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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
247/322

【第百十八話】Drive配信:荒川 東二

【配信メンバー】

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・戦士クウリ

・僧侶ディル

・遊び人アラン

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 印象に残っているパパと言えば、オフィスデスクに座ってモニターとにらめっこしている姿しかない。

 だから、四天王と言えどもどれほどの能力を含有しているのか、娘の私でさえも知らなかった。


「回避モードへ移行。刺突攻撃に警戒」

 淡々と業務報告のような言葉のみを発しては、放つ攻撃を(さば)き続ける。

「おかしいでしょ、だって、だって……!」

 怒りをぶつけるように何度も突きを放つが、その攻撃は一撃たりともパパには届かない。

 脳裏を何度も過ぎるのは、屈託なく笑うパパの姿だ。


 ——はは。蘭には敵わないな。

「——嘘つき」


 何度も連撃を放っているのに、攻撃を難なく捌き続けるパパは一歩たりともその場から動いていない。

 何が「敵わない」だ。

 ゴーレムの姿と化したパパは、私の放つ突きを躱す。それから、槍の柄を握りながら拳を構える。

「迎撃モード、移行」

「——っ」

 私は槍から手を引き、素早くバックステップ。

 noiseは私を庇うように素早く躍り出る。

「スパチャブースト”緑”っ!」

[noise:金色の盾]

 金色の盾を顕現させたnoiseは素早く盾を正面に突き出した。そのスキルの仕様を理解しているのだろう。

 すぐさまパパは攻撃の手を止めて腕を引く。

 それで攻撃を止めたのかと思ったが。

「——高出力エネルギー放射準備」

「はっ!?」

 開いた拳が、紫色の光を放っていることに気付き、noiseは困惑の声を漏らす。

 明らかにビームでも放とうとしている。だが、間に合わない——。


「させないよ、スパチャブースト”黄”っ!」

[ディル:闇纏]

 背中から漆黒の翼を生やしたディルは、私達の頭上から強襲する形でパパに襲い掛かった。

 位置エネルギーを重ね合わせた蹴りに伴い、パパの開く右手が地面に向けられる。

「——!?」

 次の瞬間、放たれるのは高出力のビーム。紫色に光る高エネルギーを含有したそれが、足場を貫く。

「くっ……!」

「きゃっ!?」

 私とnoiseは大きく揺れる足場に、すぐに姿勢を低くした。

 だが、さすが耐震性能を兼ね備えた日本の建造物というべきか。ビームに貫かれてなお渡り廊下は崩落することなくその姿を保っていた。

「——怖いけど……!落ちたらフォローお願いっ」

 元々高所恐怖症であろうクウリは、己の恐怖心を押し殺して駆け抜ける。

 それから高く跳躍し、大鎌の先端で貫かんと振り下ろす。

「たあああああっ!」

「——迎撃態勢、移行」

 パパは冷静だった。直ぐに身体を捻り、大鎌の側面を蹴りつける。

「わっ!?」

 重みの乗った蹴りに伴い、クウリの手から大鎌がはじけ飛ぶ。それは吹き抜けとなった渡り廊下から弾き飛ばされ、ビルの側面に衝突。窓ガラスを割りながら、光の粒子となって世界から消えた。

 隙だらけとなったクウリ目掛けて、パパは再度身体を捻り回し蹴りを放つ。

「ぐふっ——」

「クウリさんっ!」

 苦悶の声を漏らしながら、クウリは激しく吹き飛ばされた。激戦に伴ってめくれ上がった鉄材の棘が更に彼を傷つける。

『っ、クウリ君っ!体力6割減!』

 秋狐は動転しながらも状況を報告。

 体力6割——動くことこそ可能であるが、継続した戦闘は困難な状態だ。

「私がクウリ君を庇う!ごめん、しばらく頼んだっ」

 ホズミはすかさず地面に倒れ伏したクウリを介抱する為に駆け寄る。離脱したホズミが居たスペースにディルが降り立つ。

 それから、ディルは渡り廊下の鉄骨に配置された監視カメラを忌々しげに睨んだ。

 「ねえ、ボクのオリジナル。これがキミの望む配信かい?こんな誰も幸せにならない配信が」

 無論、私達の配信を観ているのだろう。監視カメラに備え付けられたスピーカーから、瀬川 沙羅の「くくっ」と気味の悪い笑みが響いた。

『むしろディルこそ、随分と他人の肩を持つようになったじゃないか。本当に私の意思から生まれた存在かい?』

「その言葉そっくりそのまま返すよ。どうもキミとボクとじゃ、考え方が全然違うようだね」

『配信は視聴者の心を揺さぶるものだろう?感情移入こそ配信の根底にあるものさ』

「配信の為に他人を傷つける行為を止めろと言っているんだ!」

 ついに激昂したディルはカメラに向けて怒りの言葉をぶつける。だが、瀬川 沙羅はまるで聞く耳を持とうとしなかった。

『なんでも良いけど、戦闘に集中したらどうだい?話なら後でいくらでもしてあげるからさ』

「っ、待てっ!」

 瀬川 沙羅は「またね」と言った後に、スピーカーを切ったようだ。「ブツッ」という電流が走るような音を最後に、音声は途絶えた。

 それを待っていたかのようにパパはゆっくりと姿勢を整える。それから、私目掛けて猛攻を仕掛けてきた。

「——きゃっ」

「させるもんかよ!」

 noiseは荒っぽい口調を隠そうともせずに私を庇う形で立つ。それから再び左腕を前方に構えた。

「スパチャブースト”緑”!」

[noise:金色の盾]

 同時に、noiseの左腕に金色の盾が顕現する。盾を前方に構えた動作に、パパは警戒の姿勢を取った。

 直ぐにダッシュの姿勢にブレーキをかけ、様子を伺うように距離を取る。noiseはそのタイミングを逃さず宣告(コール)を重ねた。

「ここで決めるっ、スパチャブースト”赤”!!」

[noise:金色の矛]

 そのシステムメッセージが流れると同時に、配信画面に表示された”総支援額”は37500円まで減少。

 計算するに、スパチャブースト”赤”においては50000円消費するようだ。

 noiseの持つ金色の短剣から光の刃が伸びていく。

 それと同時に、noise全身を光が覆う。やがて彼女の姿は栗色のおさげを揺らした女子高生へと変わっていた。

 刀身が伸びたそれを構えながら、noise――一ノ瀬は素早く報告を行う。

「”赤”は配信中に1回しか使えないっ!支援を頼んだ!」

「——分かった!」

 それは私に向けた報告だったようだ。一ノ瀬はそう告げると同時に、素早くパパへと斬りかかる。

「攻撃範囲変動あり。再度演算施行——承認」

 流星の如き連撃が、鉄材で構成された無機質な渡り廊下へと傷を生む。それは熱を帯び、赤く爛れた焼け跡を残していく。

「はあああああっ!」

 一ノ瀬の連撃は留まることなく、猛攻を押し付ける。

 パパも隙を見てカウンターを放とうとしているようだが、戦闘経験は一ノ瀬の方が一枚上手だ。まるで見計らったかのように左腕に装備した金色の盾をちらつかせ、返す一撃を許さない。

 私はその連撃の隙を縫い、持ち合わせた才覚に任せて槍を振るう。

 一ノ瀬の攻撃に対応することに気を取られていたパパは、私の一撃に気が付かなかった。

「——こっちを、見てよっ!パパっ!」

「ガッ——」

 パパの苦悶に満ちた声に心が痛む。だが、一ノ瀬が生み出した隙を逃すわけには行かない。

「ごめん、パパ——!」

 迷いを打ち消すように、何度も槍を振るう。ゴーレムの纏うレンガが削れては、欠片が床に転がっていく。

 少しずつではあるが、私が押している。

 だが。

「——ら、蘭……」

「っ……」

 パパが私を呼ぶ声に、思わず攻撃の手が緩んだ。

「アラン!罠だっ!」

「……え」

 一ノ瀬は慌てて忠告の言葉を挟むが、時すでに遅し。

「迎撃モード、移行」

「——かはっ」

 鋭い蹴りが、私の腹部を貫く。

 痛いのか、気持ち悪いのか、自分でもよく分からない不快感が全身を駆け巡る。

 

 もはや自分の身体を制御することさえ出来ず、私は瞬く間にエレベーターの扉に叩きつけられた。

 鈍い音が、私の鼓膜をつんざく。私はそのまま無様にも地面に倒れ伏した。

『蘭ちゃん!——体力8割減少!早くっ、助けてあげてっ!』

 秋狐の叫び声が聞こえる。

 その切羽詰まった声に、自らが死の危機に瀕していることを自覚する。

(……ああ。死ぬのかな……)

 

 ——分かっていた。

 いずれ、こんな日が来ることを。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

クウリ

青:浮遊

緑:衝風

黄:風纏

ディル

青:呪縛

緑:闇の衣

黄:闇纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

黄:ホログラム・ワールド

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