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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
246/322

【第百十七話(3)】全ての元凶のいるダンジョン(後編)

【配信メンバー】

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・戦士クウリ

・僧侶ディル

・遊び人アラン

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

『二階に到着しましたー……っと。これ以上は上がらないね』

 二階まで上がったところで動かなくなったエレベーターに、秋狐は残念そうにぼやきを零した。

 私達はお互いに頷き合い、それから滑り込むように各々得物を構えながらエレベーター内から駆け出る。

「紺ちゃんっ!」

『はいはいっ、人使い荒いなあ。サポートスキル”熱源探知”!』

 noiseに呼びかけられた秋狐は不貞腐れた声音で宣告(コール)を放った。というよりも彼女も使えるんだそれ。

 すると、眼前に映る配信画面へ重なってターゲットマークが表示される。壁外に潜むガードマンも確認できるのは非常にありがたいことだ。

「先手必勝、だよっ♪」

 素早く先人に躍り出て、ターゲットマークに合わせて角待ちしているであろう敵に向けてやりを突き刺した。

 手先に引っかかる感覚を覚えると同時に、ぐたりと力尽きたガードマンが膝をつく。槍を引き抜けば、その魔物は地面に倒れ伏した後に影となり世界から消えた。

「1体撃破っ」

『ナイスだよアランちゃん!残り14体、うち1体の赤いやつは強化個体!』

「はーいっ」

 秋狐から受けた報告を元に、周囲に目配せしつつ立ち回る。私のメインの役割は、noiseと同じく陽動だ。

 オフィスチェアの上に飛び乗った私は、演説でもするように高々とガードマン達を見下ろす。

「あはっ♡雑魚のみなさぁーん、可愛い可愛いアランちゃんはここにいますぅ、こっちにおいでっ♪」

『ばっ……馬鹿なの、あの子!?』

「あはっ♪」

 秋狐が困惑と呆れの混じった声音で叫ぶ。だが、これで良い。

 私目掛けて、各々警棒を構えたガードマンが襲い掛かる。私は右手に持った槍を低く構え、迎撃の体勢を取った。


「たっ!」

 まずは正面から馬鹿正直に警棒を振り下ろしてきたガードマンの警棒を弾き、それから素早く喉元を突き刺す。

 ぐたりと力なく崩れ落ちるのを確認し、それから槍の柄で横から飛び掛かってきたガードマンを殴り飛ばした。

「侵入者——っ」

「はい、どうも侵入者でぇすっ☆」

 恨み言のように同じ言葉を繰り返すガードマンへと挑発の言葉を浴びせる。

 体勢を崩されたガードマンをいったん無視して、私は槍をカーペットにつき刺す。それを支点として高く跳躍し、それから勢いのままに遠心力を駆使して引き抜いた槍をそのまま振り下ろす。

「そりゃっ!」

「がっ——」

 モロに正面からその一撃を貰ったガードマンは大きく後ろに吹き飛ぶ。それから、ボウリングのピンのようにガードマンの群れは大きくなぎ倒される。

 だが大振りの一撃に伴い、隙だらけとなった私目掛けて死角から別のガードマンが襲い掛かって来ていた。

 赤色の、強化個体だ。

「——っ」

 素早く身を引いて回避の体勢を取るが、間に合わない。

 その時、私と強化個体のガードマンの間に滑り込む人物がいた。

「スパチャブースト”青”!」

[noise:影移動]

 ——盗賊noiseだ。

 そのシステムメッセージと共に地面からぬるりと這い出たnoiseは続きざまに叫ぶ。

「次だっ、スパチャブースト”緑”!」

[noise:金色の盾]

 次の瞬間には、noiseの左腕に金色の盾が顕現した。それを前方へと突き出し、ガードマンの振るう一撃を受け止める。

 火花を散らしながらも受け止めたその一撃が、ガードマンの動きをしっかりと繋ぎ止めた。それから、noiseは不敵に笑む。

「お前の時間、盗ませてもらうよ」

 金色の盾から、光の蔓が伸びていく。それは警棒を介する形で、徐々にガードマンを縛り上げる。

 瞬く間に身動きを封じられたガードマン目掛けて、noiseは続きざまに短剣を吐き出した。

「——侵入者……警告……」

「はっ、元々生きてきた人々を追い出してどっちが侵入者だよ」

 noiseは倒れ行くガードマンに向けてそう吐き捨てる。それから、私にちらりと案ずるような視線を向けた。

「アランちゃん、君だけで配信してるわけじゃないんだから。いつでも私達を頼ってね」

「あっ、あー……うん。ありがとっ」

 一瞬素に戻りかけたが、慌てて取り繕った。

 noiseはもう一度だけ暖かい笑みを浮かべ、それから元の配信者の姿に戻った。

 短剣を構え、鋭い双眸で魔物を捉える。


 徐々に、そして確実に魔物達は猛攻を振るうのに伴って、その姿を消していく。

 こうして、あっという間に2階の攻略も終えたのだった。


 [information

 3階が解放されました]

「行くぞ、次だ」


 ----


「侵入者——」

「もういいってそれは」

 ディルが最後のガードマン目掛けてチャクラムを放つ。その一撃はガードマンの喉元を貫き、ついに絶命させる。

 魔物の全滅を確認した後、眼前に表示された配信画面を介してシステムメッセージが表示された。


 [information

 10階が解放されました。

 ※強敵の為、念入りな準備を推奨します]


「強敵、ね」

 ディルはため息を吐きながら、上層を見据えるように天井を見上げる。

「皆、怪我はない?体調は万全に整えよう」

 クウリは仲間を気遣うように、率先して声掛けを行う。

「……」

 そんな中、ホズミは静かに黙りこくっていた。何かを憂うように、ぎゅっと両手に抱えた杖を抱きしめる。

 何やらホズミの表情に不安を感じ取り、彼女へ話しかけることにした。

「あの……先輩?」

「うん、どうしたの?」

「さっきから、何を気にしてるんです?」

「……憶測の話だけど、聞く?」

 ホズミは保険を掛けるように再度問いかけた。だが、何も聞かないよりはきっとマシだ。

 私は静かに頷いた。その返事を確認したホズミは、ゆっくりと深呼吸して口を開く。

 だが——。

「アランちゃん……あなたの」


『諸君。何をしているんだね、配信の最中だろう。早く上がってきたまえ』

 ホズミの言葉を遮るように。

 社内放送と思われる、ひび割れたような音声がオフィス内に響く。

 ホズミ含めた面々は互いに顔を見合わせた。

 だが、私はその声の主を知っている。

「……瀬川 沙羅さん……!」

『ネタバレは止めてもらえるかい、前園 穂澄ちゃん』

 瀬川 沙羅はマイクを介して、ホズミに呼びかける。

 呼ばれたホズミは、忌々しげに口を歪めて言葉を返す。

「……本名で呼ばないでくれる?何が気に食わないの」

『面白さが半減するじゃないか。配信の主導権は私にあること、くれぐれも忘れないでくれよ』

「ずいぶんと身勝手な企画要望なのね。一体何がお望み?」

 配信になぞらえてホズミは皮肉を返す。すると、スピーカーから瀬川 沙羅の「くくく」と怪しげな笑い声が響いた。

『なに。ただ黙ってエレベーターに乗り込んでくれればいいんだ。余計な私語は慎んでもらおうか』

「……やっぱり、そういうことなの。あなたは……やっぱり、許せない」

『くく、何だっていいよ。じゃあ、私も支度をしないといけないね』

 そう言って、スピーカーは「ブツッ」という物音と共に途切れた。


 ……瀬川 沙羅は何を準備しているのか。

「……許せない」

 先に答えに気付いているホズミは、静かな殺意を滲ませていた。それから、何も言わず一人先にエレベーターへと向かい始める。

 彼女に置いて行かれないように、私達も慌ててエレベーターに乗り込んだのだった。


 ----


『10階です』

 エレベーターを出た先は、吹き抜けになった渡り廊下が広がっていた。

 澄み渡る風が私の髪を揺らし、頬を激しく叩く。

 渡り廊下の先に居るのは——。


「……パパ?」

 私の父親、荒川 東二だ。ビジネススーツを着込み、身なりを整えた父が私達に背を向けて立っていた。

 どういうことだ、瀬川 沙羅に連れ去られたのではなかったのか?

「……」

 何故か、パパは私の声に反応を示さない。

 聞こえていないのだろうか?

「パパ、ねえ!私だよ、蘭だよ!?」

「待って、アランちゃん」

「ねえ、ねえったら!」

 ホズミが静かに私の肩を引いて制止するが、彼女の制止も振りほどいてパパの元へと駆け出した。

 後ろから「バカ!?」とホズミの慌てた声がするが、私にとっては気にしている余裕さえない。

「パパ——」


[追憶の守護者:荒川 東二]

「……Drive配信、起動」

「え?」


「アランちゃんっ!!!!」

 呆気に取られている私を庇う形で、ホズミは両手を前に突き出して躍り出た。

「——っ、スパチャブースト”緑”!」

[ホズミ:障壁展開]

 次の瞬間、彼女を中心として、薄い緑色の膜のようなバリアがドーム状に展開された。

 パパはまるで人形のような動きで、ホズミが展開した障壁に向けて右手を振り上げる。

 振り上げた右手が、徐々にレンガで構築されたそれに代わっていく。

「っ!?」

「障害物確認。破壊モードに移行」

 まるで岩塊となった右手で、障壁を叩きつける。

「きゃっ……!」

 その一撃に伴い、ホズミが展開した障壁はいとも容易く崩壊。崩れ去った障壁の欠片が私達に降り注ぐ。

 

「パパ……なんで」

「アランちゃんから離れてっ!」

 今度は私達の前にクウリが躍り出る。それから流れるように宣告(コール)を放った。

「吹き飛ばせ、スパチャブースト”緑”!」

[クウリ:衝風]

 クウリの宣告(コール)に伴い、彼を中心として強風が吹き荒れる。巻き上がる風はいとも容易くパパを吹き飛ばした。

 だが、空中で姿勢を整えたパパは、難なく三点着地を成功させる。踏み砕かれる鉄材で作られた足場が、大きく鋭利な傷跡を生み出した。

 今まで見たことのない、殺人人形と化したパパはじろりと私達を見据える。

「交戦意思を確認。戦闘モード:Golemへと移行開始する」

 そう呟くと同時に、パパの全身が漆黒のレンガに置き換わっていく。

 重苦しい音を立てながら、徐々にその姿が失われる。


「……なんで」


 ——蘭。遊んでばかりいないで勉強しなさいって何度言えば……。


「なんで、なんで……!」


 ——ごめんな。この仕事が終わったら遊ぼうか。


「なんでっ……!」


 ——もちろん、パパは蘭のことが世界一大好きだよ。


「殲滅対象、確認。対象——遊び人アラン含めた、勇者一行」

「っあああああああああああっ!」

 私は、内に秘めた悲しみを抑えるように槍を構えて駆け出した。

 敵対するは、漆黒のレンガを全身に纏ったゴーレムだ。

 

 総支援額:113500円。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

クウリ

青:浮遊

緑:衝風

黄:風纏

ディル

青:呪縛

緑:闇の衣

黄:闇纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

黄:ホログラム・ワールド

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