉に引っかかるものがあったのだろう。

 頭を押さえ、よろよろと私から距離を取る。


「なんだ、これ……っ。俺は、俺は……、わけわかんねぇ……っ!」

 少しずつ、先輩の口調が元の形に戻りつつある。

「……先輩」

 それを確信し、思わず安堵の笑みが零れた。

 だが。

「怜輝……”お前の前に居るのは、全て敵だと思え”」

 感動のシーンを、瀬川 沙羅は再びぶち壊す。

 再び思考を書き換えられた先輩は、静かに言葉を紡ぐ。

「……敵……敵……。うん、敵……」

「もう少し、だったのに……っ」

 何度も思考を書き換えられた先輩は、よろよろとおぼつかない足取りで歩みを進める。

 ブツブツと何か言葉を呟く彼は、再び右手にファルシオンを顕現させた。

「……先輩?」


「……スパチャブースト”黄”」

[セイレイ:雷纏]

 突如として、発せられるそのスキル。同時に、先輩の全身を青白い稲妻が纏い始めた。

「……何を……」

 彼の意図を掴むことが出来ず、私は慌てて仲間達に視線を送る。

 だが彼等も同様に、様子を伺って次の行動を探っているようだ。


 ぱしゃり。

 先輩が水溜まりを靴底で叩く音が響く。

 次の瞬間、ホズミはその行動の意味に気付いた。

「……っ、待って!水——」

 雨天との戦闘に伴い、地面にまき散らされた水しぶき。ホズミが放った”氷弾”が溶けたことによって生み出された水溜まり。

 それらは、屋上の地面全体を濡らしてしまっていた。


 だが、時すでに遅し。

「……ごめん」

 先輩はそうポツリと呟いた後、稲妻の纏う手で濡れた地面へと触れた。

 それと同時に、迸る稲妻が大地を駆け巡る。

「——っ」

 慌てて私達はそれから逃れようとするが、駆け巡る稲妻の襲い掛かる方が先だった。


「きゃあああああっ!!」

 意識すら奪われそうなほどの激痛が全身を駆け巡る。

 何度も電撃が全身を這い巡り、体の自由すらも容易に奪っていく。全身の筋電位の伝達が狂ったことにより、意図しない形で全身が震える。

「……っ、あ、あ……」

 ついにまともに立つことも出来なくなり、私は地面に倒れ伏した——。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

ディル

青:呪縛

緑:闇の衣

黄:闇纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

黄:ホログラム・ワールド

赤:悟りの書

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