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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑧大都会編
237/322

【第百十三話(2)】都心攻略配信-side noise-(中編)

【配信メンバー】

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・戦士クウリ

・僧侶ディル

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 休息の出来る拠点を確保する為、崩壊していないビジネスホテルを探す。

 道中の明確な目標が出来た私達は、周囲を警戒しながら慎重に進む。

『堂々と街中を歩きたいものだねえ。なーんでこうもお尋ね者みたいな雰囲気で歩かないと駄目なのかなあ』

「本当にね」

 私達の姿を撮影している秋狐はそう不服そうに言葉を漏らした。まったくもって彼女の言うとおりだ。

 傲慢(ごうまん)な言い方にこそなるが、本来は私達人間の生活の場であったはずの大都会。それが今や、魔物達が我が物顔で闊歩(かっぽ)する実情に辟易(へきえき)とする。


(まさか初めて来る都会がこんな形になっているとはね)

 キラキラと輝かしいサラリーマンが闊歩し、活気にあふれた大都会。かつての私にとっては、そのような光景を夢見て憧れたものだ。

 首を痛めそうなほど見上げなければ屋上さえ見えないような高層ビル、無限を思わせるほど並んだ店舗の数々。そこだけ見れば私がかつて夢見た都会の光景だったが、今やそんな余韻に入り浸ることさえ許さない。

 常に睨まれるようなアウェー感が私を取り巻く。

「都会ってこんなしんどいんだね」

「はは、田舎者には辛いかい」私の呟きにディルは皮肉染みた言葉を返す。

「全くだよ」

 とは言えどもまだ皮肉を返す余裕がある自分自身に驚きを抱く。

 結局のところ隠密行動を繰り返しつつ、必要に応じて魔物を倒す。これだけならいつもやっているダンジョン配信と何ら変わりない。


(まあ……爽快に敵を薙ぎ払いながら、と言うのは無理だな)

 ふと、脳裏に真水から借りて昔遊んだことのあるゲームを思い出す。

 ハックアンドスラッシュ——いわゆる「無双ゲーム」とも呼ばれる類のゲームの話だ。わらわらと群がる敵を爽快になぎ倒すのが気持ちよくて、ついやり込んだことを思い出す。

 幼い頃は、当時男の子だったこともありカッコよく立ちはだかる敵を薙ぎ払う光景へ年相応に憧れたものだ。

 だが、魔災はあらゆる意味でそんな空想を容易く壊してしまった。

 己の戦闘能力に限界を感じざるを得ず、堅実に魔物を倒すことで精いっぱいだ。魔物の群れを豪快に薙ぎ払うことなど、現実では不可能だと知った。

 もしも、そんなことが実際に出来る人間が居るものならば是非とも会ってみたいものだが……。


 ビルが囲む街並みを進む中、ふとモニター内を流れるコメント欄に視線を送る。

[都会にはメインの追憶のホログラムはないのかな?昔の光景とか流れないんだろうか]

[ゴールが気になる。都会全てがダンジョンだとしたら、終着点はどこ?]

[そりゃTenmei本社じゃね?Sympassの情報に直結した場所なんだろ]

[あー。セイレイもいるとしたらその辺りなんかね?]

[かもな。なんかアカウントの主役が居ない配信ってのも変な話]

[無茶振り担当は当面noiseさんかもね]

[noiseさんなら正直心配せずに見られます。セイレイ君は運動神経に丸投げしすぎなので]

[唐突な勇者ディス]

 やはり、今までと異なる配信の形が故に視聴者の憶測も加速している印象を受ける。

 そんな中、とあるコメントが情報源として視界に飛び込んだ。

[俺ここに出張できたことある。ホテルならこの先にあったんじゃないかな]


「有紀姉。コメント見た?ホテルあるかもって」

「うん、見た。慎重に進もっか」

「だね」

 同様にコメントに反応したクウリと短くやり取りを交わし、更に先へと進む。

 もしそこが休息拠点として活用できるのなら願ってもない話だ。


 ----


 やがてビル群の中に堂々とした形で聳え立つビルに辿り着く。

 幸いにもそこは魔災の影響も、桜の木々の樹根の浸食もほとんど受けた様子はなく、かつての外観を保っていた。

 漆黒に塗装された現代的な外観のそれだったが、魔災によって崩壊した世界の中では無機質な印象でしかない。

 そんな私達の前に白のドローン——秋狐がふわりと躍り出る。

『ここから先はいつものダンジョン配信と同じだよねっ。さ、サポートスキル”光源開放”っ』

 誰の許可をとるでもなく、秋狐はさっさと宣告(コール)した。

 瞬く間に真っ暗闇だったホテル内が薄暗く電灯に照らされる。どこかホラー映画のワンシーンとさえ思えるほどの冷たい緊張感が、ピリッと肌を刺激した。

「noiseさん、慎重に行こう。閉所の戦いだと私やクウリ君は正直足手まといになりかねない」

 ホズミは己の持つ能力から冷静に分析する。

 なるほど、確かにホテルのような狭い場所での戦いとなると、魔法を使うのはかえって危険だろう。

「分かった。引き続き私が先導しよう」

 閉所での戦いとなれば、特に私の行動が戦闘の鍵となるだろう。得てして仲間達の責任を背負うことになった私は、生唾を飲み込み先に進む。


 床に散乱したガラス片や、食器の欠片などを踏まないように先に進む。

「足元に気を付けろ。カーペットから極力足を外すな」

「うげぇ……面倒だなあ」

 ディルは露骨に嫌そうな顔をしながらも、律儀に私の指示に従っていた。

 ホテル内の廊下にはカーペットが敷かれており、幸いにも足音を殺すには問題ない。

「ま、追憶のホログラムならここにもあるでしょ。さっさと攻略しようよ」

「急いてはことを仕損じる、だ。焦るなよ」

「へーい」

 このホテルがダンジョンとしての役割を担っているとすれば、追憶のホログラムはここにも存在するのではないか。

 一部屋ずつ確認して回るのが確実なのだろうが、経験則からダンジョンのゴールは低階層には無いと判断。

 故に早々に階段を見つけ出そうとしたのだが——。


「……階段、どこだ?」

 ホテルの1階層をどれだけ探せども、目的の階段が見つからない。あるのはエレベーターのみだ。

「あっ、非常用階段あったよ……でも鍵がかかってるね」

 同様に散策してくれていたホズミは非常用階段を発見したが、鍵がかかっていることを知り落胆する。

 非常用階段の鍵は恐らく従業員が管理しているのだろうが、魔災によって人気のなくなったホテルの中でそれを探し出すのは困難だ。

 であれば攻略外のダンジョンであると判断するのが最適解なのだろうが、現に秋狐の「光源開放」は機能している。

 ——だとすれば、エレベーターが機能する方法でもあるのだろうか?

「あとは、レストランの方面だけか。確認していないのは」

 私は視聴者への説明も合わせて、そう確認を取る。

 仲間達は互いに顔を見合わせたが、やがて「合ってる」と言わんばかりに頷いた。

 恐らくダンジョン攻略に関係ないだろうと踏んでいたが、今回は勝手が違うのかもしれない。


 ----


「魔物だ」

 私は端的にそう報告した。

 入り口前の扉を微かに開き、先を除けばそこに居るのはゴブリンやスライム、オーガなど魔物の群れ。更にその奥にあるのは、追憶のホログラムだ。

 恐らく、総合病院の頃のように一定の階層ごとに追憶のホログラムが配置されているパターンだろう。瞬時にそう判断した私は、ちらりと突入の意思を示すべく目配せする。

 そんな中、ホズミは扉の隙間から赤色の杖だけを差し込んだ。

「ちょっとどいてて」

 既に魔石はセットされている。

 まさか。

「……放て」

[ホズミ:炎弾]

 何の躊躇もなく宣告(コール)したホズミの身体を照らす橙色の光。扉に阻まれ、中の光景こそ見えないが轟音と土煙がレストラン内より響く。

「ギィッ!?」

「グオオオォォオッ」

「ガゥエッ!」

 魔物の断末魔と思しき声と、苦悶に呻く声が響く。

 あまりにも容赦のない一手を繰り出したホズミだったが、彼女は一足先に扉をこじ開けて中に入り込んだ。

「やっ!」

 可愛らしい掛け声とともに、地面に倒れ伏した魔物に向けて容赦なく杖を突き立てる。

「グェッ」

 か細い呻き声を零すと共に、魔物の姿が瞬く間に灰燼と化す。杖先に付着した灰燼を払いながら、彼女は何の躊躇もなく次から次に魔物の命を奪う。

 鬼気迫る彼女の様子に最初こそ唖然としていたが、任せっきりにするわけには行かない。

 そう思い直した私達はホズミに続くように駆け出した。


 決着はとっくについている。

 そう判断し、スキルを使うことなく残った魔物達の命を次から次に奪っていく。


「これで、最後ッ!」

 ホズミは流れるような動きで杖を突き立て、最後の一体にとどめを刺した。

 魔物の全滅を確認したホズミは、白のドローンへと問いかける。

「秋狐さん」

『へ?あ、は、はいっ』

「追憶のホログラム、流そうか?それともさっさと先に進んで全部終わってから見よっか?どっちの方が良い?」

『あっ、そ、そうだね。全部終わってからでいいんじゃない、かな』

 動転する秋狐の声を聴きながら、ホズミは「決まり」とだけ言の葉を返す。それからドローンを手招きし、淡々と追憶のホログラムを指差した。

「じゃあ、お願いします」

『……ホズミちゃん怖いなあ。えーっと、合体っと』

 まるで容赦のないホズミに怯えながらも、渋々と言った様子で秋狐は追憶のホログラムへと近づいていく。

 ドローンが近づくにつれ、追憶のホログラムはより一層強く光り輝く。だが、それが吸収されるにつれて光も同様に収束した。


[information

 2階へと続くエレベーターが解放されました]


 追憶のホログラムの消失と共に流れるシステムメッセージ。

 それを確認したホズミは、我先にと歩みを進める。

「……わっ」

 クウリは彼女に道を譲るように後ろずさる。ホズミは誰の顔を見ることもなく、エレベーターの前まで歩みを進めた。

『有紀ちゃん。ホズミちゃんってこんな怖かったっけ』

「……切羽詰まってるなあ」

 秋狐は助けを乞うように私の隣へと飛んできた。

 だが、私としても困惑を隠すことは出来ない。


 ……セイレイが、ホズミのストッパー的立ち位置だったのだろう。

 元から倫理観が欠如しているところはあったが、ストッパーが外れた今はこうも容赦のない行動を選択できるのかと恐ろしくなる。

「何してるの?置いて行くよ」

「ごめん、今行く」

 ホズミは冷めた目で私達に声を掛ける。その声にハッとした私達は、慌てて彼女の後について行くのだった。


(早くセイレイを見つけ出さないとね)

 彼女の為にも、私は心の奥底でそう誓うのだった。


 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

クウリ

青:浮遊

緑:衝風

黄:風纏

ディル

青:呪縛

緑:闇の衣

黄:闇纏

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