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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
251/322

【第百二十話(2)】創始者との邂逅(後編)

【配信メンバー】

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・戦士クウリ

・僧侶ディル

・遊び人アラン

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 青空が広がっていた。大きく息を吸えば、澄み渡るような空気が肺の中に広がっていく。

 世界はこんなに美しかったんだ。そう思わせてくれるような日差しが私達を照らす。

 

 転落防止の為に囲われたガラス張りの壁。足元には自然的な柔らかさを醸し出す暖色のタイルが敷き詰められている。

 ちらりと壁際に目を向ければ、等間隔に並べられたダクトがまるで邪魔者のように寄せられていた。

 ——そんな、かつては職員の安息の地であったであろう屋上のベンチに腰かけるのは一人の少女。

 「やあ、来たかい。Sympassを使ってくれてありがとうね、ユーザー諸君」

 腰まで伸びた金色の長髪が、艶やかに陽光に照らされる。まるでファッション性に欠けたダボダボの白衣を身に纏い、その隙間からはプリントTシャツと、サイドスリットの入ったショートパンツが姿を覗かせていた。

 彼女はベンチに腰掛けて退屈そうにサンドイッチを食べていた手を止めて、こちらの方へと振り返る。

 その佇まいは仕事の休憩中、といった雰囲気だ。

「ちょっと待ってくれるかい。今は食事中なんだ」

「……よくも、こんな状況で食事なんて出来ますね」

 私ははらわたが煮え返るのも抑え、静かな声で問いかける。それから、静かに右手に槍を顕現させた。

 その動作を見たホズミは、素早く秋狐に「クウリ君を配信メンバーに入れ替えて」と指示していた。フォローアップの体勢を早々に取ってくれるのはありがたいことだ。

「何事もゆとりが大事だから、ね。人生焦ってはいけないよ」

「どの……口がッ!」

 ついに怒りが抑えきれなくなる。

 私は己の身体能力に身を任せ、槍を構えて彼女へと駆け抜ける。その勢いに任せ、突きの一撃を放つ。

「死ねっ!瀬川 沙羅あああああっ!!」

「……やれやれ。最近の女の子は物騒だね」

 だが瀬川 沙羅はサンドイッチを食べる手を止めようともせず、空いた左手で指を鳴らした。

 その動きに連なって、アスファルトを抉りながら伸びた樹根が私に襲い掛かる。

「っ!?」

「もう少しで食べ終わるから待っておくれよ。最近ろくに食事も出来ていなかったんだ」

「みんなっ、生きるだけで精いっぱいなのにお前はっ……!」

 まるで自分だけが被害者かのような言い回しでそう語る彼女。

 彼女に一撃でも浴びせないと気が済まないが、それを咎めるかのように次から次に伸びる樹根が私を阻む。

「っ、どいてっ!」

 すぐさま樹根を切り払わんとするが、頑丈な樹根はまるでびくともせずに私の攻撃を防ぐ。

 

「炎弾よ、放てっ!」

[ホズミ:炎弾]

 そんな私の代わりに、ホズミが迷いなく宣告(コール)し炎弾を放った。

 鋭い矢の如く襲い掛かる炎弾は、寸分の狂いもなく瀬川 沙羅が居た場所に着弾する。

 爆風が激しく舞い上がり、壁に沿うように並ぶガラス窓が大きく揺れた。

「……次も打ちたいけど、どうせ効いてないでしょ」

 ホズミは低くそう呟き、舞い上がる土煙を静かに見据えた。

 消えゆく土煙の中から、樹根に姿を囲われた瀬川 沙羅が姿を現す。

「へえ。千戸 誠司との一件で学習でもしたかい」

「人の後悔を抉ることをよくもまあいけしゃあしゃあと言えるものね……どうも初めまして、瀬川 沙羅さん?」

「くくっ、初めまして。いつもご利用ありがとう」

 その言葉に連なり、私へと襲い掛かってきた樹根は彼女の元へと帰っていく。

 地面へと潜ると同時に、抉れた地面がゆっくりと元の姿に戻る。

 私はひとまず戦闘態勢を解き、静かに彼女を睨んだ。

「……先輩はどうしたんですか」

 瀬川 沙羅は手に付着したマヨネーズをぺろりと舐めながら、私の問いかけに答える。

「安心しなよ。荒川 蘭の愛しのセイレイ君……もとい怜輝は無事さ」

「じゃあ早く会わせてよ!」

 平然とした表情を崩そうともしない瀬川 沙羅の言葉に苛立ちが募る。

 ちらりと眼前に映るモニターに視線を送れば、私の怒りに共鳴するようにコメント欄が流れていた。


[アランちゃん、怒るのは分かるけど冷静にな]

[Sympassの運営、って割には若いな……]

[確かセイレイのお姉さん、だっけか]

[ディルのコピー元で、セイレイの思考を再現する為のベースになった人格、だよな]

[解説サンクス。ただ、俺らからすれば正直彼女に対してどんな感情を抱くべきか分からん]

[サービス提供者、ってだけだからなあ]


「……ただのサービス提供者、だと思う?」

 コメント欄を見たディルは、低く苛立った声を漏らす。それから、チャクラムを顕現させてそれを瀬川 沙羅に向けた。

「ねえ、ボクのオリジナル」

「おや……久しいね。随分と見ないうちに男らしい肉体になったもんだ」

「そういうキミはごぼうみたいな身体なのは変わらないね。殴ったら骨折でもしそうだ」

「女の子に言うべき台詞じゃないよ、それ。で、なんだい?」

 冗談めかしたやり取りを遮って、瀬川 沙羅は質問を促す。ディルはチャクラムの先を彼女に向けたまま、問いかけを続けた。


 「ねえ。千戸はまるでホログラムの実体化実験によるトラブルをヒューマンエラーかのように語ってたけどさ。そうなるように仕向けたのは瀬川 沙羅……キミでしょ」

 ……え?

 その言葉に、刹那の硬直が生まれる。

「……へえ、何を根拠に?」

 瀬川 沙羅は楽しげな笑みを浮かべたまま、質問を返した。

「ボク自身がその証明さ。”セイレイ君と一緒に配信をして、多くの人にそれを見てもらう”……そうする為に、随分と無茶苦茶したからね。ボクも」

「それはディルの意思に過ぎないだろう?私の考えと同一に捉えられては困るよ」

「瀬川 政重を介して魔王セージにSympassのリリース権限を渡し、挙句四天王という役割すら雨天ちゃん達に与えて回ったうえでシラを切るのかい?随分と”勇者一行”の配信をする為の下準備を徹底したものだね」

 ディルが語る言葉に、瀬川 沙羅は驚いたように目を見開いた。

「……随分と頭が回るね」

「元はキミと同じ思考だからさ」

 そこで言葉を切り、ディルはしっかりと配信を介して人々に伝わるように真実を告げる。

 

「魔災はヒューマンエラーなんかじゃない。Sympass運営こと瀬川 沙羅が組み込んだプログラムによって引き起こされた、史上最大の人的災害だよ」

「……え」

 思考が、止まる。

 私、荒川 蘭だけではない。

 前園 穂澄も。

 一ノ瀬 有紀も。

 青菜 空莉も。

 秋城 紺も。

 雨天 水萌も。

 誰も彼も、同じ思いを抱いたであろう。


 彼女が居なければ、魔災など起きなかったではないか?と。


 To Be Continued……

Switch2の抽選落ちてました♡

しばらく現役です。

【開放スキル一覧】

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

クウリ

青:浮遊

緑:衝風

黄:風纏

ディル

青:呪縛

緑:闇の衣

黄:闇纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

黄:ホログラム・ワールド

赤:悟りの書

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