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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
242/322

【第百十六話(1)】還る場所(前編)

【配信メンバー】

・セイレイ

・アラン

【ドローン操作】

・荒川 東二(四天王:赤のドローン)

 実際に困難を打開するところを見せられては、東二も認めざるを得なかったのだろう。

 ようやく、俺とアランがTenmei本社へと向かう為に行動することを許可したのだった。

「……分かってると思うけど、絶対に危険だと感じたら撤退するんだぞ」

 そう念入りに釘を刺されるのも仕方のない話だが。


 その日から、何度も俺達は共に効率のいい連携の取り方を模索することに専念するようになった。

「アランは槍を使ってるから俺よりもリーチが長いんだよな」

「うーん。でも先輩の方が小回りが利くよね?」

「ああ。相手との距離に応じてどっちが前に出るか役割を決めようか」

「いいねっ、さすが先輩頼りになるー!」

「伊達に勇者やってないからな」

 

 まさか、自分が他人に教える側になるとは思っていなかった。

「蘭!牽制頼む」

「はーいっ!おりゃっ」

「ナイスっ!っと、近くに来た敵は俺が対処するんだったな」

「ありがとっ!」


 最初は出来なかったことが、場数をこなすにつれて上達していくことがとても嬉しかった。

 おろおろとすることの多かった蘭も、最近は連携を取ることが楽しいのだろう。積極的に自ら役割を買って出ることが増えた。

 自分が与える側になって初めて、俺に戦闘技術を教えてくれたnoiseやストーがどれほど優れた人物だったのかを実感する。

 相手に寄り添うことが、簡単そうに見えてどれほど難しいことなのか。


「先輩の言ってること感覚的で分かんなーい。ぶすっ」

「いや、こう敵が一直線に来たら直ぐに迎撃するんじゃなくて、バッと避けてだな」

「もう少しわかりやすく教えて!どう動いたらいいのっ」

「えー……?」

 蘭がわがままなのは変わらないままだったが、熱心に俺の言う事を理解しようとしてくれているのは十分に伝わった。

 だからこそ、俺もどうすれば蘭が理解できるのか、試行錯誤を繰り返す日々を送った。

 時々俺達が共に勉強しているのを遠目に見ていた東二は、とても嬉しそうな眼をしていたのを覚えている。


 ----


 そうこうして、どれくらいの日々が過ぎただろう。

「なあ、そろそろTenmei本社に向かってみたいと思うんだけどさ」

 正直、不安はあったが連携が十分に取れるようなったと確信した俺は、そう蘭に話しかけた。

「……ん、そっか。行かないと、だもんね……」

 蘭はその言葉にどこか寂しそうに俯いたが、やがて取り繕うように笑顔を浮かべる。

「そうだね。先輩は勇者様だから世界の真相を知らないとだもんね……行こっか」

「……ああ」

 俺の返事を待つことなく、蘭は静かに身支度を始めた。

 傍らで話を聞いていた東二へと視線を向ける。すると、彼は難しい顔をしてあごひげを触っていた。

「蘭からすれば、今までで一番充実した時間だったんだろうさ。これも、セイレイ君のおかげだよ」

「……俺も、蘭と一緒に配信できて楽しかったよ。でも、皆の元に戻らないと」

 そう言葉を返すと、東二は一瞬何かを言おうとして口を閉ざす。しばらく迷ったような表情を浮かべた挙句、決意したように口を再び開く。

「セイレイ君……もし、良かったら。蘭も勇者一行の旅に連れて行ってはくれないだろうか?蘭には色々な世界を知って欲しいんだ」

 それは、蘭の父親としての切なる願いだっただろう。

 自らの元を離れてでも、彼女の成長を願っているからこそ頼み込んだのだと如実に伝わる。

 ——だからこそ、俺は彼の願いを聞き入れることは出来ない。

「ごめん。いくら東二さんの提案でも無理だよ」

「……駄目、か」

「さすがに巻き込めない。あいつには荷が重すぎる……」

 確かに、色々な世界を知ることは出来るのだろう。

 しかし、俺——俺達は、配信を介して数多の苦悩を抱いてきた。上手くいったことよりも、上手くいかなかったことの方が多い。

 俺の胸中を理解したのか、東二は頭を掻いてひとつ頷いた。

「……すまない、セイレイ君。無茶を言った」

「ごめんな。東二さん」

「大丈夫だ……そう言えば、蘭から聞いたか?スパチャブースト”赤”の鍵の話」

「鍵?」

 唐突に何の話をするかと思えば。

 ……スパチャブースト”赤”の鍵。それは、恐らく「スパチャブースト”赤”」を発動させる為の前提条件なのだろう。

 盗賊である一ノ瀬は、自らが女性の身体へと変化するきっかけとなった「金色のカブトムシのツノ」が。

 魔法使いである穂澄は、魔災当日に家族と行く予定だった「遊園地のチケット」が、それぞれ該当するものだった。


 恐らくであるが、スパチャブースト”赤”の鍵とは「価値観を大きく揺るがすきっかけとなった物」を示すのだろう。

「……その話をするってことは」

 蘭も、それに該当するアイテムを持っているということか。

 その答えに辿り着いたのを理解したのだろう。東二は柔らかな笑みを浮かべて話を続ける。

「察しが良くて助かるよ。蘭にとってのスパチャブースト”赤”の鍵はね——」


「パパ!先輩!何してるの、早く、早く!」

 蘭が遠くから俺達を呼ぶ声が聞こえる。一足先に準備を終えた彼女は、大声で俺達を急かすのだった。

 話を遮られた東二は苦笑いを浮かべながら「今行く」と言葉を返す。

「……勝手にぺらぺらと話したら蘭に怒られてしまうかもね。また蘭の許可をとってから話すよ」

「はは、思春期の女の子は難しいからな」

「君だって思春期だろうに」

 話の途中だったが、別に急いで聞く話でもないだろう。

 そう判断した俺は、東二との会話を終えて配信準備へ取り掛かることにした。


 ----


 もう、道中の魔物は敵でさえなくなっていた。

「アラン!」

「任せてっ」

 指示など出さずとも、もはや俺とアランは目配せひとつでお互いに意思疎通を図れるほどにまでなっていた。

 俺のファルシオンのリーチが届かない位置に立つゴブリンに対して、アランが素早く前に出る。

「たっ!」

 息を吐くような掛け声と同時に、彼女は素早く槍を突き出した。その一撃は的確にゴブリンの喉元を貫き「ヒュ……」などと気道から息の漏れる音と共にゴブリンは絶命する。それと同時に、魔石を残して灰燼となり世界から消えた。

 目の前で同胞を殺されたもう1体のゴブリンは激昂し、敵を討たんと飛び掛かってきた。

 それを予期していた俺は、アランを庇う形で躍り出る。

「せあっ!」

 掛け声を出すと同時に、低く駆け出した姿勢のまま中段にファルシオンを薙ぐ。

 的確にゴブリンの胴元を捉え、俺は勢いのままに振り抜いた。

「ギアッ」

 か細い悲鳴を漏らすと同時に、ゴブリンの姿は胴を中心として上下に分かれる。

 俺とアランはまるで二人三脚でもするように、タイミングを合わせて交互に躍り出た。まるで爽快感すら感じるほどの連携に伴い、あっという間に立ちはだかる無数の魔物を蹴散らしていく。

『もう、言う事なしだよ。二人とも……』

 次々に魔物を撃退する光景を撮影している東二は、もはや何もコメントできないといった様子で唖然としていた。

 その間にも、灰燼は大きく舞い上がる。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

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