表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
241/322

【第百十五話】私の世界

【配信メンバー】

・セイレイ

・アラン

【ドローン操作】

・荒川 東二(四天王:赤のドローン)

「パパ、ちょっと手伝って」

 愛娘が協力を依頼する、ということが珍しいのだろうか。東二は目を丸くして蘭を見る。

 キーボードを叩く手を止めて、じっと彼女の目を見据えた。

「どうしたんだ、蘭」

「お願い、配信準備して欲しいの。ちょっと試したいことがあって」

 蘭は深々と頭を下げるが、東二は困惑を隠すことが出来ていないようで縋るように俺へと視線を送った。

「……大丈夫なのか?」

「無茶はしない。いざという時は俺が対処するよ」

 説得材料となっているかは分からないが、そう言葉を返すと東二は顎に手を当てて「うーん」と唸り出した。

 しばらく逡巡する表情を浮かべていたが、やがて自分を説得するようにひとつ頷く。

「分かった。セイレイ君に免じて許可するよ」

「やった!ありがとう!」

 蘭はその返事にぱあっと顔を明るくした。

 彼女の表情が明るくなるにつれて、東二は逆に曇ったような表情を浮かべていることに気付く。

 満足げに準備を始める蘭を眺める東二へと俺は質問を投げかけた。

「……東二さん。何か気がかりなことでもあるのか?」

「いや。気がかりという訳ではないのだが……いざ娘の成長を実感すると、どこか寂しくなってな」

 随分ワガママなことを言っている自覚はあるのだろう。東二は自嘲じみた、困ったような笑いを浮かべた。

「自分のわがままの為に動くことはあっても、誰かの為に動くことは初めてだったから……驚いたよ。いつか親元を離れていくんだろうか、と思うと寂しくなってね」

「ああ。蘭自身、変わろうとしてるのが俺でもわかる」

 出会った頃の、わがままばかり言っていた彼女と比べて、大きく成長しているのは傍目から見ても分かる。

 東二はしばらく寂しそうに俯いていたが、思考を切り替えるように頷いた。

 それからポケットに潜ませていたスマホを取り出す。

「俺は一足先に外へ出るよ。急がなくていいからね」

「ありがとう」

 そう言って、東二は先にオフィスを後にした。

 俺自身も身支度をしながら、蘭へと視線を向ける。

「蘭、良かったな」

「うん!先輩の力になれるのが嬉しくて」

「頼りにしてるよ」

「えへへ」

 自分の為ではなく、他人の為に力を振るうことを覚えた時に人は成長するのだろう。

 そんな当たり前だと思っていたことに、改めて気付かされたのだった。


 ----


『セイレイ君、蘭は一体何を試そうとしているんだ?』

 赤のドローンに姿を変えた東二は、そのカメラを俺の方へと向けて質問を投げかけた。

 蘭——いや、配信中はアランか。何を、と言われても俺もアランのスキルの詳細を知らない以上何も言えないのだが。

「アランの”スポットライト”って、無駄スキルかと思っていたが……もしかすると、結構使えるスキルかもしれない」

『蘭のスキルは攻撃性能が皆無だからな……』

 当然、その事は東二も頭を悩ませていたのだろう。

 戻ってきた言葉にはどこか期待が滲んでいるようにも見えた。


 さて俺達は今、スクランブル交差点の前に立っている。

 当然、俺達を異物とみなした魔物達が敵意をむき出しにして、それぞれの得物を手に今にも襲い掛からんとしている。

 だがそんな魔物達を前にしても、アランは全く怯むことなかった。

「みなさーん!こんにちはーっ!」

「グオオオオオッ!」

 まるでアランはアイドルのライブとでも言わんばかりに高く手を掲げる。もちろん返ってくるのは完成などではなく魔物の怒号にも似た声だ。

 そのうちの血気盛んなゴブリンが、高く跳躍してアランへと強襲を仕掛けた。

「させっか!」

 俺はアランを庇うべく、右手に携えたファルシオンを振るう。すかさず繰り出した袈裟斬りが、ゴブリンの胴元を貫いた。

 舞い散る灰燼の中、アランはにこりと微笑みを交わす。

 交わす視線には、間違いなく「信頼」が籠っていた。

「今日はねっ、皆さんに私の世界を見せてあげるねっ」

 そう言って、びしっと高く掲げた右手を正面に振り下ろす。作った声音で、彼女は高らかに宣告(コール)した。


「生まれろ、スパチャブースト”黄”!」

 次の瞬間。

 彼女を中心として、地面から光が迸る。放射状に大地を駆け巡る光が、スクランブル交差点を包み込む。

 同時に空に浮かび上がるプログラミング言語。この光景には心当たりがあった。

「これは、追憶のホログラム……!?」

 その間にも徐々に世界は大きく書き換わっていく。

 追憶のホログラムと大きく異なるのは、地形までも大きく書き換えてしまうことだった。

「グガァ!?」「ギアッ」「ガゥ」「ガアアアッ!?」

 魔物達の悲鳴が重なって響く。

 ホログラムが構築するのはかつての世界などではない。

 生み出すのは、突如としてアスファルトを穿つが如く大きく隆起する地面だ。


[アラン:ホログラム・ワールド]

 ちらりと赤のドローンに視線を送ると、ホログラムが表示するシステムメッセージにはそのようなメッセージが残っていた。

 さらにアランは重ねるように、再度宣告(コール)を放つ。

「さて、いくよっ!スパチャブースト”緑”!」

[アラン:スポットライト]

 重ねた宣告(コール)に伴い、俺達以外の景色から光が消えた。

 戸惑いを隠せない魔物の声が幾度にも重なる。視界を奪われ、地形把握さえ出来なくなった魔物達は、もはや連携さえとることは出来ない。

 情報の優位性は、完全に俺達にあった。

 アランが駆け出す動きに連なって、囲う光も移動する。

 俺と蘭は共に変化した地形を飛び越え、回り込みながら即座に対応することの出来ない魔物を次々に屠る。

 

 咄嗟に対応しようとしたインプの喉元をアランの槍が貫く。

 闇雲に弓矢を放つゴブリンの頭を俺のファルシオンで叩き割る。

 敵だと勘違いしたオーガが振るう棍棒は、仲間であるゴブリンを叩き潰す。

 

 場を支配するのは、完全に俺達だった。

 さらに加えて言えば、完全に死にスキルだと思われていたものでさえ、この状況下においては有用だった。

「ふふっ、スパチャブースト”青”っ」

[アラン:紙吹雪]

 アランが放つ紙吹雪はスポットライトの中でもかなり目立つものだ。それを敵の攻撃だと勘違いしたオーガが、咄嗟にそれを薙ぎ払う。

「ガゥ?」

 まるで手ごたえのない感覚に違和感を抱くように首を傾げるオーガ。

 ——完全に隙だらけだ。

「こっちだっ!スパチャブースト”青”!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 紙吹雪に気を取られたオーガを倒すべく、俺は即座に宣告(コール)を放つ。

 両足に淡く、青い光を纏ったままオーガの懐へと飛び込み、握ったファルシオンを突き刺す。

「ガフッ……」

 か細い悲鳴を上げながら、オーガは瞬く間に灰燼と消えた。


 どんなスキルも、組み合わせ次第では有用である。

 完全に袋のねずみであったはずの俺達は、いとも容易くスクランブル交差点を抜けることに成功したのだった。

「パパ、見た!?私達の力っ!」

「あ、ああ。正直、驚いた……こんな使い方があったなんてな」

「ふへへ」

 父親から素直な言葉で褒められたアランは、今までに見たことのないほどのふやけた笑みを浮かべていた。

 どれだけの戦闘能力を有していようが、実際は14歳の思春期の少女なのだ。そんな、なんて事のない話を改めて実感する。


 同時に、俺とアランの力は困難を打開する能力を有する証明にもなったのだった。

 勇者一行の再会は近い。


 ——感動の再会、だったのなら良かったんだけどな。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

アラン

青:紙吹雪

緑:スポットライト

黄:ホログラム・ワールド

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ